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チョッ、コレート

「ちょっと待て、待てったら!」

 どんどん先行きやがって。こっちのペースが遅れても待つどころか振り返りもしねぇよ。俺はアイツを待っててやったのに。でもこの痛みはちょっとヤベェかも。また見てみようかな。いや、やめとこう。見たらよけいヘコむ。やっぱサンダルはきついよ。つーか全然着く気配がないんだけど。もう一時間以上は歩いてない? 暑いし腹減ったし、その前にのど渇いたよ。ペットボトルのはさっき全部飲んじゃったし。また川に戻るにはもう遠すぎるし。こんなことならもっと大事に飲むんだったよ。まさか、こんなに着かないもんだとは思わなかった。アイツはホント、振り返るそぶりすら見せねぇな。電波入んないっていっておきながらまだケータイいじってるし。電波入んないんだったらメールもこないだろ。にしても今何時ぐらいだ。太陽は真上ではないけど、陽射しはまだ勢いがあるから、二時ぐらいかなー

 …そんな太陽の位置で時間を予測するなんてできるかよ! 小学校の理科の実験じゃあるまいし。あのときだって棒の影を見てたんだよ。う〜ん、まさか道まちがってはないよな。ガキのころだって迷ったことなんてないのに。だいたい、一本道なんだから迷いようがねーよ。それとも、これぐらい遠かったのかな。なんせ、小学校五、六年あたりから来てないから、十年ぶりぐらいか。でも、やっぱ見たことあるような景色なんだけどなぁ。誰か通んないかな。平日だしなぁ。いや、休日でも来ねぇか。それだったら、こっちじゃなくて、緑ヶ丘公園のほうが広場とか遊具もあって整備されてるもんな。最近のガキも、ここには来ねぇんじゃねぇのか。でっかいゲーセンもあるし、あとフットサルコートまで。塾もやたら増えたし。俺らのときとはだいぶちが

〈ポーン、ポーン〉

 あっ、また鳴った。今のは小さかった感じがしたけど、離れてんのかな。どこから聞こえてんだろ? 木で向こうっ側は全然見えないし。さっきから、思ってたけど、ここの木ってこんなに高かったけ。もしかして、いつのまにか植林とかしたのかな。いや、そんなのやってるって聞いたことないし、やってたとしても木が育つのに何年かはかかるはずだし。足痛ぇな。下が舗装されてたらもっと歩きやすいのに。あっ、でも環境的にまずいのかな。うんっ? なにこれ。チョコレートの袋? あっ、あっちにも。あっ、もうひとつ。今まで、こんなゴミ落ちてなかったのに。どんどん続いてる。もしかして…ああっ、やっぱり! なんか、アイツのとこから落ちてってる。山田のヤロ〜、一人で食べ尽くす気だな。水のときといい、なんで、アイツには分けようっていう発想がねーんだよ。

「山田ぁ俺にもよこせぇ!」

 痛ぇ、全力で走るとマジ痛ぇよ。ちょっと足引きずり気味だし。でも、チョコレートをゲットするためなら。

「オイ!俺にもよこせよ」

 って、うっそー走り出したよ。

「待て、待て、待てったら!」

 コイツは足は速くなかったはず。今の俺でもなんとか、あともうちょっとで肩に手が、ってつかんだ瞬間振り払われたよ! チョコレートごときでどんな人だよ。

「チョコレートなんかで振り切ろうとすんなよ。俺、マジで足痛いんだって!」

 おっ、立ち止まった。振り返って、なんか投げた。でも、全然届いてねーじゃん。痛ぇー、ダメだもう歩こう。向こうも歩きだしたし。

 ったく、ムダな体力使わせやがって。あっ、銀色の紙、チョコレート投げたのか。いちいち屈ませやがって、んっ、頭になんか当たった。もう一個投げたのか。今度は緑色。

「投げないで、フツーに渡せよ。って、言ってるそばから投げんな!」

 なんか、いっぱい投げてきたな。ムッチャばらけてんじゃん。赤に、黄色に、また銀、で青か。全部同じ紙だから、お得用パックのやつだ。全部で六個か。けっこうくれたな。

「じゃあ、頂くわ。サンキュー」

 まずは、なんにしょうかな。う〜ん、赤。うわぁ、溶けてドロドロ、この暑さじゃあな。袋からとれないから直接、あ、鼻についた、ウ〜甘い、溶けててもオイシー。中はキャラメルか、口ん中グチャグチャ。口の中の水分全部もってかれた感じ。水飲みてぇ。でも、もう一個、次、緑。これは…アーモンドだ。キャラメルよりはこっちがいいけど。のど渇く〜。でも止まらない。銀色は…なにも入ってないや。歯ごたえあるのがいいんだけどなぁ。ダメだ。もうこれ以上は口の中が受け付けん。あぁ〜みずぅ〜。こんなことなら、さっきの水もっと大事に飲めばよかった。まさか今ごろになってこんなにレア度が増すとは。残りのチョコレートはとっておいて。それにしても、アイツポケットにずっと忍ばせてやがったのかよ。腹減ってんだから、もっと早く出せっていうんだよ。つーか川のところで出せ!


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