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夏の思い出

「ガラガラ」

 ハハッうがいまでしてるよ。

「ガラガラ」

 一匹通すのは難しいな。

「ガラガラ」

 頭からかな、尻尾からかな。

「ガラガラ」

 なんで切り身なんかにしたんだろ。

「ガラガラ」

 単に包丁さばき、あっ、ナイフか。見せたかっただけなんじゃ。

「ガラガラ」

 手が魚くせぇ。洗ってこよう。

「ガラガラ」

「うるせぇよ! いつまでやってんだ!」

「ガハッ! ガハッ! なにすんだ! 生でいったから、口の中に寄生虫でも入らなかったか、心配だから」

「だったら、生でいくなよ。あの立ってる二本は俺のだから。お前のはそのまま置いてある」

 思いきっり器官に入ったか。

「戻るんだったら、魚見てて」

 まっ、大丈夫だとは思うけど。水冷てぇ、昼間より冷たく感じるよ。陽が落ちてるからそう感じてるだけかな。いや、ちょっとだけ肌寒い、寒いってほどではないか。でも夜はやっぱ温度下がるんだな。山だけあって。焼けるまでしばらくかかるだろうから、あの石のとこで座ってよう。

 こうやって足だけつけてると、疲れがとれてくよ。アイツはコマめに串動かしてるみたいだな。刺したままほっときゃいいのに。にしても、やっぱすげぇ月だよなぁ。こんな近いもんかよ。星もいくつあるんだって話しだよ。星座とかに詳しかったら、あれとあれが繋がってオリオンとか白鳥とかわかんだろうな。アイツは星座には詳しくないのかな。林の中はマジで暗いよ。よくさっき入ってたよなぁ。月で明るいとはいえ、火がなかったらここにいられなかったな。火だけがやたら存在感あるよ。

 火かぁ。小学生のときのキャンプファイヤーはすごかったよなぁ。あれなんで行ったんだっけ? 学校のではなかったと思うんだけど。あー町内会のやつだ。夏休みのイベント。あれにミキちゃんが参加するとは想像もしなかったなぁ。町内全然ちがうし。あとから聞いたら別の町内のやつでも参加してよかったって話しだけど。まさかねぇ、運命的なものを感じたもん。ガキながらに。しかもうまい具合に俺のとなりだったんだよなぁ。つーか今にして思えば確信犯的にそこに寄ってったのかな。たくさん話した気もするんだけど、内容が全然思いだせん。そーとー舞い上がってたんだろうな。なんせ学校ではほとんどしゃべったことなかったし。本ばっか読んでるイメージがあったなぁ、暗いってわけじゃなかったけど。そうだ、マサミの野郎が二人の話にいちいち入ってきやがって。なんで女って、カワイイ子の周りに普通よりやや下ぐらいの取り巻きがいるんだよ。しかも、なぜだか俺はあの女と夏休みの宿題について話したのは覚えてるぞ。なんでそんなどーでもいいことを保存してんだ俺の頭は。それでも、学校よりは邪魔がいないからいっぱい話したような。あっ、そうか、二人が本の話しをしだしてからは入っていけなかったんだ。俺はあの頃はまったく本読まなかったから。ジャンプとコロコロに心奪われてたもん。ジャンプには今もだけど。でも、火の明かりに照らされて笑ってる顔はムチャクチャ可愛かったよなぁ。本気で結婚しょうと思ったもん、ガキながらに。でも、まさか、まさか、五年に上がるときに転校するとは。しかもわかったのが始業式終わってのクラス発表のとき。自分の名前より先にミキちゃんの名前探してたもんな。そしたら、マサミが「ミキさぁ、親の仕事の関係で急に転校しちゃったんだよ。春休みに決まったからアタシ見送りにも行けなかった。電話でだけ」ってオノレのことはどうでもいいんじゃ〜。あぁ、なんでこんなことに! せっかくあのキャンプファイヤー以来少しは学校でもしゃべるようになったのに。マサミのやつもなんの前触れもなく言うんだもんなー。親の仕事の都合で好きな子が転校なんて実際にあるんだ、って今になってみると思うよ。あれからミキちゃんはどうしてんだろ。すっげぇ可愛くっていうか、キレイなおねぇ系かな。あのときからすでに落ち着いてて大人ぽかったし。う〜ん、もてるんだろうなぁ。あー彼氏はどいつだ。考えるだけで腹が立つ。でも、ここはひとつ大人になって素敵な人と幸せになることを願いつつ、いや待てよ。もし、すっげぇ遊び人になってたらどうしよ。夜な夜な遊びに出て、ナンパされては付いていき、男を次から次へとっかえひっかえ、二股三股もお構いなしだったら。…やめよう。なに思い出を自分で汚してってんだ。あーあ、なんとか夏終わるまえに女ゲットしねぇとな。あの花火大会でのケイスケとのナンパはうまくいったんだけどな。アイツ途中でつぶれたから結局別行動にならなかったよ。電話番号聞けなかったのは痛いな。まさか、終電で帰るとは。急に走りだしやがって。もう夏は残り少ない、急がねば。


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