9 牛には気をつけよう
その後俺は、バンビに首輪の色が変化しているかを確認して貰って、本当にランクアップしていることを確認した。
首輪は黒色から、恐らくDランクを表すであろう黄色になっていた。
いやあ、一時はどうなる事かと思ったけれど、何とかなったな。
勿論無傷とはいかない、20人いた仲間は、途中加入したレオ達のグループを混ぜても5人にまで減ってしまった。
壁外での生活は死と隣り合わせだ、だから仲間を失う経験は今まで何度かあった。
しかし、いきなり半数にまで減らことなんてことはなかった。
あの蜥蜴、いつか絶対ぶっ潰してやる。
「…ていうかさ、何でお前らは、俺より早くランクアップできたんだ?俺、あの牛を仕留めてようやくランクアップしたんだけど」
「さあ?あんたが、蛇の頭は倒してなかったからじゃないの?」
「えっ」
もしかして、鶏の部分と蛇の部分って別の魔獣扱いなのか?
今初めて知ったんだけど…
「もっと早く行ってよそれー」
苦労して牛を仕留めたのが無意味だっただけことじゃん。
馬鹿馬鹿しすぎて思わず地面に倒れ込んだ。
「まあいいだろ、細かいことは気にすんな。
「全員がランクアップ出来たんだ、これで壁内に入れる、アイツに一発ぶち当てられるぜ」
俺の気持ちなんて知らずにレオは喜んでいる、多分笑ってるよなあれ、口元が隠れてるから表情が読み取れん。
でもまあ、レオの言う通りだ。今はただランクアップが出来たという事実を、素直に喜ぼうじゃないか!
「ってかレオ、アイツって一体…」
俺の質問は、謎の地響きで中断された。
地響きの正体はどうやら、
牛魔獣の群れのようだった。俺が仕留めた奴の仲間かな?
こっちに突っ込んで来ているように見える。
いや完全に俺達を狙っているな。
「おい皆、さっさと逃げるぞ!」
どういう事だ?仲間を殺した俺に報復しに来たのか?
だとしたら、復讐に来るのが幾ら何でも早すぎるだろ!
もういい、俺はさっさと逃げるぞ!
Dランクになったからなのか、いつもより速く走れている気がした。
…後から知ったのだが、あの牛は一匹倒すと、群れの仲間が総出で襲って来るとかいう、危険な魔獣だったらしい。