6 残された手段
拠点のボロ小屋に到着した時、最初20人近くいた仲間達は、たった5人にまでその数を減らしていた。
誰も、喋れなかった。足の震えが止まらなかった。
そのまま1時間近くの時が経った。永遠に続くかと思われた静寂を破ったのは、誰かが拠点の扉を蹴り飛ばした音だった。
「おい!あの化け物を連れて来やがったのはてめえかアドラー!」
コイツは確か、この近くに拠点を構える別のグループのリーダーだった筈、レオとか言ったっけか。
顔の下半分を隠すような布切れが印象的だ。
目の上のたんこぶだった俺達が弱体化したから、潰しに来たのか?
「…化け物ってまさか、でかい蜥蜴の魔獣のことか?」
アドラーが聞き返す。
そうだ、コイツ今『化け物』って言ったよな、まさか!
「ああそうだよ!アレを連れて来た奴は誰だ?俺がぶっ潰してやるよ!
「待てよレオ、今はそんな時じゃないだろう」
「てめえらの事情なんか知るかよ!こっちだって大蜥蜴に仲間をやられたんだ、元凶をぶん殴ってやらねえと面子が立たねえんだよ!」
「蜥蜴にびびって逃げて来た奴に、面子なんて元からあるわけないだろうが!!」
うわっ、怒ってるアドラーなんて久々に見たな。
アドラーの覇気に圧倒されて、レオも思わず口を閉じる。ここで何も言えなくなるあたり、いまいち小物感の抜け切らない奴だ。
「で、本当の要件はなんだ」
「…ああ、悔しいが俺達は、どうやっても大蜥蜴には勝てない、壁外に逃げれる場所もない、このままじゃ俺らは大蜥蜴の餌になるのを待つばかりだ。このままじゃな」
「何か深みのある物言いだな、何か案があるのか?」
「時間が惜しいから簡潔に言うぜ、俺達は大蜥蜴に見つかる前にDランクに上がって壁内に逃げるしかねえんだよ
「だから、俺達は魔獣狩りの為にお前達と同盟を結びに来た!」