3 魔獣狩りに行こうよ
アドラーはいい奴だ。
法など存在しない弱肉強食の壁外に生きるEランクの人間にとって、孤独とは死を意味する。
親に生まれてすぐ捨てられたらしい俺を、この年まで育ててくれたアドラーは、俺にとって親のような存在なわけだ。
5歳程度しか離れてないけどな
アドラーの事をそう思っているのは俺だけじゃない、アドラーのグループに属しているのは大体そんな感じの奴らだ。
勿論、只親切なだけの奴が壁外で15歳まで生きていけるはずがない、時に非常な判断を下せるアドラーを俺は信頼している。
だからこそ俺は信じられない。
「正気かよアドラー!魔獣を倒しに行くだなんてありえねえだろうが!」
「いきなり大声出すなよカフカ、皆ビックリしてるだろうが」
「これが叫ばずにいられるかよ!魔獣のもとに自分から向かうだなんて自殺と何も変わらないぞ!」
「そうでもない、魔獣の強さだってピンキリだからな、この人数でかかれば決してできない事じゃない、お前だってDランクになりたいだろう?」
「それもそうだけどもよ…」
魔獣を倒せば倒すほど強くなっていき、ランクを上げることができる。そういう噂がある。
だが所詮噂は噂、命を賭けるには余りにも軽い理由だし、過去同じ様に魔獣に挑んだ者達は殆どが魔獣の餌になる事になる。アドラーだってそんな事は分かっている筈だろうにどうして?
「こんなその日暮らしの生活、もう飽き飽きなんだよ俺は、ランクを上げて壁内に入ることができれば、もう魔獣からコソコソ隠れて生活する必要はなくなるんだよ」
「そうだけどもよ…」
「…僕は行くよ」「俺もだ!」「私も行く」
俺が口篭っている間に皆は次々と決意を固めていく。
「死ぬのが怖いなら行かなきゃ良いじゃない、この腰抜け」
俺だけが迷っているとバンビが俺を煽ってきた。
「分かったよ!行けば良いんだろ魔獣退治に!」 とうとう俺も覚悟を決めた。
こうして俺達は魔獣退治に行くことになった。
そしてこの選択は俺の運命を大きく変えることになるのだった。