第13話「月」
マスターデュエルのイベントのセカンドステージ周回してたら投稿予約するの忘れてました(´・ω・)
結局2時間近く桜花を探して回ったがなんの成果も得られませんでした!
途中で優しいお姉さんにお団子貰ったり、将棋を指したり、なんやんかしてたけどサボってたわけじゃない。
しかし会場に戻ると桜花はすでに席に戻ってました。
スマホのバッテリーが切れてて気づかなかったが、パパから連絡が入ってたみたい。どうやら私の方が迷子扱いされてたみたいだ。
迷子は私。
あれ、これ私が悪いの?
おかしくない!?
ま、いいか。桜花が誘拐とかされてなくてよかった。
最近物騒だからね。
知らないおじさんにチョコ貰ってもついていっちゃダメだよ、って桜花に注意したら『おねぇじゃないんだから……』って呆れ顔で言われた。しょぼん。
神無月さんのトークショーを十分に堪能したルナはほくほく顔でグッズを買い漁っていた。
実の親なんだからサイングッズくらい頼めば貰えるだろうに。
ルナは少しファザコンだね。……本当に少しか?
まだ8歳なんだし親に甘えたい年頃なんだろうね。
私たちと接する時はお姉さん面してるのに、こういうところがギャップ萌えで可愛いよね。私は好き。
そんなこんな考えていると、ルナがこちらに振り向き手に持った髪飾りを見せてきた。
「ねぇ、さくら。どっちがいいと思うかしら」
「どっちでもいいと思う」
「……どっちがいいかしら?」
「……うーん、右?」
「なるほど、やはり左の方がいいわね」
「私に聞いた意味ー!?」
「ふふ、さくらのセンスのなさは信用してるわ」
「マイナスに振り切れた信用度!!」
別に私はセンスが悪いわけではない。
服は最近はちゃんとするようにしてるし、そもそも桜花の可愛い服を選んでるのは私だ。
ただ、好みがイロモノが好きなだけだ。ゴリラとか。
センスが悪いのではない。……たぶん。
ルナは私の選択でどっちか決めたのかレジに向かい買い物を済ませる。
「はい、これ」
「ナニコレ」
「髪飾り。お揃いにしよ」
「おおー。ってあれ、これ私が選んだ方だよね?」
「さくらに渡すのだから、あなたが選んだ方にするのは当たり前でしょ」
おおー、いいね。お揃い。
センスがないとか言いながら、なんだかんだ私の選んだ方を選んでくれるとは。
お揃いということは実質ルナとペアルック。
照れちゃうね。もう恋人じゃん。ポッ。
「はい、桜花」
「ナニコレ」
「姉と同じ反応ね……」
トリオルックだった。
いや、まぁそりゃそうなんだけど。
ルナが桜花をハブにして、私とだけお揃いなんてするわけない。
「神無月先生のグッズは買わなかったの? サイン扇子とか」
「パパに頼めば貰えるのに買う必要あるかしら?」
「ですよね」
ホクホク顔で選んでいたのは私たちとのお揃いグッズでした。
ファザコンと疑ってごめんなさい。
いや、でも絶対ルナはファザコンだと思う。ソースは神無月先生。少なくとも神無月先生は親バカ。
「さて、帰りは手を繋いであげようかしら、お迷子さんたち」
ルナが私と桜花に手を差し出す。
「「私は迷子じゃない」」
「…………」
声がハモる私たち姉妹を呆れ顔でジトっと見下ろすルナ。
いやいやいやいや、君は迷子だよね桜花。
桜花の方を見る。目を合わせない。
ツーンと明後日の方向を見てる。絶対目を合わせない。
「はいはい、分かったから手を繋ぐわよ」
苦笑しながら私たちの手を握り、引っ張るかのようにルナは歩き始める。
「さくら、明日の対局イベント楽しみね」
「そうだね」
夕陽が沈む中、私たちはホテルまでも道を歩いたのだった。
ちなみに存在感ないけど、ちゃんとパパは後ろから私たちを見守っていました。
■■■
その日の夜。
疲れたのか早めに寝ついた桜花。
私とルナはホテルのロビーにある将棋盤(この町は本当にどこでも将棋盤と駒がある)で将棋を指していた。
三局ほどやって、運良く私の全勝。自信がつくね。
「さくら、強くなったわね」
「ははは、そうかな。今日は調子いいだけかもよ」
「夏の大会終わってから特に強くなった気がするわ」
全国小学生王将大会か。
たしかにあの大会で玉藻宗一――将来の魔王と対局できたのは大きな経験だった。
改めて私がこの現世で将棋を指す理由を認識した。
「最近あなたの妹……桜花にも負け越してるわ。少し落ち込んじゃうわ」
「ルナも強いよ」
「負けた相手にそれを言われても嬉しくないわ」
「うっ、ごめん」
「大丈夫よ。気にするわけじゃないわ。ただ、今日の将棋は三局とも完敗だったから気が沈んでるだけだわ」
ルナとはもう累計100局以上将棋を指している。
総合成績だと五分五分といったところだが、ここ最近は私が勝ち越している。
ルナは振り飛車党だ。三間飛車、四間飛車、中飛車。
優しい性格的とは反対的に攻撃的で、ガンガン攻めてくる気風だ。
正直言うと、私はルナに慣れてしまった。
ルナの弱点も把握してるし、ルナの差し方を理解してしまった。
ルナの差し方の真似もかなりハイレベルでできる。
多少ルナが成長したところで、やってくることが同じなら対応することができる。
身内メタというか、個人対策って気分がいいものではないけど、勝負の世界ではそんなものはゴミ箱に捨てる。
私がルナの将棋を理解してしまい、ルナに対する勝率が上がってしまった。それが理由で私が強くなったと思ったのだろう。
対ルナが強くなったところで、私は本当に強くなったと言えるのだろうか。
ルナの弱点……というか、私がルナに対応しやすい理由がある。
ルナは将棋の幅が狭い。こだわりが強いとも言うのだろうか。
小学二年生という幼さで、ここまでの棋力を持っているのは魔王の世代を除けばほとんどいないだろう。
特に攻めにおけるセンスは抜群だ。
しかし、ルナはほとんど同じ戦術、戦法しか使ってこない。
気分や日によって多少変化はあるが、基本的にやってくることが同じなのだ。
1番自信のある戦い方に固執する。ゆえにそれの対策を序盤から心がければ、研究的有利が取れる。あとはそのリードを守るだけだ。
トーナメントなどの初見一発勝負ならとても強いだろうが、研究され尽くされる身内戦や……プロの対局では勝率を落とすことになる。
相手を見てもっと柔軟に指せるようになれば、ググッと成長して強くなるだろう。
ただこれは私では教えられない。
中途半端な存在の私なんかが偉そうに教えることできるようなことではない。
歳下の私に教わったとして、ルナはいい気分ではないだろう。
やはり、ルナには早めに師匠が欲しい。
磨かないと原石は輝かないのだから。
「ルナ、明日は早いしそろそろ部屋に戻ろっか」
「そうね。あーあ、勝って終わりたかったわ」
私達は席を立ち、部屋に帰ろうと歩み始める。
このロビーでは私達以外にも何人か将棋を指していた。
夜遅いので、流石に私たちの同じくらいの子供は1人もいなかったけど。
「……ルナ、どうしたの?」
急に立ち止まったルナを怪訝に思い、私はそう尋ねる。
ルナの視線の先。
2人の女性が盤を囲っていた。
1人は浴衣を着た大人の女性。腰まで伸びた茶色に染めた髪が印象的だ。
うーん、どこかで見た気がする。
もう1人はパーカーを被っているので顔は見えないが、かなり小柄な少女。
たぶん中学生かな。親子だろうか。
大人の女性の方には、ビールの空き缶が何本も置かれている。
あんなに呑んで将棋を指せるのだろうか。
酔いどれに絡まれるのも嫌だし早くかえろうよ、ルナー。
「近衛……女流三冠」
ルナの口から溢れるように言葉が漏れた。
ルナのその声が届いたのか、大人の女性――近衛先生が振り向いた。
「あらあら、気づかれてしまいましたわ」
「近衛さんは、もう少し自分が有名人であることを理解した方がいいよ。ほらボクのようにパーカー被って顔を隠せばいいんだよ」
顔を見て思い出した。
今日の昼間にコンビニの本で見た顔だ。
確か近衛神奈女流三冠。女流棋士界のレジェンド。
ルナが好きな棋士だ。なんでこんなところにいるんだろう。
もう1人のパーカーの少女は娘さん?
それとも他の女流棋士?
「ごめんなさいね。今日はオフだからサインとかは遠慮していただけるかしら」
「いえ、大丈夫です。はい。えーっと」
ルナが緊張でたじたじになってるとこ初めて見た。
本当にファンなんだ。
近衛先生は、ルナの顔をじっとみて。
「ん、あれ君はもしかして神無月先生の娘さん?」
「はい、パパです」
「あー、話には聞いていますよ。将棋がお上手なんですよね」
「いえ。ルナは……わたしなんてまだまだです」
「小さいのに謙遜なんてしなくていいのよ。女流棋士を目指しているのよね。先輩として応援してるわ」
近衛先生にそう言われて、嬉しそうに照れるルナ。
そしてルナは意を決したように口を開いた。
「近衛先生、ルナの師匠になってもらえないでしょうか」
「ふふふ。そういえば神無月先生にも言われてましたね。娘の師匠になって欲しい、と」
神無月先生、ちゃんと娘のために師匠探してたんだ。
自分じゃ娘の師匠にはなれないって言ってたもんね。
「でもごめんなさいね。私は弟子は取ってないの……取るつもりがないの」
「うぅ、そうなんですか」
「本当にごめんなさいね」
悲しそうにしょぼくれるルナ。
すると退屈にしていたパーカー少女が、フォローするかのように喋り始めた。
「師匠になってあげればいいじゃん。そんな可愛い銀髪ロリっ子の師匠なんて漫画かラノベかエロゲでしかありえないよー」
「部外者のあなたは黙ってていただけませんか」
「うう、ひどい。同じ女流タイトルホルダーなのに……シクシク」
女流タイトルホルダー!?
このパーカー少女も?
確か今の女流タイトルホルダーは3人。
1人は目の前にいる近衛神奈。
もう1人は因幡なんちゃらという三冠の奨励会員。
そして……。
「ううーん、あれあれあれ桜花ちゃん……ではない。偽物?」
「……なんで桜花の名前、知ってるの?」
パーカー少女と初めて目が合う。
その少女がパーカーを下ろして、素顔を見せる。
非常に顔が整った黒髪の少女。背丈は中学生と言っても通じるくらい低いが、確かれっきとした大人である。
久遠寺遊沙女流名人。
神無月先生の妹弟子であり――転生者である疑いがある人物だ。
「あぁ、君が例の『おねぇ』か」
口角を不自然に上げた不気味な笑顔で、楽しそうに私を見ていた。
初めて言うので知らないと思いますが、自分はTS作品が大好きでして。
最近なろうで読んだ「TS衛生兵さんの成り上がり」がバチくそ良かったのでおすすめします(ダイマ)
次回第14話「転生論」
更新はだいたい1週間後です。




