下山
トードの村を出てしばらくすると薄暗い山道から拓けた道に出た。
ここからはアズラ平原と呼ばれるなだらかな大地が広がる。
ちなみに今までいた山脈にはそこに住むといわれる神獣の名がついていて、フェンリル山脈と呼ばれる。
山中には狼や熊、猪型などの中型モンスターが多い。それに比べて、平原には鼠や犬、虫など小型が多い。
小型モンスターは冒険者の中でも初心者が相手をするような種類だ。群れることも少なく、毒や個性的な能力もないモンスターが多い。
それでもモンスターは不安定な存在であり、攻撃的で凶暴だ。さらに、稀に種族を超えた能力を発揮するような希少種が現れることがある。
今、俺の前にいるこいつのように
「こいつはなんだ?」
「こりゃあ、ミミズだな。かなりでかいが。」
目の前の土が膝の高さまで盛り上がっている。それも1ヶ所だけでなく、見渡す限りの地面にいくつもの線が引かれている。
盛り上がった土の線は街道を横切るようなものもあるため、ところどころ道が破壊されている。
「デカミミズは襲っては来ないが厄介なモンスターだ。道を選ばないからな。しかも、こいつが吐き出した土はソウルも栄養もすっからかんになる。この地域は当分植物が育たなくなるぞ。」
「やるのか?」
「いや、こいつは厄介だ。体力が多いし、回復力が高い。2人じゃ何日もかかる。どうせ地域の冒険者が雇われて討伐されるから、そっちに任せよう。」
そこからは、ところどころ土の山を崩しながら街道を進むことになった。
おかげで今日着く予定の街にたどり着けず、人生初の野宿をすることになった。