隣の村
朝方、オズ村を出てから歩き続けた結果、夕方には隣の村に着いた。
オズ村と大して変わらない村トード。
この村も山の中に急に現れたように見えるほど、周りを木に囲まれている。
木に囲まれた平地に堀を作り、柵を作り、モンスターが簡単には入らないようになっている。
この村も何度もモンスターに襲われている証拠だ。
それでもこの村がオズ村と違うのは人間の領域まで1日歩けば着ける距離だというところだ。
オズ村は領内の一番西端に位置しており、モンスターをほとんど退治しほぼ安全だと言われるエリアまでは歩いて2日かかる。
トード村はオズ村まで行く時間と街のエリアまで行く時間がほとんど同じ位置らしい。
当然行商人が来る頻度もオズ村より高く、人口もオズ村より多い。
似た作りの村だが、オズ村よりもゆったりした時間が過ぎているようだった。
「おや、珍しいね。冒険者かい?」
村の入り口で見張り役の男に声をかけられる。
「ああ、今までオズ村で狩りをしてたが、そろそろ場所を変えようと思ってね。」
「なるほど。オズ村で武者修行かい。最近はあんまり聞かなかったが珍しい若者だ。成果の方はどうだい?」
「ぼちぼちだな。いい拾い物もあった。」
「武者修行?どういうことだ?」
聞き慣れない単語が出てきた。
「なんだ、坊主。知らないのかい?オズ村は魔物の活性が高いエリアでかなり危険なんだぞ。その分のリターンも一応あるが、行くのは物好きだけだ。それを知らないってことは坊主は村の出か?」
知らなかった。
確かに毎日のように大人たちがモンスターを狩りに出て行くのだが、それが普通だと思っていた。
たしかに1日歩くだけで最初はひっきり無しに襲って来た魔物がトードに着く頃には全然無くなった。
そういうことだったのか。
「昔は若い冒険者がオズへ向かっては腕を上げようと山を荒らし回ったそうだ。いつの頃からかその人気は別の場所に取られちまったそうだがな。」
「まあ、あの村は村人たちで守りあえる。俺もそれを学んで帰ってきたところだ。この坊主の世話を押し付けられたが。」
「怪しい奴らじゃなさそうだな。いいさ、村に入りな。宿はうちを使うといい。」
「ありがとよ。」
トード村は中の広さもオズ村よりちょっと大きい程度だった。ただ外に畑があり、この地域のモンスターの活性が低いことがわかる。
オズ村なら一日で荒らされてダメになる。
「あの人はなんで家に泊めてくれるんだ?」
「この規模の村に宿なんてものはない。普通は村人の誰かの家に泊めてもらい、その見返りを渡すんだ。泊めてもらうにはある程度の信頼が必要だからな。」
「さっきの会話でジョナスのことを信用してくれたのか?」
「いや、冒険者は基本的に信用されない。だからこそ泊めてもらう時に渡す見返りを多くする。それを出来るだけ稼いでいると信じてもらえたってことだ。」
「そんなに手持ちあったか?」
「オズで狩りをした成果があればある程度は遊んで暮らせるぞ。それくらい、オズは特別なんだ。」
はじめて聞く話だった。
その夜は村の入り口であった男に家に泊めてもらい、晩御飯はこっちの食材を使い一緒に食べた。
次の朝に男に黒狼の皮を1つ渡してやると男はかなり喜んでた。俺が処理をした失敗作だったんだが。
そして出発だ。次の街を目指して。