モンスター
「グルァ!」
俺たちは村から街へ向かう途中の山道でモンスターとエンカウントしていた。
狼型モンスター、ブラックウルフが3体。
黒狼と呼ばれるこのモンスターは、このあたりで最も出会う確率の高い種類だ。
身体の大きさは大人の股下程の高さがあり、体毛の色はその名の通り、黒色である。
夜は闇に紛れて慣れていないと視認すら困難だが、日の出ている今ならそれほど脅威ではない。
ジョナスが2体を引きつけ、俺は残りの1体と向き合っている。
構えは下段の構えでいつでも斬りはらいができるようにしている。
相手が飛びかかってきた瞬間、カウンターで仕留める作戦だ。
これがジョナスと決めた戦いかた。
俺はある程度の敵を引きつけ、無理して攻めることはせず、時間稼ぎをする。そしたら…
「ギャン!」
ジョナスと向き合っていた2体がしびれを切らして飛びかかった。
ジョナスはそれにきれいにカウンターを合わせて、1体を倒した。
続く二太刀ほどで残りを倒し、俺のフォローをしてくれる。
数の優位が無くなった黒狼が逃げようとする。
その背中からまず、足を斬りはらい、突きでとどめを刺す。
村でも何度かこなした戦闘だ。焦りもない。
「いい反応速度だ。なかなか短時間で形になってるじゃないか。」
「これくらいは問題ない。」
本来なら実戦経験の少なさから焦りも出てくるはずだが、それが全くない。あらかじめ決めておいたことをすれば危険は少ない。
それは、口には出さないがジョナスへの信頼があってこその落ち着きだ。
こいつの指示通り動けば、俺が初心者でもモンスターに遅れをとらない。
「経験の少なさが心配だったが、戦闘対してはかなり高いセンスを持ってるな。これならすぐ俺はお払い箱だ。はっはっは」
ジョナスは俺を褒めているが、客観的に見て俺にはまだまだ足りないものが多すぎる。
教えてもらうばかりで、ろくにこなせる仕事も少ない。
この旅の間にジョナスのレベルを抜かさなければならない。
それから、黒狼の死体を簡単に処理をして旅を続ける。
暗くなる前に山を降り、となり村まで辿り着かなければ、夜の闇で黒狼と戦うことになる。