旅人
旅といっても方法は様々だ。
この世界で一般的に決まった家を持たない人で街を渡り歩きながら生活している人は3種類に分けられる。
もっとも数が多いのは商人だ。特に行商人と呼ばれる人々は、いくつかの街の間を行き交い、物を売り買いする。
行商人の中にもランクがあり、大きい規模ならキャラバンと言われる団体で行動する。小さい規模なら個人で旅をしてる人もいるが、道中の安全を考えると不安が残る。
ちなみに俺の村であるオズ村にはキャラバンは各季節に一回ずつ、年に4回来ていた。その時に農作物や毛皮、モンスターの素材を売って、香辛料や武器なんかを買っていた。
後は月2回来る個人経営の行商人との取引で日用品を揃えていた。
大きな街にはキャラバンが多く訪れ、小さな村は小規模な行商人に支えられる。
これがこの世界で一般的な流通であるため、街道を使う人の半数は商人だと言える。
キャラバンは荷馬車を3台以上引き連れて動く。大きなキャラバンは荷馬車が10台以上になるらしい。流石にこのあたりでそんな規模は見たことがないが、王都の近くでは見られるらしい。
個人の行商人でも荷馬車を馬に引かせて歩く人や、大きな鞄1つで歩く人など個人といえ差はあるが、大体の人が自分は歩きである事が多い。
街道を歩く人を見れば、ほぼ商人だと思っていい。
他に旅をしているのは冒険者兼なんでも屋だ。
冒険者というのも様々なタイプがあるため、一括りにはできないが、旅をする冒険者は大抵キャラバンの護衛をしている。
護衛をしながら街を移動し、移動した先で仕事を探す。ある程度稼いだら別のキャラバンと次の街へ移動する。
このタイプはあまりランクの高くない冒険者だ。
ランクが高くなれば特定の街の専属になる。
その方が安定するし、街で優遇されるため冒険者の1つのゴールといえる。
しかし、危険なクエストでも強制的に受けることになるため、いいことばかりではない。
大量のモンスターが街を襲うとき、他の街への応援要請をしている間の時間稼ぎに使われるとほぼ命はない。
専属冒険者は逃げるという選択肢がないのだ。
だからこそ、求められるレベルは高くリターンも大きい。
ちなみに村はどこの村でも村人たちの戦闘力が高く、冒険者に協力的なため、危険度はそれほど高くないが、街より襲われることが多く、村の中で得られる優遇も少ないため、冒険者の中でもパッとしない中堅どころが着くことが多い。
ルーキーなのにオズ村に来たジョナスは特例だ。
冒険者の中でも専属になってない人は、モンスターや賊の討伐だけでなく、採取や配達、運搬に土木作業、その他雑用の中でこなせる仕事を受けている。
得意な仕事が減れば、街を変えて仕事を探し、また街を渡って仕事を得る。
このタイプが冒険者のほとんどを占めるため、世の中では冒険者が自由人の印象が強い。
しかし、仕事がなければ生きていけないのは誰もが同じである。それは皆平等なのだ。
商人と冒険者以外の旅人はごく一部である。
この中に芸人や吟遊詩人がいるわけだが街の外で出会うことは少ない。
彼らは数が少なく、街の中に留まる時間が長いためだ。
もしくは、これらの職業について一山当てようという無職が旅をするくらいで、観光などというのは貴族の遊びなのである。
この中から自分達も旅のスタイルを選ぶのだが、当然ジョナスと同じ冒険者として俺は旅をする。
移動手段は次の街まで徒歩である。