旅立ち
剣術だけなら村で一番自信があるとはいえ、まだまだ一人前にはほど遠い。
ジョナスの背中を追うようになってからそう感じていた。
だからこそ、年寄り連中の決定には驚いた。
「ユウトよ。お前は王都まで旅をし、村長の行方を探して参れ。むろん、一人でとは言わん。もうすぐ代わりの冒険者が村に着く。そしたら、ジョナスと共に旅をせよ。」
「お前は村の代表として王都へ向かうことになる。恥ずかしい真似はしてくれるなよ。そしていい機会だ。村では教えられない旅のしかたを教えてやるよ。」
ジョナスは先に知っていたみたいだ。
よそ者のくせに村の中でかなり信頼されている。
村を出て旅をする。
これは村人の憧れだ。
旅をするにはそれ用にいくつか準備しなければならないものがある。それに大人連中には村での役割もあるため、村から出られるということは特別なことなのだ。
俺もいずれはそうしたいと思っていたし、このチャンスを逃せば次にいつあるのかもわからない。
だから即返事をした。
「わかった!すぐにじじいを見つけてきてやるぜ!」
「それが一番だがこの旅はどれだけ続くことになるか分からん。念のため、今のうちに村との別れを済ませておけよ。」
「そ…そんなにかかるのか?」
別れの言葉を言うことは重大な意味を持つ。普段の生活で使うことはないし、俺が聞いたことあるのは生き死にに関わるようなときだけだ。
「今回は本当に何が起こるかわからん。何年も探すような事態は避けたいが、それでも必要であればそうする予定だ。一度旅に出れば一人で帰ってくるなんて事も出来なくなるだろう。その間に村がモンスターに襲われて被害が出る可能性もある。覚悟がないなら村に残してやるぞ?」
いつになくジョナスが真剣に話してくる。それを聞いて自分の考えの甘さに気がついた。そしてそれがジョナスに見透かされていた。腹が立つ。甘い自分に。
「分かった。一人前になるまで村には帰ってこない。それくらいの覚悟で村を出る。」
「ああ、今回はそれくらいの覚悟が必要だ。」
一週間後
「さあ、行こうか。」
村の入り口で俺とジョナスは旅装に身を包み並んでいる。
2人を囲うように村の人々が見守ってくれていた。
「じゃあな、みんな。サクッとじじいのこと見つけてくるから、待っててくれ。」
みんなの視線は温かい。村の心配もあるがそれより、俺の旅を応援してくれているのだ。
「よし!出発だ!」
こうして俺のはじめての旅が始まったのだ。