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はじまりのとき

(たましい)


この世界のあらゆるものには魂が宿るとされている。


人間の身体が物質界にあるとするなら、魂とは霊界に存在するエネルギーのことである。


魂を上手く使えば物質界に影響を与えることができる。

また、鍛えることで身体と同じく魂も強化され、身体の限界を超えて力を出せるようにもなる。


物語はひとりの青年の旅立ちからはじまる。




アスラ領 オズ村


「やぁ! せい!」


カン!カン!


一刀一刀全力で打ち込む。

手にするのは長年振り続けた木刀であり、最初は重く扱いきれなかったが、今では重さを感じず振り抜くことができる。


今の剣速なら、腕の骨くらいは余裕で折れる。

それでもためらいもなく全力で向かっていく。


目線や足の運びでフェイントをかけ、本命の一撃を隠しながらどんどん打ち込んでいく。


その時ふと、相手の動きが遅れた気がした。

その隙を見逃さず、とっておきの技を使う。


上段の構えから一気に振り下ろす。

相手が剣で受けようと剣先を上げた時、()()()()()()

すると、木刀は当たるはずの相手の剣をすり抜け空振りした。

そこから下段のまま返す刀で相手の足を刈りにいく。


相手は反応が遅れたためギリギリで空に飛び上がり足払いを避けた。

しかし、空中で身動きが取れない隙を俺は見逃さない。


空中にいる相手の鳩尾に向けて突きを一閃。

相手は咄嗟に左手で身体を守るが衝撃は殺しきれず、後方まで吹き飛ばされた。


「一本!!」


「しゃあぁ!!」


はじめての一本である。これで…


「これでやっと旅に出れるな。」


この人は稽古の相手をしてくれた、ジョナスだ。

身分は冒険者でまだまだ新米の部類だが、この業界での評判は良く、領内の若手一番の注目株だ。


しかしこの半年間、冒険をせずウチの村に雇われてモンスターから村を守ってくれていた。


この国の村々は本来ならそれぞれの村に領主からの騎士や兵士が配属され、村を守ってもらう。

しかし、この村は少し特殊で昔から村の人々が自分達で戦い、村を守っていた。

今年は1番の戦力である村長が8年に一度のお勤めとして王都に行っている。

その間村を守ってくれたのがジョナスということだ。


「この半年、頼まれるままお前の相手をしてきたが、まさか本当に一本取られるとはな。」


「何言ってんだよ。結局ソウル使わなかったくせに。」


ジョナスが来た時からずっと、俺は稽古という名の決闘を申し込み続けた。

今までは村長に小さい頃から鍛えてもらっていたが実戦は一度もしたことがなかった。


しかし、今では村長を除いたら村の中で負ける相手がいないのに戦いに参加させてくれないのはおかしい。

俺もみんなと一緒に戦いたかった。


このままではひとりでモンスターに戦いを挑みかねないと心配した村長は旅の出発前に、俺にひとつの条件をつけた。


半年でジョナスから一本を取ること。


これができれば今後の村での戦闘に俺を加えてくれるというのだ。


当然、意気込み勇んだ俺は、ジョナスが来た時からボコボコにされ続け、今日やっと一本取ることができたということである。


「まあ、俺のソウルも特殊だからな。

しかし、それでもこの俺に一撃入れたんだ。

もう、そこいらのモンスターに遅れを取ることもないどろう。」


「ふん、ありがとよ」


まだ満足のいく結果ではなかったが、とはいえ条件は達したのだ。


これからはジョナスと共にモンスターとの戦闘に参加できるし、ジジイが帰って来た時にも並んで戦える。


「これは村長から預かっていた剣だ。お前ならこの半年で必ず俺から一本取るから、俺の手から渡して欲しいってよ」


渡されたのは鋼鉄製の剣。

この世界の剣士に最も使われている片手剣だ。

これを持つことは剣士としてのスタートラインに立ったということ。

信頼できる人間から一人前と認められたということだ。


「…………。 半年間、本当にありがとうございました」


「おい!おい! こりゃたまげた!

お前、頭下げるなんてことできたのか!」


ジョナスが俺の肩を叩きながら身体を揺すってくる。

耳元ででかい声で騒がれ顔をしかめたが、心の中では確かな達成感と感謝を感じていた。


それからの日々は鋼鉄の剣の使い方とモンスターとの戦い方をジョナスに教えてもらいながら、村長のジジイが帰ってくるのを待った。

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