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3 盲目の女子高生、ひかり

杖を器用に操り、彼女は歩き出した。


別に驚くことはない。普段外に歩いてる時でも、目が不自由な人は良く見かける。

相手が制服を着た女子高生というだけだ。


でもなぜだろう。俺は彼女の後姿がとても寂しげに思えた。

まるで、本当は誰かに自分を見つけてほしいと語っているような、そんな背中に見えた。


もしかしたら、自分と照らし合わしているのかもしれない。

勝手なエゴかもしれない。

それでも、なんだか放っておけなかった。

俺は無意識に彼女の後ろを着いて行った。


「あのさ!名前教えてよ!俺は新道ナオヤ!」


そうだ、名前を聞くのを忘れてた。自己紹介の基本じゃないか。


彼女は振り向くこともなく、こう言った。


「・・もう会うことのない人に、教えても意味がないので。」


俺がボクサーなら、完全にKO負けしているような試合だ。

でも今日の俺は違う。今日一日で何度もダウンしては、何度も立ち上がっているのだ。


「いいや、それは分からない。もしかしたらまたスクランブル交差点でぶつかるかもしれない。」


「大丈夫です。万が一、もう一度ぶつかったとしても、名前を教える理由にならないです。」


なぜだ?どうして名前を教えてくれない?

もしかして、凄く恥ずかしい名前なのか?

それとも、そこまでして俺を拒絶したいのか?

もう理由なんてどうでもいい。彼女の名前を聞くまで、俺は帰らないと誓った。


「つ・・次もしぶつかったときに、大丈夫!?じゃなくて、〇〇大丈夫!?って言えるからだ!!」


もう無茶苦茶だ。こんなの理由になってない。完全に俺の負けだ。


そう思った。そのとき・・


「ふふふ・・・なにそれ・・バカみたい。」


彼女がクスクスと笑った。笑顔を見せた。


なんだろう、俺は純粋にそれが嬉しかった。

笑顔を見れたことが、嬉しかった。

それと同時に、もっと彼女の事を知りたいと思ってしまった。


「・・ひかり。ひかりっていう名前。」


「ひかりちゃんか!覚えておくよ!教えてくれてありがとう!」


俺は、名前を聞けた達成感で、満足していた。

しかしここからは、もう踏み込んでいいのか分からない領域だ。

仮にも、向こうは女子高生。良い大人が、女子高生の連絡先を聞いて大丈夫なのだろうか・・


「じゃあ、私はこれで・・」


「ま、まって!あの、良かったらさ、ほんっっっっとうに良かったらで良いんだけど、

連絡先教えてくれないかな!?」


心臓がバクバクと鼓動を打つ。顔が真っ赤になっていた。


「・・・・それは何のためにですか?」


まただ。また理由がいるのか。


「そ・・それは・・」


ダメだ。ちっともマシな答えが出てこない。


「興味本位で、そういうこと言うのやめてください。」


さっきみたいな無茶苦茶な理由はダメだ。ここは正直に、素直に自分の想いを伝えよう。


「さっきひかりちゃんが笑ったとき、もっとひかりちゃんの事を知りたいと思ったんだ!

興味本位と言われれば、同じ意味に捉えるかもしれないけど、俺は純粋に、ひかりちゃんと仲良くなってみたいと思ったんだ!」


俺は何を言っているんだ。女子高生相手に。

でも嘘はついていない。これが俺の本心だ。


「・・・・本当に変な人ですね。言ってて恥ずかしくないんですか?」


彼女の表情が、穏やかになった気がした。


「携帯、貸してください。ロック解除して。」


「え!?う、うん!」


俺は彼女に携帯を渡した。


「・・・・はい、これ私の番号です。」


「あ、ありがとう!」


彼女は俺の携帯に、番号だけを打ち込んで渡した。

これがRPGゲームなら、最強のアイテムを手に入れた気持ちだ。

それにしても、目が見えなくても普通に携帯が触れるんだなと、関心した。


「・・・・連絡しても、私が返信するかどうかは分かりませんけどね。」


「じゃあ返信したくなるような、そんなメッセージを送るよ!!」


彼女がまた少し、笑った気がした。


「・・・・でわ。」


彼女は会釈をして、再び杖を突きながら歩いていった。



彼女が去ったあと、フと我に返った。

なぜあそこまで意地になったのだろう?

ただ盲目の女子高生が珍しく、なんとなく近づいただけなのだろうか?

オーディションに落ちたというだけの1日が嫌で、何か特別な1日の終わりが欲しかったのか?

連絡先を聞いたのは良いが、これから先、いったいどういう関係になりたいんだ?


自問自答を繰り返しては、今日の自分はなんだかいつもと違うと感じた。


だが、確実に揺るがない気持ちがある。


それは、彼女の笑顔をもう一度見たい。


あの笑顔に、今日一日の嫌な事がかき消された気分になった。


盲目の女子高生、ひかり。

彼女は、俺にとってかけがえのない存在になる、そんな気がしたんだ。

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