7魔法
『アルディア』に関することをある程度知れたので、次は『誰でも分かる魔法に関する知識』を読み始める。
この本によると、この世界の魔法適性は5つ存在する。
1つ目は属性魔法。
魔力を火や水、風などに変換して操ることができる魔法が使える。
2つ目は回復魔法。
傷や魔法、状態異常を癒すことに長けた魔法が使える。
3つ目は補助魔法。
身体能力、魔法の威力を向上させる魔法が使える。
4つ目は特殊魔法。
全ての適性の中でも特に稀少でこの適性を持つ人は少ないようだ。封印や召喚、時空系統などの魔法が使える。
5つ目は俺が持つ無属性魔法。
受付嬢のララリアさんが説明してくれた通り、全適性の魔法が使えるが初級魔法しか使えない魔法適性。
魔法が重視されるこの世界ではあまりに役立たない魔法適性のため、周囲からは虐げられたり、馬鹿にされることがあるようだ。
次に魔法の段階について。
魔法は初級魔法、中級魔法、上級魔法、最上級魔法の4段階ある。
初級魔法に近いほど威力が小さい。その代わりに少ない量の魔力でも発動することができ、詠唱も短いようだ。
反対に最上級魔法に近いほど威力は桁外れに大きい。だが魔法を発動するには大量の魔力を消費し、詠唱も長い。
魔法にも一長一短があると言うわけだ。
「よし! 早速一通りの魔法を試そう!」
まずは炎系統の属性魔法からだ。
本の通りに指先に魔力を集中させる。
「〝火炎をここに――ファイア〟」
ボボボボボボッ!
詠唱が終わると、ガスバーナー程度の炎が俺の指先から出現する。
「おおおおおおおおおお!」
魔法だ! 俺が魔法を使っている! 感激だ! 初級魔法だけど嬉しすぎる!
あまりの感動に涙を流す。この世界に来て何度目の歓喜の涙だろうか。
「よし、次の魔法だ!」
今度は身体能力を向上させる補助魔法を試してみよう。
「〝肉体を強化せよ――パワーアップ〟」
全身から魔力が溢れだし、身体が軽くなるのを感じた。
「よっと」
軽くジャンプしてみると楽に身長の高さまで跳んだ。
「次は……」
「うえーん!」
次の魔法を試そうとした時、女の子が泣いているのを発見。どうやら転倒して足を擦り剥いてしまったようだ。
よし、試しに回復魔法を使ってみるか。
「大丈夫か? 〝傷を癒す光――ヒール〟」
俺の手から淡い光が放たれ、女の子の擦り傷を癒していく。暫くすると、擦り傷は完全に治った。
なるほど、この程度の怪我なら傷を残さず完治できるというわけか。本にも止血程度の効果ならあるそうだ。
「ありがとうお兄ちゃん!」
傷が癒えて女の子は友達の輪へと戻って行った。
さて、次は特殊魔法だな。
この結界系統の特殊魔法なんて良さそうだな。
「〝我が身を守る障壁――シールド〟」
俺の目の前に1枚の半透明の盾のようなものが出現する。
視線をずらすと、同様に半透明の盾は視線を向けたほうに移動する。この結界は俺の視界に合わせて動いてくれるようだな。
「これは便利だ」
初級魔法だと思って少し侮っていたが、なかなか使えそうな魔法が幾つもある。
「よーし、午後の昇格試験まで時間があるから使える魔法は試すぞ!」
テンションが上がりきった俺は夢中で初級魔法を試し続けるのだった。