6アルディア
翌日。
午後に行われる試験までまだ時間があるので午前中はある本を求めて街の本屋へと訪れる。
その探していた本と言うのは――
『アルディアの歴史』
『誰でも分かる魔法に関する知識』
この2冊の本だ。
まずはこの世界の歴史、一般常識を知る必要がある。
それと魔法適性が無属性魔法だからと言って魔法が全く使えないわけではない。初級魔法なら使えるのだ。
何かの役に立つかもしれないし、一応知っておいて損はないだろう。
早速購入した本を公園のベンチに座って読んで見る。
まずは『アルディアの歴史』を読もう。
最初はこの世界の創世について。
今から10000年前――何も無い空間に創造神はこの世界を創造し、天を創り、海を創り、大地を創り上げた。
空には太陽と星を、大地には植物を生やした。
更に創造神は多くの生き物を創り、知識を与え、魔法を授けた。
創造神はこの世界を『アルディア』と名づけてこの世界を去った。
神が去った後、それぞれの種族は互いに助け合い、時には戦争をしながら文明を発展させていった。
そして今は、どの種族とも争い事はせずに平和に過ごしている。
以上がこの世界についての歴史だ。
次は種族について。
この世界にはヒューマン、ビースト、エルフ、ドワーフ、ドラゴニュート、デーモン、フェアリー、マーメイド、ジャイアント、エンジェルの計10種族で構成されている。
ヒューマンは俺と同じ種族。いわゆる普通の人間だな。他の種族と比べてこれと言った特徴はないが、『アルディア』で最も人口が多く栄えている。
ビーストは身体にそれぞれの動物の耳や尻尾などの特徴がある種族。いわゆる獣人だ。身体能力が非常に高く、仲間同士の絆がとても強い。
エルフは主に森で暮らすことを好む耳長の種族。男女問わず美しい容姿をしており、ヒューマンの10倍以上の寿命を持つとされている。
ドワーフは髭を生やし、小柄だがかなりがっしりとした体格をしている種族。手先が器用で芸術や意匠に秀で、優れた工芸品を作り上げる。
ドラゴニュートは竜の角と尻尾が生えている種族。再生力に特化しており、ごく稀に『竜化』と言う能力を持つ存在が生まれることもある。
デーモンは浅黒い肌と赤い瞳、蝙蝠のような翼をを持つ種族。生まれながらにして膨大な魔力を有し、強力な魔法を発動できる。悪魔のような外見をしているが悪い種族ではない。
フェアリーは子供ぐらいの体格で背中に蝶のような羽を持つ種族。その数は少なく、エルフよりも遥かに長命で魔力もかなり高い。
マーメイドは下半身が尾ひれの女性のみのが生まれる種族。酸素なしで水中を高速で泳ぐことができ、陸に上がる時は尾ひれを脚に変えて歩行する。
ジャイアントは非常に巨大な体格と強靭な肉体を持つ戦闘種族。力だけなら10種族最強と言われているが魔力が少ないため魔法が苦手。
エンジェルは頭に輪っか、背中には白い翼を生やしている天使のような外見をした種族。最初に創造された種族と言われ、デーモンに匹敵する魔力を有する。
ちなみに違う種族同士で子を成した場合は母性遺伝がかなり強いため母親と同じ種族として生まれるそうだ。
次は大陸について。
『アルディア』に大陸は1つしか存在せず、それぞれの種族が1つずつ国を有している(マーメイドは海中、エンジェルは空に浮かぶ島に国を築いている)。
俺がいる『センタクル』はヒューマンの王が統べる『アルバラート王国』に所属している。
次はモンスターについて。
モンスターには種族ごとにモンスターランクというものがつけられており、冒険者ランクと同じGからSまである。
モンスターランクについては、おおまかに次のようになる。
Gランク:子供が倒せるクラス。スライムなど。
Fランク:一般人の大人が倒せるランク。ゴブリンなど。
Eランク:訓練した兵士や傭兵などが倒せるランク。オークなど。
Dランク:経験を積んだ中級冒険者が倒せるランク。ゴーレムなど。
Cランク:1匹で村が滅びる危険性があるランク。オーガなど。
Bランク:1匹で街が滅びる危険性があるランク。グリフィンなど。
Aランク:1匹で都市が滅びる危険性があるランク。ドラゴンなど。
Sランク:伝説に語られるモンスターで、国の存続に関わるほどの危険性がある。フェニックスなど。
また、モンスターランクは危険性だけでなく、稀少性も含まれるのでGランク並みに弱いモンスターでもAランクのモンスターも存在するようだ。
最後に宗教について。
この世界には創造神教と言う宗教がある。
創造神の教えを説き、人々を導く世界的な宗教団体でこの世界のほとんどの者がこの宗教に属しているそうだ。
創造神教以外の宗教に属している者は異端者として冷遇される傾向にあり、最悪の場合は処刑されることがあるらしい。
どこの世界も宗教には厳しいな……。