4冒険者ギルド
冒険者ギルド。
それはファンタジー系RPGに出てくる組織のことだ。
主に冒険者への仕事を斡旋したり、その支援をすることを生業としており、他にも冒険者が必要としている情報も教えてくれる。
俺の世界で言えばハローワークのようなところと考えれば分かりやすいかな。
「ここが冒険者か!」
他の建物よりも遥かに大きい建物。看板には『冒険者ギルドセンタクル支部』と書かれている。
建物から酒や食べ物の香りがする。
大勢の人たちの騒がしい声がする。
この建物の中には新参者の俺に絡んでくる連中がいるかもしれない。
けど――
「それが異世界の醍醐味だよな!」
覚悟を決めて中に入る。
「いらっしゃいませー! お食事ですか? それともお仕事ですか?」
茶髪のウェイトレスお姉さんが、愛想よく出迎えてくれた。
どうやら冒険者ギルドは酒場が併設されているようだ。
周囲を見渡すと、鎧を装備した戦士、ローブを纏った魔法使い、冒険者たちが酒を煽っていたり、クエストを受けていたりしていた。
特に荒くれ者はいないようだな。良かった……。
しかし、やはり俺は注目を集めている。新参者の俺が珍しいのだろう。
「冒険者登録をしたいんですが……」
「それならあちらのカウンターへどうぞ!」
俺はウェイトレスさんの言う通りにカウンターへ向かう。
受付嬢は3人。全員美人。しかもその内の1人は猫の獣人だった。
俺は迷うことなく兎の受付嬢さんのところに向かう。
「いらっしゃいませ。用件の方はなんでしょうか?」
受付嬢さんがウサミミをユサユサとさせながら訊ねる。
ああ、本物のウサミミだ。あまりの嬉しさに涙が出てきそうだ……。
「あの、お客様、ご用件は……?」
いつまでも黙っている俺に受付嬢さんは首を傾げる。
「あ、すみません。えっと、冒険者登録をしにきました」
「冒険者登録ですね。登録手数料は銀貨1枚になりますがよろしいですか?」
日本円に換算すれば10000円か。
「これで」
俺は懐から金袋を取り出して銀貨1枚を受付嬢さんに渡す。
「はい、確かに受け取りました。では、こちらの用紙に記入をしてください。代筆は必要でしょうか?」
「いえ、大丈夫です」
神様のお陰で『アルディア』の文字が理解できるのでスラスラと記入できる。
神様には本当に感謝しなきゃな。
名前をレイジ、年齢を16歳、得意とする武器は剣など記入していると、魔法適性についての記入欄があるのに気付いた。
そう言えば、俺の魔法適性はいったい何なんだろう?
「あの、実は自分の魔法適性が分からないんですが……」
「分かりました。少々お待ちください」
受付嬢さんは暫くカウンターから離れると、ボウリングの球ぐらいに大きい水晶玉を持って戻ってきた。
「あの、これはなんですか?」
「この水晶玉は触れた人の魔法適性を調べる機能があるマジックアイテムです。これに触れて下さい」
「分かりました」
いよいよ俺の持つ魔法適性が判明する。どんな魔法適性だろうと無限の魔力を持つ俺ならきっと大丈夫なはずだ!
俺はドキドキしながら水晶玉に触れる。
しかし、水晶玉には変化が起きない……。どうしたんだ? 故障かな?
いつまでも変化しない水晶玉に首を傾げていると――
「「「「「「「「「「ハハハハハハハハッ!」」」」」」」」」」
周りにいた冒険者たちが大声を上げて笑い出す。どうしたと言うんだ?
受付嬢さんに視線を向けると、どこか暗い顔をしている。
「あの、どうかしたんですか……?」
「……はい。水晶玉で調べた結果、貴方は無属性魔法の適性があると判明されました……」
「無属性魔法、ですか? それはいったいどういう魔法適性なんですか?」
「無属性魔法は全ての種類の魔法が発動できます魔法適性です……」
おお、それは凄いな! だけど周りの反応が可笑しいのはどうしてだろうか?
「しかし、それは初級魔法だけです。つまり貴方は初級魔法しか使えないことになります……」
受付嬢さんの言葉にようやく周囲の反応の意味が理解できた……。
頭の中が真っ白になる。
初級魔法しか、使えないだと……?
それじゃあ、無限の魔力を持っていても何の意味がないじゃないか……。
神様、俺の異世界生活はどうやら前途多難のようです。