23模擬戦①
指名された俺とミーアは訓練場の中央で向かい合う。
「先に言っておくが、これは昇格試験の本番である盗賊団の殲滅に向けての互いの実力を知るためのものだ。やりすぎないようにしろよ」
ヴァンさんの言葉に俺とミーア、そして他の冒険者たちが頷いた。
「よし、それでは戦闘の準備をしろ」
俺はショートソードを、ミーアは2本のタガーを手に取り、構える。
「始め!」
「はぁっ!」
戦闘開始の合図と共に、ミーアが素早い体捌きで前へと出る。流石獣人族、かなりのスピードだ!
「〝肉体を強化せよ――パワーアップ〟」
ミーアのスピードに対抗するべく、身体能力を向上させる。
だが、身体能力を向上させているとは言え、やはりミーアの方が1枚上手だった。
「〝我が身を守る障壁――シールド〟」
半透明の盾が出現させて片方のタガーを防ぎ、もう片方のダガーはショートソードで防ぐ。
しかしミーアの攻撃は止まらない。守るだけで精一杯で攻撃が全くできないぞ!
「そんなんじゃ、私の攻撃は止められないわよ!」
ミーアの猛攻が続く。何とかしてミーアの動きを止めなければ。
こうなったあの手で行くか……。
「〝水をここに――ウォーター〟」
水系統の初級属性魔法〝ウォーター〟を発動。俺の掌から水が放出される。
「――ッ!?」
咄嗟の反応でそれを避けるミーア。放たれた水は訓練場の床を濡らす。
よし、これでいい……。少し辛いだろうけど、悪く思わないでくれよ……。
「〝雷をここに――サンダー〟」
掌から微弱の威力の雷撃が放たれる。
「きゃああああ!?」
俺が放った雷撃は床の水を伝ってミーナを感電させる。
初級魔法なので威力は低い。感電しても多少の痛みと痺れで少しの間動きを止まる程度のことはできる。
「俺の勝ちだ」
俺は動きを止めたミーアの喉元にショートソードの刀身を突きつける。
「そこまで! 勝者レイジ!」
ヴァンさんの声が周囲へと響き、それを聞いて俺はショートソードを鞘へと納めた。
周囲の人たちも感嘆の声を上げている。どうやらミーアが勝つと思っていたのだろう。
「まさか初級魔法をあんな使い方をするなんてやるわね」
痺れが解けたのか、ミーアが俺に声をかける。
「ありがとう、そう言ってもらえると嬉しいよ」
手を差しのべるミーアと握手を交わす。
「おめでとうございます、ご主人様!」
ルナの隣に戻ると、尊敬な眼差しで俺を見つめてくる。ちょっと照れるな……。
「次はルナとラドスだ」
「女が相手か……」
「私が相手では不服でしょうか?」
ポツリと呟くラドスにルナが食ってかかる。ルナの表情がみるみる変わっていくぞ。
ヴァンさんはそんな2人を見て溜め息を吐く。
「冒険者にとっては性別は関係ない。必要なのは実力だ。Eランク冒険者になりたいのなら協調性を大事にしろよ」
「申し訳ありません……」
「チッ……」
ヴァンさんの忠告をルナは素直に謝るがラドスは舌打ちする。
あのラドスと言う男、どうやら協調性がないようだな……。
皆の前に出ると、ルナは弓を、ラドスは魔槍を構えて向かい合う。
「始めろ!」
開始の合図。それと同時にルナは魔力で作られた矢をラドスに向けて射る。
「はあっ!」
ラドスは迫る矢を魔槍で払い、ルナとの間合いを詰める。
ルナは負けずと矢を次々と射る。
だが、ラドスは確実にルナとの距離を縮める。
弓では勝てないと判断したのか、弓を手放して短剣による接近戦に挑もうとする。
しかし――
「はあぁぁぁぁぁっ!」
「くっ……」
ラドスによる魔槍の連撃。ルナは防御に徹するのみだった。
「そこまでだ! 勝者ラドス!」
ヴァンさんの制止の声でラドスが動きを止める。
「ヴァンさん、私はまだやれます!」
「最初に言ったと思うが、これはあくまで模擬戦だ。盗賊退治をするための仲間の実力を知るためのものだ」
「……分かりました」
ルナは重い溜め息を吐き、負けた悔しさを押し殺したかのような顔をして俺の元へと戻る。
「申し訳ありません、ご主人様……。負けてしまいました」
「気にするな」
俺は落ち込んでいるルナの頭を撫でて慰めた。




