21昇格試験
『アルディア』に転生して2ヶ月が経過した。
俺とルナは冒険者として冒険者ギルドのクエストを順調にこなしていきながら何とか生活できていた。
そんなある日。
「おめでとうございます。レイジさんとルナさんのギルドポイントが貯まりましたのでEランク昇格試験が受けられるようになりました」
Eランク昇格試験を受けられる通知が知らされる。
そう言えばFランクになってからたいぶギルドポイントが貯まっていたな。
「一応今回の昇格試験を辞退できますが、次の昇格試験は半年後になります」
半年後か……。それはずいぶんと先だな。
もし、Eランクに昇格できればクエストランクDのクエストを受けることができるな。そうなれば少しでも多く金とギルドポイント貯めるをことができる。
「よし、昇格試験を受けます」
「はい、私も頑張ります」
「分かりました。昇格試験は明日になります。ちょうど今からEランク昇格試験に関する会議を行いますので私について来てください」
ララリアさんに案内されて2階の会議室に案内される。前回俺がFランクに昇格するために講義を受けた部屋だ。
部屋には6人の冒険者が集まっていた。
1人目は鋭い目付きをしたガタイの良い男の戦士。装備品は少し大きめのロングソードと鉄製の鎧。
2人目は赤い髪を動きやすいように短く切り揃えている犬獣人の少女だ。腰には2本のダガー。動きやすいモンスターの革で作られたレザーアーマーを身に付けている。
3人目は黒いローブを身につけ、手には杖を握っている少年の魔法使い。優男のイメージだな。
4人目は椅子に座り、じっと窓から外を眺めている男。眼前のテーブルに長槍を置いているので槍使いのようだ。
そして、残りの2人は――
「あ、レイジとルナじゃない!」
「お久しぶりです」
サラとエリスだ。最近は『ワルキューレ』の仕事が忙しくてなかなか会えなかったから、半月ぶりかな。
「よう、久しぶり。2人も昇格試験を受けるのか?」
「うん、先輩冒険者たちのお陰でギルドポイントも早く貯まってね」
「皆様、とても良い先輩たちなんですよ」
どうやらサラたちも順調にクランに溶け込めているようだな。良かった良かった。
俺もいつかは自分のクランを立ち上げてみたいものだな。
だが、クランを立ち上げるにはランクC以上の冒険者でなければいけないので、まだまだ先は長いけどな……。
しばらくサラたちと談笑をしていると――
「よーし、集まってるな」
1人の男性が入室し、俺を含む全員が男性に視線を向ける。
試験官のヴァンさんだ。今回の昇格試験はあの人が担当するようだ。
「さて、皆聞く準備はできているな。これからFランク昇格試験についての説明を始める。早速で悪いが、お前たちには1度戦闘を行って貰うぞ」
ヴァンさんがそう告げた瞬間、皆に緊張が走る。
まあ突然、戦闘と聞かされれば誰でもそうなるだろう。
そんな俺たちを見てヴァンさんは笑みを浮かべ、話を続ける。
「だが、その戦闘に負けたからと言って即昇格試験が不合格になるわけじゃない。この戦闘の目的はお前たちの実力を互いに知らせるためだ」
互いの実力を知るためだって? それはどういう意味だろう?
「『センタクル』から2日程度の場所にある『オルトラの森』に盗賊たちがアジトを作っていることが判明された。この盗賊の討伐が今回の昇格試験の内容になる」
その言葉にシンと室内が静まり返る。
盗賊の討伐。
それはクエストランクD以上のクエストでしか受けられないものだ。
俺を含むここにいる冒険者たちはGランクからEランクの依頼しか受けられない。
つまり、誰も人を殺すという行為に抵抗を覚える者が多いというわけだ。
それ故に、盗賊などの賞金首を相手にするクエストはクエストランクD以上に位置付けられているのだ。
「皆知っているようだが、クエストランクD以上のクエストには犯罪者の討伐、商人たちの護衛と言った仕事がある。敵を殺すのに躊躇えば逆襲されて自分や仲間、依頼人が殺されることになると言う最悪の展開になるかもしれん。そうならないためお前たちには人を殺すという行為を経験して貰う」
ヴァンさんの言葉だけが室内へと響き、俺たちはじっとその話を聞いている。
「別にこの昇格試験を棄権しても構わんぞ。人を殺すことを躊躇うのならこれ以上冒険者ランクを上げる必要はないからな」
ヴァンさんの言葉に俺の心は動揺している。
いつかは来ると分かっていた。冒険者としてランクを上げていけばいつかは人を殺すクエストを受けることもあると。
まさか、こんなに早くとは思わなかったけど……。
今まではゴブリンやウキウキなどの人型に近い外見のモンスターを討伐してきたが、今回は同じ人だ。モンスターとは全然違う。
そう、『アルディア』は俺のいた世界とは違う。この世界での人の命はそれほど軽いのだ。
「ご主人様……」
動揺している俺にルナが手を握ってくる。
「ルナはどうしたい? この昇格試験を棄権したいか?」
女の子に人を殺させるのには抵抗がある。無論俺だって人を殺すことはすごく怖い……。
俺の問いに、ルナはフルフルと首を横に振るう。
「私はこの昇格試験を受けたいです。私にはご主人様をお守りする義務があります。たとえ、人を殺すことになったとしても。そのためにも、今回の昇格試験を受けよと思います……」
真剣な眼差しでそう言い返すルナ。
俺のためなら人を殺すことも厭わないと言うことか……。それがルナの覚悟のようだ。
女の子のルナがそこまで覚悟しているのに男で主人の俺が怖じ気つくわけにはいかないよな……。
俺はこの世界で生きると決めたんだもんな。
他の冒険者もこの部屋に居続けていると言うことは昇格試験を受ける覚悟を決めているようだ。
「よし、これから模擬戦を行う。全員訓練場に向かうぞ」




