2チート能力
俺の名前は神埼レイジ。高校2年生。剣道部に所属。家族構成は父と母、妹の4人家族。自他共に認めるファンタジー世界が大好きな生粋なオタクだ。
そんな俺は今、青い空の上に座っていた。
いや、浮いていると言ったほうが正しいのかな……?
一面見渡す限り雲一つない青い空。果てが見えない。
「ここはいったいどこなんだろう……?」
確か俺は学校の帰り道で漫画を買って家に帰る途中にトラックに……そうだ! 俺はトラックに轢かれたんだ!
もしかして俺は死んだのか!? じゃあ、ここは天国という場所なのでは!?
「やっほー! 気がついたかい?」
「――ッ!?」
背後から声。
振り返ると、そこには白髪の少年が佇んでいた。
年齢は10歳ぐらいだろうか? まるで魔法使いが纏うようなフード付きのローブを身に着けている。
「君は?」
「どうも初めまして。僕は神様だよ」
「……はい?」
明るい笑顔で自己紹介する少年に、思わず間抜けな返事をする。
神様だって? 冗談を言っているのか?
しかし、今のこの状況を考えれば少年――神様の言うことは本当のようだ。
「あなたが神様だとすれば、俺は死んだんですか?」
「うん。君はトラックに撥ねられて死んじゃったよ」
「そうか、俺は死んだのか……」
父さんと母さん、それに妹は今頃悲しんでるんだろうな……。
「でも、君は凄く運が良いよ!」
神様はパチパチと拍手する。
「数十万人に一人に与えられる大チャンス! なんと、君にはファンタジー異世界に転生する権利が与えられることになりました!」
神様が紙吹雪を撒く。
「マジですか!?」
「マジです!」
「よっしゃあああぁーーーー!」
神様の言葉に俺のテンションが上がる。
死んだことは悲しいけど、憧れのファンタジー世界への転生。まさか漫画みたいなことが起きるなんて夢のようだ!
「喜んで貰えて良かったよ。それで、君が転生するのは『アルディア』と言う魔法の世界だよ」
魔法の世界! まさしく俺が憧れ、望んでいた異世界じゃないか!
「さらに転生の特典として君に1つだけチート能力を授けるよ」
しかもチート能力まで! 神様は太っ腹だな!
「この本の中から選んでね」
神様が辞典のように分厚い一冊の本を俺に渡す。
本には『身体能力向上』、『高速移動』、『超再生』、『千里眼』など様々なチート能力が記されている。
さて、どのチート能力にしようかな……。
この『七聖剣』とか非常に格好良いし、こっちの『異空間収納』も便利っぽくていいな。『空間切断』なんてのもすごく強そうだ……。
う~ん、どれにしようか迷うな……。
でも、せっかく魔法がある異世界に行くんだし、やっぱり魔法に関するチート能力を選んだほうが良いよな。
パラパラとページを捲って、魔法関連のチート能力を見てみる。その中には『全魔法適性』と言うものがあった。
「神様、俺が転生する『アルディア』と言う異世界はどのような魔法があるんですか?」
「『アルディア』には多くの魔法が存在するよ。例えば火を操る属性魔法。身体能力を向上させる補助魔法などがあるね。人は生まれつき適性が決まっていて、その適性の魔法しか使えないようだよ」
「ちなみに俺の魔法適性がなんだか分かりますか?」
「う~ん、君の魔法適性が向こうの世界に転生してみないと分からないな。まあ、魔法適性は必ずあるから心配しなくても大丈夫だと思うよ?」
「そうですか……」
誰にでも魔法適性はあるか……。
よく読むライトノベルでは異世界に転生・転移した主人公が魔法の適性がないという理由で魔法が使用できないと言うオチがあるのだが、どうやらそのようなことはないようだ。
それなら、俺はこのチート能力を選ぼう!
「決めました。俺はこの『無限の魔力』を選びます!」
魔法を発動するのに必要な物。それは魔力だ。
魔力が無限なら俺はいくらでも魔法を発動することができる。まさに最高のチート能力ではないか!
「分かった。それじゃあ『無限の魔力』を君に授けよう。あと、これはサービスだよ」
そう言って神様は、俺に硬貨が入った袋、紫色の液体が入った瓶、銀の指輪を渡してくれた。
「袋の方は『アルディア』の硬貨。それだけの量があれば暫くの間は生活できるはずだよ」
袋の中を見てみると、銅でできた硬貨、銀でできた硬貨、金でできた硬貨の3種類の硬貨が入っていた。
神様によれば銅貨は日本円の100円の価値。銀貨は銅貨の100倍の価値(10000円)。金貨は銀貨の100倍の価値(1000000円)。
袋には金貨1枚、銀貨40枚、銅貨100枚――合計1500000円分の硬貨が入っている。
「瓶に入っている液体はパーフェクトポーション。どんな傷や病気でも完全に治す薬だよ。異世界に行ったいきなりモンスターに重傷を負わされるのは流石に嫌だろう?」
確かに、それは嫌だな……。
「そして指輪。それは魔力を極限まで抑えるようにできている」
「魔力を抑える?」
「大きすぎる魔力は時として自分の意志に関係なく周囲に影響を及ぼすことがあるからね。それを付けていれば大丈夫なはずだよ」
「ありがとうございます」
俺は指輪を右手の薬指に嵌める。
「そうだ。流石に学生服だとファンタジー感が台無しだからね。これもオマケだよ」
神様がパチンと指を鳴らすと、俺の学生服から光が発せられる。
着ていた学生服から異世界の物と思わせる服装に一瞬で変わる。その上から革製の胸当てと金属製の籠手とすね当て、腰にはショートソードを装備している。
「さらに特別サービス。『アルディア』の言葉と文字が理解できるようにしておいたからね」
「何から何までありがとうございます、神様」
「どういたしまして。さて、そろそろ異世界に転生させるよ。異世界生活を存分に楽しんでね、神埼レイジくん」
いよいよ念願の異世界生活が始まるんだ!
ワクワクして興奮が収まらない!
「それじゃあ、いってらっしゃい!」
神様の言葉と共に俺の身体は光に包まれた。