1死亡
三作目の小説です。
「まったく、雪が降るなんて聞いてないぞ……」
真冬の空から雪が降る中、俺――神埼レイジは交差点の赤信号待ちしながら呟いた。
制服の上にコートーを着込んでいるのに寒い。吐く息が白くなる。スマホで気温を調べてみるとマイナス3℃だった。どうりで寒い訳だ……。
「こんな寒い日はこたつで漫画を読むに限るな」
俺は学校の帰り道にある本屋で購入した漫画に視線を移す。
それはファンタジー漫画の数々だった。
俺はファンタジー系の漫画やアニメ、小説が大好きな真性のオタクだ。
家の本棚や机には大量のファンタジー漫画やライトノベル、様々な種類のゲーム機、入りきらない分は部屋の片隅にタワーを築いている。
有り得ないと分かっているが、何度も剣や魔法で無双し、エルフや獣人などの美少女で構成されたハーレム、魔王の手から姫を救うなどを夢想する。
それほど俺はファンタジー世界が好きだ。
「あーあ、俺も漫画みたいに異世界で主人公になりたいな」
馬鹿なことを言う俺。
だけど、オタクの人たちなら誰でも1度は呟いたことぐらいはあるよね?
「お、信号が変わったな」
青信号に変わったので自転車を漕ぎ始める。
そんな時――
「おい! 危ないぞ!!」
突然声を掛けられた。
「え?」
俺は反射的にそちらへと視線を移す。
そこには大型トラックが俺に向かって減速もせずに猛スピードで走っている。
「まさか、居眠り運転!?」
気付いた時には既に避けようのない距離だった。
バキィッ!
衝突の瞬間、俺の身体から嫌な音がした。
痛みは一瞬。
その後の感覚はなかった。
俺の身体はあっさり宙を浮いた。
飛散する血。
自転車カゴの漫画。
ああ、まだ読みかけの漫画が有ったのにな……。
そう思いながら、俺の人生は幕を閉じることになった。