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ディファレント・ワールド・ウォーズ  作者: 彩都
第一章 目覚めた先
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第一章 目覚めた先 6

「申し訳ありません! 負けてしまいました!」

 頭を下げてアルムさんが言う。自分は頬を掻きながら国王に言う。

「え、えーと、勝っちゃいました? だから武器と防具を下さい!」

「確かに……儂が見る限り、貴様の勝利だな。それでは武器と防具をやろう!」

 国王の発言に自分はとても喜んだ。よし! これで何とか他の異世界転移者と渡り合える! と思った。だが、次の発言で自分は凍りついた。

「ただし『今着ている奴』な」

「……はぁ?」

「武器もそれで良いじゃろ?」

「いやいやいやいや! ダメですよ! 俺もアルムさんみたいに鉄装備、固い剣が欲しいですよ! こんな木だが竹刀だか分からない剣を貰っても、使い道が思いつきません! ていうか防具も心許無い!」

 自分国王の発言に反論すると、国王は自分を睨んで言う。

「あぁ? 黙ってろ。お前は異世界から来た存在、元々此処の世界の住人じゃないのに武器と防具を渡しただけまだマシだと思え。普通は誰にも武器や防具を渡さないんだぞ? お前等異世界転移者は優遇されているだけなのだ。そこ迄の優遇はせん」

「えぇ……」

 自分はそう呟いて、国王の発言を反論しようとする。だがそこで自分は考える。『此処で反論しても何も起きない』のでは? と。自分はそう考えて、発言を止める事にする。するとルドルフさんが自分の方に向かって走ってくる。

「おぅい! どうだったぁ!? いやぁ、今さっきトイレに行ってて……」

「俺の勝ちです、一応は」

「おぉ! それは良かったな! おめでとう!」

「……えぇ、有難う御座います」

 自分は俯きながら言う。何なんだよ、少しは良い武器、良い防具をくれたって良いじゃないか……! 自分はそう思いながらルドルフさんと共に闘技場を出る──


「いやぁ、今日は良い一日だったなぁ。何故なら城の一室で一泊させてもらえるんだから」

「え、えぇ……」

 自分は城の一室で泊まる事となった、ルドルフさんと共に。ベッドは二つあるので、別々に寝れる。自分は武器と防具を机の上に置き、部屋にある冷蔵庫を開いて、中に入っている飲み物を手に取り、文字を読もうとする。だが、日本語でも英語でもない文字を見て、自分は困惑する。

「…………」

 そうだ、城の中、と言っても時間潰しの為とか、勉強の為だとかで図書室はあるかもしれない。自分はそう考えて、部屋の中のメモ帳を取り、部屋を出る。ルドルフさんには何も言わずに。

「ふむ、此処はこうなっている……とっ!」

 自分はメモ帳で自分の寝泊りする部屋を忘れない様にメモする、これで大丈夫だろう。後は図書室、だな……自分はそう考えて、近くに寄った白黒の格好のメイド──家政婦かもしれない──に声を掛けて、図書室に案内するよう、せがむ。

「すいません、ちょっと図書室に向かいたいのですが?」

「図書室ですか?」

「えぇ、案内してくれると嬉しいです」

「分かりました、では着いてきて下さい」

「はい、有難う御座います」

 よし、これでこの世界の文字を見る事が出来る、自分はそう考えて、メイドか家政婦か分からない人の後ろに着いて行く──ちゃんと周りを見ないとな。メモもしておかないと……

 自分は案内されて、扉の前で止まる。

「此処が図書館で御座います」

「有難う御座います。え、えーと名前は……」

「名前ですか? 名前は無いです。私達はメイド、名を持たぬメイドです」

「はぁ? えっと言っている意味が良く分からないんだけど……?」

 自分がそう言うとメイドが自分に言う。

「私は『奴隷』です、他の国の。国王様は『奴隷解放宣言』を行っておりまして、国と戦って、負けた国を領土にした際、負けた国の『奴隷を全て買い取って』、女性ならメイド、男性なら働かせたりしているんです。私はその奴隷の一人です」

「…………」

 何だ、いけ好かない国王だと思ったが、根は案外良い奴じゃないか。自分はそう思い、メイドに頭を下げる。

「何かすみません……奴隷とは露知らず」

「いえ! いいんですよ! 地獄の日々を送っていた私を助けてくれたのは国王様ですし!」

「何じゃ? 儂の武勇伝か?」

 急に国王の声がして、自分とメイドは素っ頓狂な声を出す。

「うわぁっ!?」

「きゃぁ! い、居たのなら申してください! 何だか恥ずかしいです!」

「アッハッハッ! 中々に面白い反応じゃなぁ! んで、転移者よ。『何で図書室の前に居る』のじゃ?」

「そんなの簡単です。此処の国……いえ、この世界の事が知りたいのです」

「成程。でもどうするんじゃ? まず他人に五十音を教えてもらう所から始めないといけない」

「そうですよねぇ、誰に教えてもらいましょうか?」

「えっ? 儂で良いじゃん。どうせ暇だし」

「そうですか、暇だから国王が俺にこの世界の文字を教える、と言う事ですか……いや、仕事しろ!」

 自分が声を荒げて言うと、国王は笑いながら返答する。

「何で? 今日の分はもう終了したし。朝十一時の時点で」

「すげぇ! 素早い行動だな! 流石国王! なのか!?」

 自分はそう言って頭を抱える。すると国王が自分の手首を掴んで言う。

「ほれ、さっさと図書室に入らんか? この世界の文字を知りたいのじゃろう? だったら早く行動しないと」

 国王は自分の手首を引っ張って図書室に入室する。自分はあまりの力に引っ張られてこけそうになる。でも、国王自ら文字を教えてもらう、というのは新しい経験かもしれない。自分はそう考えて、国王から文字を教えてもらう事にする──


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