第一章 目覚めた先 4
左肩を前に出している、と言う事は、左に避けたら、残っている右手で攻撃出来る。代わりに右に避けたら、背中には手が無いので攻撃が出来ない、と考えて、自分は右に避ける事にした。
そしてアルムさんの背後に周り、自分は茶色の剣でアルムさんの背後を取ろうとした、その時だった。『地面が急にへっこんで、自分はその場でこけてしまった』。
えっ? 何が起きた? と思い、自分は足元を確認する。すると其処には『隕石が落ちた跡』のような窪みがあった。
「えっ……? 何これ? 何が起きた?」
自分が意味不明のまま呟くと、『あぁ、ごめん』とアルムさんが言う。
「済まない、一つ伝え忘れていたな。異世界転移者は知っている、と思っていて……」
「伝え忘れ? 知っている? な、何の事ですか……?」
自分は不思議に思いながらその場を立ち上がる。そしてアルムさんが自分に言う。
「今さっきの窪み、何だと思う?」
「な、何だとって……たまたま俺が立った所の下に窪みがあって、俺が踏み外した、って訳じゃないんですか?」
「何馬鹿な事言ってんの? そんな不備、闘技場じゃ有り得ないよ」
「えっ? じゃあ……」
自分がそう言うと、『窪んだ地面が元の平らな場所に戻った』、自分はその出来事を見て、超常現象か何かかと思い、尻餅をついてしまう。
「うわぁっ!? な、何なんだ!? 急に元の姿に!?」
平らな場所に戻っても床自体は割れていた、一体何が起きた、というのか……? そう思っていると、アルムさんが説明する。
「『魔法』、異世界転移者の君だって聞いた事はあるだろう?」
「ま、『魔法』!? ば、馬鹿言うなよ!? そんなのがあって困るか!」
「『ある』んだよ、この世界には……今さっき地面がへっこんだ様に私でも簡単に操れる『魔法』から魔術師、魔法使いぐらいでないと覚えられない『魔法』とか、多種多様だ」
「…………」
アルムさんの話を聞いて、自分は驚愕する。『魔法』があるなんて聞いていないぞ!? もしかして自分以外の異世界転移者は皆『魔法』を知っているのか……? 自分はそう考えて、もう一度立ち上がって、アルムさんに茶色の剣を向ける。
「ま、『魔法』とかどうでもいい! 今はアルムさんに勝つ、それだけだ!」
「うん、その意気だ。君には『魔法』の事はあまり知らなくても良い。今は私と戦って勝敗をつける、それだけだもんね」
アルムさんはそう呟いて、自分に剣を向ける。自分は静かに息を飲み込んでアルムさんに突っ込む。剣で一振り、上から下に斬ろうと考える、だがアルムさんは簡単に剣の腹で自分の剣を滑らせ、自分は虚空を斬ってしまう。そしてアルムさんは剣の腹を両手に当てて、剣を落とさせる。
自分は両手に走る痺れに驚愕する。初めて剣に攻撃された……! 自分は痺れを我慢して、急いで地面に落ちた茶色の剣の柄を両手で掴む。ほっ、何とか助かっ……あっ。自分は頭に当たる冷たい感覚に冷や汗を垂らす。自分の頭に当たっているのはアルムさんの剣の切っ先、もしもこのまま顔を上げたら……『頭を傷付けて』しまう! 頭を傷付けてしまえば、何も出来ずに救護班が来て、負けてしまう──自分は万事休すか、と思いながらその場で溜息を吐く。と、此処で自分の置かれている状況に違和感があった。
『今、何を持っている』んだ……? よく考えろ、よく考えろ。『今手に持っているモノ』は……『茶色の剣』だ! 万事休す? いいや、チャンス! 自分はそう考えて息を吐きながら声を出す
「はぁぁぁ……!」
「……?」
自分は息を吐きながら声を出した後、茶色の剣の柄を強く握り直して、その場で突進をする。とてもとても低い姿勢からの突進にアルムさんは驚いていた。そして自分はアルムさんの足に向かって茶色の剣をぶつけようとする。だが、アルムさんは軽々と自分の攻撃を避け、茶色の剣を踏みつける。
「これで何も出来ないよ? 君の負けだ」
…………これで負け? それは厭だ、何の為に俺は異世界転移したんだよ……!? 巫山戯んなよ! そう簡単に俺は諦めない! 自分はそう思いながら右手で床を思いっきり叩きつける。するとその時だった。『右手の甲が紅く光った』、次に右手の甲が熱く感じる。なっ、何なんだ!? 急に右手が……! 自分は不思議に思いながら手甲を外す。右手の甲には『丸い円が描かれており、円は綺麗な線で二つに分かれていた』、何だこれ? まるで『晴』の天気記号みたいだなぁ。自分はそう思いながら右手を見つめる。
一体何なんだろう? 何で急に左手が熱くなったのだろう? 自分はそう思いながら、手甲を手に嵌め直し、立ち上がってアルムさんを見つめる。
「まだ……まだ諦めません。俺は諦めが悪いんでね?」
「ほう? それは嬉しいなぁ。だったら早く私に勝たないかねぇ? もしくは勝てるのか?」
「勝てるに決まっていますよ、何故なら俺だから!」
アルムさんに謎の自信を見せた自分はその場で深い深い深呼吸をする、謎の右手の光、痣のようなものに対し、不思議に思いながらアルムさんを見る。勝ってやる。自分はそう思いながら、アルムさんから間を取る──