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ディファレント・ワールド・ウォーズ  作者: 彩都
第一章 目覚めた先
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第一章 目覚めた先 3

「…………」

 自分は闘技場の自身の控え室で溜息を吐いていた。たかが一撃、たかが一撃をぶつけたら良いんだ。そうは思うが相手は騎士団長とやらだ、そもそもとして一介の学生が騎士団長とやらに一撃を与える事が出来るだろうか? 否、そう考えていては進めるものも進めないだろう。自分は考える事を止め、自分の椅子の隣に置かれている革の防具と茶色の剣──木刀か? もしくは竹刀か? それは良く分からないが──を見つめる。騎士団長は鉄の装備、自分は皮の装備一式だ。

 ……可笑しくない!? いやいやいやいや! 普通は自分も鉄装備の筈! だけど何故に革装備!? 凄く不安しかない! 騎士団長のレベルがどうかは分からないが、明らかに自分は一撃でも当てられたら、相当な深手を負うだろう。……ダメじゃん、勝てる可能性が一気に減ってしまった。そもそも無理な話だったのだ、相手は騎士団長、騎士団長に勝つなんて……! 自分はその場で息を漏らして、顔を上に向き、空虚を見つめる。

「もうダメだ、負ける未来しかない……」

 自分はそう呟いて、右のポケットに手を突っ込む。すると手に自分が目覚めた時に持っていた紙が入っていた。確か『コンパス』とか何とか書いていた気がする。逆に言ってしまえば、『コンパス』ってどんな能力なんだよ? 今迄にそんな能力を聞いた事が無いのだが? 自分は『コンパス』という能力について、浅はかな脳味噌で考える事にした。

『コンパス』、それは円を描く道具である。他の意味は『羅針盤』、『磁針』である。いや、それを考えた所で、何も思い付かないし、何も分からない。結局『コンパス』とは何か? その答えはこの異世界を脱出する迄に考えよう。自分はそう考えて、仕方なく立ち上がって、革の防具と茶色の剣を装備する──


 自分が闘技場の試合会場迄の道を歩く。すると目の前にルドルフさんが手を振っているのを確認する。そしてルドルフさんが自分に向かって走ってくる。

「おぅい!」

「はい? 何です?」

「はぁはぁ……よかった、まだ戦いに出てなくて!」

「は、はぁ? な、何を言って……」

「何をって……? そんなの簡単だ、『アルム・カルトランスの勝利方法』だよ!」

 ルドルフさんの発言を受けて、自分は耳を疑った。まさかそんな方法が……! だけど、よく考えて欲しい。『自分は相手の情報を知って、相手は自分の情報を知らない』のだ、これって何か不公平に感じないか? 自分はそう考えて、首を横に振る。

「すみません、それは聞きたくないです。俺は真剣勝負でやりたいんです。だから相手の事前情報を聞きたくない、というか、何というか……」

 自分がそう言うと、ルドルフさんは笑って自分に言い返す。

「やっぱり? そう言うと思ったよ。一目見た時から君には『誠実』というのを感じたんだ。他に言えば『真面目』かな? 何とも真っ直ぐな目をしている。もしも私の言葉に乗っていたなら、嘘を言っている所だったよ」

「そうですか……」

 ルドルフさんの発言に相槌を打った瞬間だった。銅鑼の音が耳を劈く。自分はあまりにも大きい音にその場で両手を使い、耳を押さえて、尻餅をついてしまう。

「おおっ! こんな与太話をしていたらもう試合開始数分前の銅鑼が鳴ったな。さぁ、行って来い少年よ!」

「……えぇ! 何とか粘ってみますよ、自分が出来る限りね」

 自分はルドルフさんに手を貸してもらい、立ち上がる。そしてその場で深い深い深呼吸をして、闘技場の会場を見つめる。闘技場の会場には二つの人集ひとだかりしかない。その人集りは国王と国王を護る存在達の人集り。そして他は騎士団長の勇姿を見るべく集まった騎士団の面々。

 あぁ、遂に始まった、いや、遂に『始まってしまった』、と言ってしまった方が良いのか。自分と騎士団長との戦いが──自分はそう思って、静かに重い足取りを悟られない様に進む──


「やぁ、異世界転移者よ。逃げずに現れて、私は嬉しい」

「……逃げませんよ。防具と武器を手に入れないと……自分は生き残れない、この世界から」

「ハハハッ! 確かにねぇ。でも、私は騎士団長、一般人や他の存在よりも強いぞ?」

 そう言うアルム・カルトランスに対し、自分は静かに言う。

「果たしてそれはどうでしょう? この世界にこの言葉があるか分かりませんが、俺の世界には『下克上』ってのがありましてね? 『弱い者が強い者に打ち勝つ』ってぇ、意味ですが。」

「『下克上』、この世界にもあるよ」

「そうですか」

 アルム・カルトランスの返答を受け、自分は静かに答える。そしてアルム・カルトランスが続けて言う。

「私の名前はアルム・カルトランス、アルムでいい」

「はい。分かりました、これからはアルムさんと呼ばせてもらいますね?」

 自分はアルム・カルトランスの発言を受け、『分かりました』と返答する。

「……はぁ」

 自分は息を吐いて、右手に持つ茶色の剣の柄を握る力を強め、アルムさんを見つめる。アルムさんもまた、自分の事を睨む。

「さぁ、君の力を私に見せ付けてくれ! 私も本気で君を倒す!」

「……えぇ!」

 自分はアルムさんの発言を受け、身構える。するとアルムさんは自分に突進を仕掛けてきた。左肩を前に出しての突進。自分は一気に息を吸って、どう動くかを考える──

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