第三章「試練1-3」
アフロ月です。
灰色図書館は序章を加えて、13部完結の作品にしようと思っています。
力量が問われそうだなぁ。
第三章「試練1-3」
おばあさんの家から、歩いて30分。赤ずきんの推測通りの時間に、城に辿り着いた。
「立派な城ですね……。」
少年はネオラに呟いてみた。当のネオラも口を開けて感嘆しているようだった。
少年もネオラと同じような状態になりそうだったが、目的を忘れないように気を引き締めた。
天の使いとやらが、本の試練だと言って赤ずきんの物語に閉じ込めるなんて……。
しかも、ネオラの知り合いであろうシュランツという……恐らく妖精がいるはずなのだが……。
「あっ、あちらで受付をしているようですよ。」
二人に、赤ずきんが言う。
その方向には、少しばかりの人だかりと列が出来ていた。
三人は顔を見合わせてその列へと歩いていった。
「最後尾はこちらです。」
まるで中世の貴族のような格好をした男が、少年らにそう言う。
少年が先頭は受付なのかを聞くと、そうだと答えた。
そうして。
並ぶことを決めた三人は受付まで10分間待つことになった……。
・・・・・・・・・
大広間へと通された三人は、そこで衝撃的な光景を目にした。
巨大な机。豪勢な料理。
そして……。
「クヒャヒャヒャ。」
「ギャハハハハ。」
黒い何か。どう表現すればいいのか分からない。
人の形は保っているように見えるが……黒い。
口は赤い。瞳も赤い。
見たことないその何かに、少年達は不思議と恐怖を感じなかった。
「……シュランツの魔法だねぇ……。」
ネオラが言った。
ということは……この何かは魔法で動いているのか?
「ネオラさん……これ、ヤバくないですか?」
「え?」
「僕達のまわり……黒い何かしかいませんよ。僕たちの前に並んでいた人達はどこに行ったんでしょう?」
「恐らく、少年が思っているようなことは起きていないよ。あの黒い何かは魔法によって生み出されているから、他の人は別の部屋にいるんじゃないかな?」
「ということは……僕達は特別に招待されたってことでいいんですかね。」
「いいと思うよ。……ほら来た。」
黒い霧が立ち込めて、暗闇が覆いつくす。
慌てる赤ずきんを他所に、少年とネオラは目つきを鋭くした。
やがて霧の中から声が聞こえてくる。
「ひさしぶり……御姉様。」
声だ。
女の声が聞こえた。
それに呼応するように、ネオラは叫ぶ。
「シュランツ!まわりくどい方法を取らないで、さっさと出てきなさいよ!!」
「御姉様は慌てんぼさんだなぁ……!…………いいよ。ちょっと待ってね。」
そう聞こえると、霧が徐々に晴れてきた。
目の前には、先程いなかったはずの女の子が姿を現した。
「また……黒いな。」
背格好は少年と同じくらいの大きさ。
髪は黒髪で、肩までの長さ。
服はゴシック……だろうか。
どれも黒を基調とした服なのは確かだが。
しかし……一つだけ異様なものがあった。
「黒い翼……。」
少年が呟く。
そう。彼女には黒い翼があった。烏のようなその翼は、時折羽ばたいてバランスをとっているようにも見える。
「シュランツ……あなた、何がしたいの?」
「ひさしぶりなのに挨拶も無し……?」
ネオラが聞くも、軽くあしらわれる。
睨み付けるネオラに観念して、シュランツは一つ溜め息を吐いた。
「はぁ……御姉様は気が短いからね。天の使いに頼まれたの。」
「何を?」
…………「何を」。それを聞いたのはネオラだが、少年にも興味があった。
天の使いは、自分が何者かを知っているのかもしれないから。
「そこの少年のもとに戻れって。」
「…………え。僕?」
間抜けな声が出てしまった。
大層な理由があると思っていたが……意味が分からずに聞き返してしまった。
「ちょっと待って。僕のもとに戻れって……?」
「……?御姉様、もしかして何も話してないの?」
「っ……………………どういうこと……?」
ネオラにしては珍しく、言葉を詰まらせた。
シュランツは何を知っているというのだ。
「私達は。記憶。」
「……記憶?まさか……僕の記憶?」
「ご名答よ。私達5人の妖精は、少年の記憶が具現化された存在。そしてそれぞれ司るものが違う。」
「そんな一気に言われても……!!具現化?司るって……?」
「それはね。」
「……困ったねぇ。」
………………ネオラ。
今、会話を遮ったのはネオラだ。しかもその内容が、困った、だって?
「……ネオラさん?」
「ごめんね……少年。」
何故、謝る?
こんにちは。そしてはじめまして。
アフロ月です。
灰色図書館を読んでいただき大変恐縮です。
いかがでしたか?
稚拙な文章で理解しがたいところがあれば、私の勉強不足です。申し訳ありません。
城へと入った少年達ですが、シュランツからとんでもないことを聞かされました。
このことを、ネオラは知っていたのでしょうか?
今後もお楽しみに。
最後に、後書きまで読んでくださった読者の皆様に感謝を込めまして……またお会いしましょう。
Thank You。