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第一話(6)
『⁈』
一瞬、頭が理解出来なかった。
が、直ぐに、
『何をしてるの⁉』
下村は、大声で叫ぶ。
病室の真ん中で、重症の少年の首を片手で持ち上げて居る…
田中 健太に。
『だず』
『うるさい。 俺は何度も助けてって言った。 なのに、お前達はずっとずっとずっとずっと……
俺を苛めてきた‼ だから、俺にはお前等を壊す権利がある‼‼』
田中は、目の前の少年に怒鳴り付けた。
そのまま、首をつかんでいる手に力を込める。
『…カッ!』
今にも首の骨が折れそうだ。
片手で、しかも持ち上げた状態でその様な事を行うには、相当な腕力が必要だ。
しかし、目の前の田中は見た目は線の細い少年。
そんな芸当が出来る体格には見えなかった。
『やめろ。 それ以上したら殺す』
唐突に響く静かな声。
『日野君…』
いつの間にか、日野 彼方は立っていた。
鋭い眼光を更に厳しく。
真っ直ぐと、田中 健太を睨みつける。
『完全に暴走してる。 下がってください』
彼方は呟くと、腰に手を回し、
キンッ…
銀色に響く小振りなナイフを引き抜いた。