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第一話(5)
『ヒッ…!』
下村の眼に飛び込んだの、
病室全体を濡らす血。
びっしりと、血溜りが出来る程の量。
『…でも……』
手持ちの懐中電灯で室内を照らすが、
『誰も居ない…』
中に、人一人姿は無かった。
ガシャァァァン‼
またも、響く音。
次の音は、ガラスが割れる様な音だった。
下村は、慌てて廊下に飛び出すと、そこには、
『先生! みんな‼』
そこには、医師と同僚の看護婦が倒れていた。
急いで駆け寄ると、意識は無いが命に関わる怪我はして居ない。
『…だすげ』
『!』
か細く、苦しそうな呟き。
目の前の病室から聞こえた。 今更だが、扉はひしゃげていて、医師達もその部屋から吹き飛ばされたのだと下村も理解した。
中は、真っ暗で見えない。
その部屋は、田中 健太と共に運ばれた少年四人が居る部屋だ。
廊下から懐中電灯を向けた。