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カナルデの書  作者: 箱庭
37/56

『ヌーロの遺跡』─9

Part 5

「やはり駄目か……」


 闇間に紛れた金色の瞳が輝きを増す。

 人の気配が途絶えた荒れ地に、ぽっかりと開いた外界と内を繋ぐ穴の前に佇んでいた。


 遺跡の穴から幾度か中へ体を潜り込ませるが、何故か入り口の方へ戻されていた。

 その先には螺旋の階段のあった広間に通じているはずなのに。何かに遮られ、通してくれない。


 何度試しても同じ結果であった。

 それならばと、正面に構える入り口から中に入ろうと試みたが毎回違う通り道の末に、やはり戻されていた。


 遺跡に触れる指先からは次第に魔力が溢れ出し始める。

 この遺跡に纏う正体が何かは知らないが、その魔力ごと凍らせてしまおうかと。


 力込めるその掌に、滴が落ちる。

 見上げた空には雨雲が忍び寄っていた。まばらだった粒も次第に大降りになり始める。


 気の削がれたトゥベルは、溜め息を一つ残し、窪みのある入り口に身を寄せる事にした。

 長身のトゥベルでも雨をしのぐ程度の隙間は十分にあるために。


 地面にいくつかの水溜まりが出来た頃。雨音に混じって、木陰から足音が聞こえた。

 その方へ向ける視線。人間と変わらない丸みをおびた瞳から注がれる。


「王女の連れとは、やはり貴方でしたか」


 そう囁くその顔に、見覚えがあった。トゥベルの居る遺跡の方へと足を進めてくる。

 強い雨に打たれたはずが、身に纏う鎧やマントのためか、出ている髪と顔や手肌を軽く拭う仕草をする程度ある。


「貴様だけ……、らしいな。確か、トアルという名前だったな」


 窪みに佇む2人以外に他の気配も無く、一瞥すると鼻を鳴らした。

 トアルはそれから怪訝そうにして語られる自らの助かった理由と、王女との経緯に終始、耳を傾けていた。


「この遺跡、何かあるらしいな。廃墟同然のこの地に、今でも魔力が絶えておらん」


 トゥベルが再び視線を戻した遺跡。手でなぞりながら、興味深気に呟いた。


「王女には会って行かないのか?」


 やがて背を向けたトアルに投げ掛けた言葉。

 だが、その後ろ姿からはただ王女を頼むとの返事が聞えたまま、再び村のある方へ姿が消えた。


 外の雨音は次第に遠のき、トアルの姿が見えなくなる頃には、雨雲も去り、澄んだ空が広がっていた。


「……私とあの者が似ている? どこも似ておらんではないか……」


 不意に漏れた言葉。

 背は同じくらいあり、髪もお互い腰元まで。人目には美しい優男だ。

 一見、女性にも見える容姿に幾度間違えられた経験がある事やら。


 2人に共通する部分は少なからずあるようだ。

更新予定を過ぎてしまいまして、申し訳ありませんでした。(^-^;)


 相変わらずローペースですが、「ヌーロの遺跡」は後残り5話分前後を予定しています。


 小説情報欄を新しく更新しています。ここまでお読み頂きまして、ありがとうございました。

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