表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
カナルデの書  作者: 箱庭
36/56

『ヌーロの遺跡』─8

Part 5

荒波に削られた崖の上、青い海原に囲まれた島では、よく強い潮風が吹き抜ける。

 その度に樹木が揺れ、葉や実が重なり、音を鳴らしていた。


 不意に外のざわめく風に混じり、鈍い音が響き渡った。

 視線を向けると、誰かが扉越しに外の様子を窺っている。


 金色の十字架を胸元に身に付け、手足を隠す程の長く白い衣を身に纏う司教の姿。

 鎧姿に剣まで携えた重々しい身なりのトアルを確認すると、優しく微笑んだ。


「この御方がタリゲス島の教会を担う、司教様のマクロフィ様です」


 マクロフィの前に現れたシャトン。

 その背後では、肩に触れる長さの黒髪から、紅い瞳が覗いていた。


 穏やかに微笑むその姿は、教会に務める者には珍しい体格の良さと、シャトンの背を優に超える長身である。

 若い内はイブフルー神殿や、各地の教会に居る司教や神官将の元で務めを担う。


 当人が司教になるまでは、歳を重ねている事が大半である。

 だがトアルの目に映ったマクロフィは、まだ30前後のように若く見受けられた。


「私はここで司教を務めております、ブルンネラ・マクロフィと申します」


「私はトアル・ブラッキュイン。旅のついでに、各地の教会を訪れています」


「そうですか。辺境の地とはいえ、歓迎しますよ」


「助かります。こちらの地は、信仰の厚い方が多いようですね」


 トアルの言葉に、再び扉の方へと近付いていたマクロフィは歩みを止める。

 背中越しから中に入るようにとだけ声を掛けると、姿が消えた。


 その直ぐ後を追うシャトン。

 促されるまま、トアルも足を踏み入れる。


 外界の光を失った空間は昼でも薄暗く、ほのかな灯りが闇間に揺らいでいた。






「悪いわね。起こしちゃったかい?」


「……いえ。ここは?」


 普段の威勢の良い声を押し殺し、そっと部屋の寝所に近付く店主。

 入る時に扉の軋む音が響き、トアルが寝所から身を起こしたのだ。


 まだ自分に何があったのかわからない様子で、身を包む薄手の衣服越しから包帯が巻かれている部分を辿っている。

 そして、側で寝ている王女に店主と同じく気遣い、普段の声を細めて話始めた。


「昨日、ティリシアちゃんと、お連れの人がトアルさんを担いで船着き場に居たんだよ。凄い有り様だし、最後の船だったから行き場がないだろうと、私の家に招いたんだよ」


「……王、いえ、彼女の連れ、ですか?」


「そうよ。トアルさんと同じ背格好の美人さん。でもよく見れば、髪色や雰囲気が怖いというか、そっけないというか。そういえば運び込んだ後、暫くして外に出たきりね」


 怪我といっても、店主が診た時はトゥベルの回復で殆んど酷い状態もなく、原形をとどめていない衣服の割りには、外傷の軽さに不思議と感じていた。

 起きたトアルからは、現状を心配する様子は窺えるが、痛みを訴える様子もない。


 安心し、側で安らぐ王女の寝顔を覗き込んだ。


「よく寝ているみたいだね。旅人さんみたいだから、朝一番の船でもと思ったんだけど……」


「ご迷惑をお掛けして申し訳ない。彼女が起きるまで、もう暫くこのままにしてもらえないだろうか? その船には私が……」


「何言ってるんだい? トアルさんこそ、もう少し体を休めて行きなよ。知り合いなら、ティリシアちゃんと一緒に乗船しても構わないだろう?」


 トアルは王女に気付かれないように寝所を抜け出すと、店主と共に部屋を出て行く。

 お世話になったお礼や先を急ぐ事を伝えると、身支度を早々に整えて店主の家を後にした。


 その後ろ姿を追い掛けた店主だが、遺跡の方へ再び消え行く背中だけが視界に映り込んだ。


「トアルさん! ト……」


 また危険地帯に行こうとするトアルに、店主の慌てた呼び声が虚しく響き渡った。

 朝一番の船出まで、まだ少しの時間がある事を聞いたトアルは、連れが向かったという遺跡へと急いだ。


 店主がそれ以後、トアルの姿を見る事はなかったという。

 王女1人だけが取り残された寝所。


 トアルが居た温もりを残したまま、夜明けの光が次第に部屋を包み込んでいく。

ご無沙汰しています。相変わらず更新が不定期で申し訳ありません;。


 色々とサイト様の機能が改善や追加され、赤字警告も初めて頂きまして驚きました。(苦笑;)


 確か、昔は90日前後まで未更新に問題なかったと思いますが、現在63日設定になりましたね;。


 なるべく今後は、それまでに更新出来れば良いなと思います。


 月日は置きましても、『カナルデの書』は未完結で終わる事はありません。


 次話は年末にもう一度更新か、2009年1月頃に更新予定です。


 ここまでのお付き合いを頂きまして、誠にありがとうございました。

ヽ(^-^)



−−−−

※他に、この小説サイト様で下記機能もあれば幸いです。


●「あらすじ」も改行出来るようにして欲しいです。現在なく、読みにくいです;。


●「小説コピー機能」、せめて登録機種のIPなどで自作品のみの扱いにして欲しいです。


●小説更新時、「章」設定など。現在は全て更新表示ですが、各章に何話分まとめて見れる表示とか。任意設定など。


例、

(一章)

1部/2部/3部/4部/5部……

(二章)

1部/2部/3部/4部/5部……



()部分だけ目次表示で、更にクリックしたら細かく見れるというものです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ