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鷹の妻  作者: Rin
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第八話 小谷城と湯けむり

第八話 小谷城と湯けむり

 病もだいぶ落ち着いてきた頃、季節も移り変わり、春の日差しが差し込むようになった。

 柔らかな暖かさのもと、すずは長政に小谷城を案内してもらっている。

「すまないなぁ。本当はすずが嫁いできてすぐに案内すればよかったのだが、冬だったし俺も忙しかったりでなかなか時間が取れなくて」

「いえ。今日こうして案内していただけるだけで嬉しいです!」

 そうか、と長政は笑う。

 この人は本当に爽やかで気持ちのいい人だ、とすずは思う。

「屋敷と天守閣はもう二月も過ごしたから慣れたか?ではまず具体的な構造から話そうか」


 小谷城は標高四九五メートルの堅固な山の頂上にある山城だ。

 麓や城周辺には姉川(あねがわ)や、小高い山々がある。

 この城は長政の祖父・浅井亮政(あざいすけまさ)が一五ニ五年頃に建てたとされる。

 小谷山は山の尾根に連なるようにたくさんの『曲輪(くるわ)』が山の裾に点在している。

 曲輪(くるわ)とは、城を守るために作られた防護施設のこと。

 これがあるため敵は正面の細い道から攻めることになる。

 その難攻不落さと城の巨大さなどから現代では『日本五大山城(にほんごだいやまじろ)』に選定されたり『滋賀県屈指の最強の山城』とも称されたりしている。

 

 ◆


 すずと長政は山の中腹の望笙峠(ぼうしょうとうげ)にやってきた。

  「西の遠くに見えるのが琵琶湖(びわこ)日本(ひのもと)一の湖だ。畿内の水源は主にここなんだぞ」

 うっすらと輝く水面。そこに浮かぶ島々。

「……綺麗」

 すずは城下町の様子と自然が生み出した雄大な美に感動してため息をつく。

 

 ちなみに琵琶湖付近は当たり前だが水運がいい。

 また古くから東日本・北日本と西日本の玄関口つまり交通の要所で、京にも近かったことから戦国時代〜江戸時代にかけて最先端技術を誇る城がたくさん築かれた。

 小谷城もそのひとつである。

 他に琵琶湖付近の有名な城は国宝十二天守のうちのひとつ、彦根城(ひこねじょう)や、織田信長最後の拠点、安土城(あづちじょう)、現代でも城下町が人気の長浜城(ながはまじょう)などがある。

 いずれもまだ存在はしないのだが。


 ◆


「すずを今日連れ出したのはここに連れてきたかったからでもあるんだ」

「お……温泉…!」

 初めての温泉に、すずもワクワクする。

 ――待てよ、温泉に入るってことは…殿に裸体を見せるということ。

 まだ私、他人に裸体見せたことないのに!と焦る。

 長政とは風呂も一緒には入らないし、行為ですらまだである。

 いずれは見せることになるのであろうがまだ抵抗が強い。

「あ、いきなり裸になるのは抵抗が強いと思うので湯帷子(ゆかたびら)(浴衣の原型)持ってきました」

 そういうと長政は懐からすずの湯帷子を取り出す。

「あぁぁぁぁありがとうございますぅぅぅ!!」

 すずは長政に感謝し、湯帷子を受け取った。


 ◆


 すずは湯帷子に着替え、長政はふんどし姿で湯に入る。

 湯加減は少し熱いくらいで気持ちが良いのだが、すずには一点気になる点があった。

「お湯の色が真っ赤…!これ入って大丈夫なやつですか?」

「ああ。大丈夫だ。この湯には鉄分が含まれていてな…空気に触れると赤くなるんだ。だから湧き出たばかりの湯は透明であろう?」

 ……本当だ、とすずは確かめる。

「それにこの湯は怪我の治療にはもってこいなんだ。俺も戦の後とか、家臣を連れてよく来る」


 実際にこの温泉は実在する。

 須賀谷温泉(すがたにおんせん)と呼ばれていて、褐色の湯が沸く。

 この湯は、神経痛、筋肉痛、肩凝り、冷え性、胃腸病、アトピー、病後の回復、疲労回復に効くという。


「すず、湯船は初めてか?」

 戦国時代において風呂といえば蒸し風呂、いわゆるサウナである。

 湯船の風呂も存在はしていたのだが、一説によると平安時代末期に源為朝(源頼朝の父)が風呂で暗殺されてからは、湯船は不吉という風潮が広まったらしい。

 お風呂=湯船の印象は割と最近になってからなのである。

「はい。温泉も初めてです。すごく気持ちが良くて癒されます。それと……」

 長政の方をチラリと見る。

「殿の筋肉…見るの初めてで…。筋肉隆々なんですね」

 夫の筋肉を初めて見たすずは、その逞しさに惹かれて釘付けになる。

「ああ。まあ鍛えているしな。すずくらいだったら片手でも抱けるわ!ほら!」

 そういうと長政はすずを片手でお姫様抱っこする。

「うわあぁぁぁぁ落ちる…!落ちるぅぅ!!」

「大丈夫だ。俺にしっかり捕まっとけ!万が一落ちても湯の中だしな!」

「底は石です!水深浅いし!!落ちても痛いですよ!」



 日が暮れてきた。

 二人は湯船に浸かり、静かに沈んでいく夕陽を見つめる。

「そろそろ戻らねばな。市に叱られるし、冷え込んでくるだろう?」

 そう言って長政は立ちあがろうとした。

 しかしすぐにすずに手を握られた。

「あと…もう少しだけ、もう少しだけここに居れませんか?」

 積極的すぎて恥ずかしくなる。

 侍女たちにこんな姿を見られてしまったら、もっと貞淑に、と言われることだろう。

 長政はすずのその姿勢に少し驚いた顔をしたが、もう一度湯に浸かる。

「……あと四半刻(30分)だけだぞ」

 すずの耳元で囁く。

 すずは長政にときめいて恥ずかしくなり、顔を真っ赤にして下を向くのだった。


 この後二人揃って市に叱られたのは言うまでもない。

小谷城は現在天守(正確には本丸等建物)は残っていませんが、当時の石垣や石段は残っています。

望笙峠からは実際に琵琶湖や姉川、城下町などが見えるんだとか!

麓には資料館がありますのでそちらも見学することをお勧めします。

また今回登場した須賀谷温泉もぜひ行ってみてくださいね。

情報によるとワンちゃんがお出迎えしてくださるようです♪

ただかなりの登山ルートなのと、熊出没注意の看板もあるくらいですので、今のご時世お気をつけを。

そんな作者、実はまだ小谷城跡に行ったことはありません。

いつかは絶対に行きたいです。

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