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……熱い。

背に走る焼けつくような痛みで、意識がゆっくりと浮かび上がってくる。

瞼を開けると、岩壁の影に囲まれた狭い空間。灯り代わりのランプがひとつ、弱々しく明滅していた。


 「目ぇ覚ましたか。」


低く荒んだ声。

顔を向けると、短く切り揃えられた髪と鋭い瞳を持つ獣人の少年がいた。

肩にかけた毛皮はぼろぼろだが、その体躯には強靭な筋肉が浮かんでいる。


「お前、馬鹿か?」

少年――クリフは呆れたように言い放った。

「人間の皇女様だって聞いたが、何であんな真似をした。」


エレオノーラは血の滲む唇を噛み、声を絞り出す。

「見過ごせなかった……。弱き者を……守るのは当然だ。」


「当然?」

クリフは鼻で笑った。

「その“当然”で、ここじゃすぐ死ぬんだよ。」


ランプの光に照らされる彼の瞳は、怒りと諦めに濁っていた。

「帝国の兵に家族を殺された俺に言わせりゃ……お前みたいな奴が一番腹立つ。」


「ならば、黙って見過ごせというのか。弱き者が虐げられるのを。」


クリフは肩をすくめる。

「見過ごすしかない場所だ。ここは鉱山、力なき者は生き延びられない。あんたが背中を晒したところで、明日にはまた誰かが鞭を受けるだけだ。」


冷徹な理屈。それでもエレオノーラは引かなかった。

「それでも――私は屈しない。泣き叫ぶことも、命乞いすることも決してしない。皇女であろうと、奴隷であろうと……私は私だ」


一瞬、クリフの瞳がわずかに揺れた。

呆れとも、嘲りともつかぬその視線に、しかし興味の色が混じる。


「……あんた馬鹿だね。」

そう言いながらも、クリフは手元の布を投げてよこした。

「血が滲んでるよ。これでも羽織ってて。寒さで死なれたら、面倒だから。」


エレオノーラは布を受け取り、唇を固く結んだ。

――帝国を取り戻すまで…私は絶対に屈しない。

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