6.JA(農協)悪玉論について【農協とは何か】
色々なところで色々な方がそれぞれの立場から槍玉に挙げている印象があるJA(農協)ですが、JAに対する言論に賛同できる部分もありますが、中には誤解があると思う部分もありますので言及したいと思います。
(1)協同組合について
一部例外を除いてJA・農協(農業協同組合・農業協同組合連合会)は「協同組合」という組織で、株式会社などの会社組織とは構造的に異なる部分があります。
先ずは、協同組合の構造と目的についてです。
農協に似た名称の組織に漁協(漁業協同組合・漁業協同組合連合会)や生協(生活協同組合・生活協同組合連合会)があります。
共通しているのは「協同組合」という文言です。
この協同組合というのは
『共通する目的のために』
『個人や法人や組織が出資者(組合員)になって』
『共同で所有する事業体を設立して』
『共通する目的のために共同で運営する』
組織のことです。
国際協同組合同盟(ICA:International Co-operative Alliance)の活動指針として採択した協同組合原則における協同組合の定義に次のようなものがあります。
『協同組合は、人びとの自治的な組織であり、自発的に手を結んだ人びとが、共同で所有し民主的に管理する事業体を通じて、共通の経済的、社会的、文化的なニーズと願いをかなえることを目的とする』
農協は「農業協同組合法」を根拠法とする、主に農業者(農家さんや農業法人など)が組合員になり、農業生産力の増進や農業者の経済的社会的地位の向上を主な共通する目的にとする協同組合です。
漁協は「水産業協同組合法」を根拠法とする、主に水産業者(漁師さんや水産加工業者など)が組合員になり、水産業の生産力の増進や水産業者の経済的社会的地位の向上を主な共通する目的にとする協同組合です。
生協は「消費生活協同組合法」を根拠法とする、主に個人(消費者)が組合員になり、生活の安定と生活文化の向上を主な共通する目的にとする協同組合です。
これら比較的著名と思われる協同組合以外にも数多の種類の協同組合が存在します。
現在の協同組合につながる最初の協同組合と言われているのが19世紀半ばの1844年に英国のロッチデールという町で織物職人28人によって設立された「ロッチデール公正先駆者組合(表記ゆれが数種類あります)」です。
ロッチデール公正先駆者組合は、産業革命以降の英国では力が強まった大資本が労働者を搾取する社会構造になり、この構造を変革すべく労働者が出資した組合を設立して日常必需品の共同購入を行うなどの生活防衛を行ったものでした。
ロッチデール公正先駆者組合では組合員(出資者)が組織運営の討議を重ねてよりよい定款に改正していき、その根本となった実践を伴った思想は、後に「ロッチデール原則」と呼ばれるようになりました。
ロッチデール原則は後の協同組合の運営の手本とも言われ、1937年に国際協同組合同盟(ICA)はロッチデール原則をもとに「国際協同組合運動の原則(協同組合原則)」を採択しました。
その後、社会情勢や経済活動の変化による変更がなされていきましたが、ロッチデール原則が大本になるのは変わりません。
1995年に国際協同組合同盟(ICA)の100周年記念大会で採択された協同組合原則は以下の7つの原則で、『これは、どんな社会・経済制度のもとでも、すべての協同組合が守っていくとされる普遍的な原則である』と「協同組合のアイデンティティーに関するICA宣言」で宣言しています。
※JAもICAに加盟しており、この原則に沿った運営がなされています。
第1原則 自発的で開かれた組合員制
協同組合は、自発的な組織である。
協同組合は、性別による、あるいは社会的・人種的・政治的・宗教的な差別を行なわない。
協同組合は、そのサービスを利用することができ、組合員としての責任を受け入れる意志のある全ての人々に対して開かれている。
第2原則 組合員による民主的管理
協同組合は、その組合員により管理される民主的な組織である。
組合員はその政策決定、意志決定に積極的に参加する。
選出された代表として活動する男女は、組合員に責任を負う。
単位協同組合では、組合員は(一人一票という)平等の議決権をもっている。
他の段階の協同組合も、民主的方法によって組織される。
第3原則 組合員の経済的参加
組合員は、協同組合の資本に公平に拠出し、それを民主的に管理する。
その資本の少なくとも一部は通常協同組合の共同の財産とする。
組合員は、組合員として払い込んだ出資金に対して、配当がある場合でも通常制限された率で受け取る。
組合員は、剰余金を次の目的の何れか、または全てのために配分する。
・準備金を積み立てることにより、協同組合の発展のためその準備金の少なくとも一部は分割不可能なものとする
・協同組合の利用高に応じた組合員への還元のため
・組合員の承認により他の活動を支援するため
第4原則 自治と自立
協同組合は、組合員が管理する自治的な自助組織である。
協同組合は、政府を含む他の組織と取り決め行なったり、外部から資本を調達する際には、組合員による民主的管理を保証し、協同組合の自主性を保持する条件において行なう。
第5原則 教育、訓練および広報
協同組合は、組合員、選出された代表、マネジャー、職員がその発展に効果的に貢献できるように、教育訓練を実施する。
協同組合は、一般の人々、特に若い人々やオピニオンリーダーに、協同組合運動の特質と利点について知らせる。
第6原則 協同組合間協同
協同組合は、ローカル、ナショナル、リージョナル、インターナショナルな組織を通じて協同することにより、組合員に最も効果的にサービスを提供し、協同組合運動を強化する。
第7原則 コミュニティへの関与
協同組合は、組合員によって承認された政策を通じてコミュニティの持続可能な発展のために活動する。
これら協同組合原則と協同組合以外の組織との関わりや日本の法令などから、日本にある協同組合は概ね以下の共通した特徴があります。
『加入脱退の自由』
第1原則にあるように、協同組合に「加入する(出資して組合員になる)」のも「加入しない」のも「脱退する(出資金を引き上げて組合員ではなくなる)」のも自由です。
実際には加入するには条件がある場合がほとんどですが、条件を満たさない場合はその協同組合に加入するメリットが皆無だといっても大過ないと思います。
例を挙げれば、たばこを栽培していないのに「たばこ耕作組合」に加入する意味はありませんよね?
協同組合は「自発的に協力し合う」という事を重視して、意に反して加入を強制されることはありません。
加入しないことで不利になる事もあるのですが、どこまでいっても本人の意思が全てです。
加入時に支払った出資金は脱退時には原則としては全額返金されることが多いですので、加入することによる不利益はあまりないと思いますが。
『議決権は一人一票』
第2原則にあるように協同組合の議決権は出資額の多寡に関わらず組合員一人一票です。
株式会社は株主が保有している株数(=出資額)に比例した議決権がありますが、協同組合は出資額の多寡は議決権には関係ありません。
これは、協同組合は自治的民主的に運営されるという原則(共同で運営する)を担保するためのものです。
協同組合の出自自体が「大資本に対抗する庶民連合」という構図ですので、出資額で議決権が左右されるのを良く思っていません。
なお、後述の協同組合のサービスを受けることを希望するが協同組合への加入条件を満たせない人のために、准組合員などの名称で「議決権は無いが組合員に準じる地位」が存在する協同組合もあります。
『協同組合のサービスの提供対象は組合員』
協同組合が提供するサービスは原則としては組合員しか利用できません。
組合員以外の利用(「員外利用」などと言います)については、組合員が受けられるものと区別される(利用料金が異なるとか利用範囲が制限されるなど)ことも普通にあります。
もちろん組合員と非組合員の区別なく同じサービスが受けられるケースがある事もあります。
協同組合は基本的には営利を目的としていない自助組織なので、通常は法人所得税率が低減されるなどの優遇処置があります。
そういった優位を利用して民業を圧迫されたら困りますので、法令で「サービスの利用は組合員に限る」「非組合員に利用させる場合は行政の許可を得る必要がある」という旨が明記されている事もあります。
『個々の協同組合は独立した法人』
協同組合は組合員によって自治的に運営されています。
ですから、同種の協同組合であってもそれぞれの運営方針が同一とは限りません。
同種の協同組合は目的が非常に似通っているので運営方針も似ていることが多いのですが、その地域や組合員の考えなどの事情で異なる部分もあるのが普通です。
個々の協同組合は独立して自治的に運営されていますので、例えば「JA〇〇」が何かについて表明した内容は、あくまで「JA○○」という法人の見解であって、JA全体や別のJAが同じ見解であるとは限りません。
組合員が協同組合の運営者といっても組合員全員が組織の運営実務を行うのは無理なので、組合員は自分たちの代表者を運営責任者(多くの場合は「理事」と呼ばれています)に任命して運営してもらいます。
形式としては、総会(議決権がある組合員全員の会合で最高意思決定機関)や総代会(議決権がある組合員に選出された総代による会合で総会に準ずる)で選ばれた理事が次の総会(総代会)まで組織運営を行います。
議決権を持つ株主の会合である株主総会で取締役を選んで株式会社の運営は取締役が行う
議決権を持つ組合員の会合である総会(総代会)で理事を選んで協同組合の運営は理事が行う
構造は同じです。
『協同組合連合会の運営は協同組合が行う』
協同組合連合会は、共通する目的のために個々の協同組合が出資して(組合員・会員になって)結成する協同組合の協同組合です。
この連合会も協同組合なので協同組合原則に沿った運営がされています。
協同組合連合会の議決権はその連合会に加入している協同組合が持っていて、第2原則のとおり民主的な運営が行われます。
議決権は加入している協同組合が持っているので、連合会の思い通りに連合会の運営ができるわけではありません。
例えば、生協には日本生活協同組合連合会(日本生協連・日生協(同音異字の日青協などがあるため最近はあまり日生協は使われない))という協同組合連合会がありますが、日本生協連が日本の生協の親玉ではありません。
加入脱退の自由がありますので、日本の生協に日本生協連へ加入する義務はなく、大学生協とか学校生協とか医療生協などをはじめ日本生協連に加入していない生協はたくさんあります。
日本生協連か大きな投資などを行う場合は、加入している生協の賛同を得て総会で議案を通す必要があります。
株式会社でも株主総会で経営方針の議案を通して経営しますのでそれと同じです。
「原則としては協同組合連合会は会員の協同組合への命令権などない」のです。
株主に対して命令できる株式会社が無いのと同じです。
蛇足
「コープ」「COOP」「CO・OP」という呼称
生協は略称として「コープ」や「CO・OP」をよく使っていますが、これは協同組合の英語表記のコーペラティブ(Co-operative)からきていると日本生活協同組合連合会は述べています。
農協は英語表記の Japan Agricultural cooperative の略でJAと称することがあります。
確かな資料は見つけられていませんが、JAは全国農業協同組合中央会(JA全中)に関連するJAグループの連合会に加入している農協が名乗れるような感じです。
農協自体は農業協同組合法に則れば設立できますが、先に述べていますが協同組合に加入するか否かは自由意志です。
ですので、農協だけどJAグループの連合会には加入しないという事はできますが、その場合は農協だけどJAグループではない(=JAではない)という事はあり得ます。
それと、後述しますが、JA全中は実は農協ではなく一般社団法人ですがJAを名乗っています。
漁協は英語表記の Japan Fisheries cooperative の略でJFと称することがあります。
生協・農協・漁協で共通する単語として cooperative(co-operative) があります。
どう発音するかですが、コーペラティブ・コーポレーティブ・コオペレーティブと諸説(?)あります。
筆者は英語ネイティブの方がどう発音するのかを聞いたことがないのでどれが正しいもしくは全部間違いなどは判断できません。
英和辞典の発音記号だとコーペラティブかコーペレイティブかな? とは思いますが、英語は苦手なのでおそらく間違っています。
「ご協力に感謝します」のよくある英語表記に " Thank you for your cooperation." がありますが、協力を意味する cooperation から分かると思いますが cooperative には「協調的・協力的・協同で」という意味があり、実は「協同組合」も表しています。
例:国際協同組合同盟(ICA:International Co-operative Alliance)
日本でコープというのは生協と同義的に思われることがありますが、協同組合は英語表記をするとコープが入りますので生協でなくてもコープを称することはあります。
「Aコープ」という店舗をどこかで見たことがある人もいると思いますが、Aコープは Agricultural Cooperative つまり農協です。
農協が組合員(生産者)に消費者向けの売り場を提供していたり組合員が栽培した作物を小売りしているマーケットです。
生協の店舗は生協が仕入れた商品を「組合員向け」に販売する店舗ですし、法令上は都道府県知事や厚生労働大臣の員外利用許可を得ていない限り生協は組合員にしか販売できません。
一方でAコープは、農協が「組合員が一般消費者向けに販売できるように用意した店舗」ですので、Aコープでは誰でも購入することができます。
(2)JA(農協)の歴史的経緯
長々と協同組合について述べましたが、農協については歴史的経緯から少々特異的な事柄もあります。
現在の農協の直前の前身は戦時下に結成された農業会で、その農業会の前身は産業組合や農会になります。
産業組合・農会・農業会は何れも官製組織の色合いが濃い半官半民の団体で、農会や農業会は加入を義務付けた農業経営者を指導するという形態でした。
原則的には農業経営者や農業従事者の全戸加入を目指していたため、前述の協同組合とは性格が異なる組織でした。
このことの功罪はあると思いますが、功績を挙げるとすれば「農業生産力が飛躍的に向上した」でしょうか。
例えば、米の反収(10アール当たりの玄米の収穫量)は江戸時代には150~200キログラムでしたが、昭和20年ごろには300キログラムと1.5倍から2倍に増えています。なお、昭和50年ごろには500キログラムまで伸びています。
土地改良事業で高効率高生産性の耕作地に変えられたことや、成功事例の水平展開(今では当たり前の水田に苗を規則正しい長方形の四隅に植える正条植えの推奨や、収量や品質が落ちる赤米などを神事用以外の栽培を止めさせるなどの指導をしてきました)、品種改良、栽培方法の研究などは、強力な指導力を持つ中央集権的な組織があればこそ成しえたこともあると思います。
戦後にGHQが農地改革で大量に生まれた自作農を守る制度として自主自立的な協同組合(農業協同組合)の創設を日本政府に指示したのですが、紆余曲折の末に実質的には上意下達半官半民の農業会の看板を農業協同組合に付け替えるという落としどころになりました。
全国指導農業協同組合連合会から改組した全国農業協同組合中央会(全中)も、各農協が行っている信用事業(金融など)の会計監査権を持っていたので、実質的には農協への指導組織としての性格も残っていました。
また、全中は自由民主党の支持基盤の一つとして農業政策の提案や協議を行ったり、災害時の農業被害の対策要請や協議などを行う法的根拠がありました。
つまり、現在のJA(農協)は、これらの歴史的経緯から
協同組合として設立されたことによるもの
『自主自立的なボトムアップ型組織としての性格』
歴史的経緯により前身組織から引き継いだことによるもの
『全中が各農協への実質的な指導権がある上意下達のピラミッド型組織の性格』
『食管法・減反政策などの食糧統制や農業統制といった農政を実施する行政の下請け企業としての性格』
『農政に関するロビー活動を行う圧力団体としての性格』
これらが併存している状態と言えます。
現在のJA全中は、農業協同組合(農業協同組合連合会)ではありません。
JA全中の正式名称は『一般社団法人全国農業協同組合中央会』であり、農業協同組合ではなく一般社団法人です。
JA全中が農業協同組合ではなく一般社団法人なのは、米国の要求によるものです。
なぜ米国(在日米国商工会議所)が平成26年(2014年)に「JA全中の解体」の意見書を日本政府に出した(要求した)のかはアレですが、それをうけて平成27年(2015年)に農協法が改正されてJA全中に関する規定が廃止されました。
この法改正で「JA全中の各JAの信用事業に対する会計監査権」がなくなり、各JAへの事実上の指導権限がなくなりました。
また「国の要請により行政の代行的な組織という制度上の位置づけ」と「行政庁への建議権」も削除されました。
逆に言えば、それまでのJA全中は法的に「行政の代行」「行政への建議」を行う組織という位置づけで「事実上は各JAへの指揮権」があったわけです。
農協法からJA全中の規定が廃止され、令和元年(2019年)9月末日に農業協同組合連合会から一般社団法人に移行していますが、これまでの歴史的経緯からか一般社団法人に移行後も「全国農業協同組合中央会」「JA全中」という名称・略称を引き続き使用しています。
農業協同組合でないのに農業協同組合という文言が入っている組織名……
(3)JAの組織構造
個人による加入脱退が自由な、主に市町村単位ぐらいにあるJAに加入している組合員(生産者)が運営するJAが基本です。
この組合員(生産者)が直接加入して運営するJAを単位農協(単協)と呼ぶこともあります。
この単協が、様々な連合会に加入することで単協ではリスク管理や需給関係などで難しい事業を行います。
JAの事業範囲は主に5つあります。
単協が携わるのはもちろんですが、都道府県ぐらいの単位である連合会と全国レベルで取りまとめる連合会があります。
『代表・総合調整・経営相談』
行政などに働きかけたり、利害関係などを調整したり、農業経営体の経営相談などです。
ある意味では執行部とか指導部といった感じもあります。
「〇〇県JA中央会」や「JA全中」がこの事業を担っています。
『販売購買事業』
農産物の販売や農業資材(種苗・肥料・農薬・農機・農機具・ハウスなどの建材・マルチングなどの消耗資材など)の共同購入を行う事業です。
農協と言われてイメージしやすい事業だと思います。
「○○県JA経済連」や「JA全農(全農)」がこの事業を担っています。
『共済事業』
一般には保険事業といった方が通りがよいでしょう。
保険と共済は根本の思想は違いますが、やっている事とその効果は大差ありません。
JA共済は生命保険に相当する共済と損害保険に相当する共済の両方を行っています。
こちらは全国レベルの連合会である「JA共済連(JA共済)」が担っています。
単協とか都道府県単位とかだと、天災時に加入者の大部分が被災していて破綻するリスクがあるため、単協が共済加入者から集めた共済料金の一部をJA共済に再共済して全国規模でリスク分散していますし、JA共済も全国の単協からの共済料金の一部を別の組織に再共済してJA共済や単協が支払う共済金で破綻しないように二重三重にリスク回避しています。
これは保険会社も同じで再保険を掛けてリスク回避しています。
『信用事業』
金融事業のことで「JAバンク」と言えば想像できますでしょうか。
JAバンクは「単協」と「JA信用連(信連)」と「農林中央金庫(農林中金)」がJAバンク会員になって構成しているグループの名称です。
『厚生・医療事業』
組合員(生産者)向けの健診や病院や介護などの厚生・医療を担っています。
「〇〇県JA厚生連」や「JA全厚連」が対応しています。
これらは原則としては組合員向けのサービスなのですが、例外はあります。
JA共済とJAバンクは顕著ですが、法令などで一部制限はありますが組合員以外の利用(員外利用)や、出資金を拠出して准組合員(議決権など一部の権利が制約されているが組合員に準じる地位)になって利用することは、農業従事者でなくても可能です。
また、経営相談は新規就農を検討している方(=まだ就農していないので組合員ではない)の相談に親身に応じてくださる事が多いですし、未加入の営農者でも栽培指導とかを受けることは可能な事が多いです。
何故未加入でも栽培指導を受けられるかというと……変な栽培をして病害虫の発生源になったりして周りが迷惑をこうむることが稀にあるからです。
(4)JAの運営方針の基調
JA(単協)は組合員が選んだ理事が運営しています。
多くの組合員に不信任を突き付けられたら理事からおろされますので、基本的に理事は多くの組合員に支持される運営を目指しています。
JA連合会は会員JAが選んだ理事によって運営されています。
多くの会員JAに不信任を突き付けられたら理事からおろされますので、基本的に理事は多くの会員JAに支持される運営を目指しています。
単協や連合会は民主的に運営されているのですが、民主的に運営されているがための弊害もあります。
例えばとあるJAの組合員に50ヘクタールを耕作する大規模農業経営体の組合員が5人、1ヘクタールを耕作する中小規模農業経営体の組合員が45人いたとします。
※少数の大規模と圧倒的多数の中小規模というのは現実によくある構図で、決して荒唐無稽な設定ではありません。
耕作面積(≒出荷量)で言えば大規模の合計は250ヘクタールで、中小規模の合計は大規模の1人にも及ばない45ヘクタールですから、JAの経営(総出荷量)に及ぼすインパクトは大規模農業経営体の方が絶大です。
しかし、人数では中小規模の方が圧倒的多数ですので、選出される理事は中小規模の理事の方が多くなるのは分かると思います。
そうなると中小規模に有利な運営方針になりやすくなりますが、やりすぎると大規模の方はそのJAに加入しているメリットが小さくなり、仮に大規模の5人が脱退したら出荷量が約85%減の約15%になりそのJA自体が立ち行かなくなる可能性だってあります。
大規模の5人が脱退するというのは、地域の人から恨まれますし、農地があるから他所に行くという事も無理なので、そうそう選択されないとは思いますが、45人の中小規模の組合員が5人の大規模の組合員に集っている構図にもみえます。
大規模農業経営体には「地域全体の農業のために中小を支える度量と寛容」が、中小規模農業経営体には「地域全体の農業のために大規模への最大限の配慮」が求められることになりますが……当然ながらどちらも不満でしょう。
民主的に運営するから全員が不満をかかえることになります。
全体方針と個人の思いが完全に一致することは無いと思います。
ですから“JAにはこうして欲しい”“JAはこうあるべきだ”というのは組合員なら誰しも持っている想いでしょうし、あるべき姿のために声を上げることは大事なことだと思います。
この民主的に運営すると全員が不満を抱えるというのは、別にJAに限らず全ての民主的運営体に共通していると思います。
独裁的な組織だと少なくとも独裁側の人は不満は少ないでしょうが。