表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/12

1.米の消費量・生産量・米価の経緯

(1)米の消費量


言うほど日本では米は食べられていません。特に過去と比べると。


主食用米の一人当たりの年間消費量は昭和37年度(1962年度)の118.3キログラムをピークに下落を続けていて、令和の世ではピーク時の半分以下の50キログラム程度です。

つまり、ピーク時には一人当たり月に10キログラムぐらい消費していましたが、令和の世では一人当たり月に5キログラムも消費していません。


この消費量には外食などで食べている米も含んでいますし、加工用に転用された米も一部含まれていますので、家庭用にスーパーなどで買われた米はもっと少ないです。

さらにここで言っている米の重量は玄米での重量ですので、精米して白米にすると重量は一割ぐらい減るので、令和の世では白米だと外食を含めて一人当たり月に3.8キログラム程度しか消費していません。


令和2年度(2020年度)の小麦の一人当たり年間消費量は31.7キログラムですので、小麦よりも米を食べていることは間違いありません。


小麦は昭和40年(1965年度)の一人当たり年間消費量は29.0キログラムでしたので長期的にみても微増というか横ばいというか……という消費量でしかありません。


昭和40年代と令和の世の比較では、米は半減していますが、小麦はほぼ変わりません。

米の消費が減った原因はパンなどの小麦をたくさん食べるようになったからではありません。


その期間に激増したのは肉類(一人当たり年間消費量9.2キログラムから33.5キログラムと3.6倍以上)です。

油脂類(食用油やマーガリン類など)の一人当たり消費量は確かな数字は見つけられませんでしたが、総消費量は2倍ぐらいに増えているのは確認できました。


おかず(主菜・副菜)が充実して主食の米の消費量が減少したというのがこの半世紀の食生活の変化と言ってもよいかと。



(2)米の生産量


第一次第二次のベビーブームなどを含む人口の増加よりも一人当たり消費量の減りの方が早く、主食用米の年間需要量(その年度に出荷された主食用米の量)は、単年で見れば前年よりも増えた年もありますが、平均すると年間8万トンのペースで減り続け、人口が減少に転じて以降は年間10万トンのペースで減っています。


最盛期の昭和42年度(1967年度)43年度(1968年度)には1,445万トンもあった生産量は令和6年度(2024年度)は679万トンと半分以下に減っています。


一人当たりの米の消費量は最盛期の半分以下なので、当時より人口が多いことも加味しても最盛期の半分程度の生産に抑えないと生産過剰になります。


生産量が減ったから消費量が減ったのではなく、消費量が減ったから生産調整をして減産してきた結果です。


生産調整で著名なのは「減反政策(2018年:平成30年・令和元年に廃止)」だと思います。


戦後の食糧難に対して国民が飢えないように新田開拓や品種改良や肥料や農機の投入などで米の増産に努めてきました。


しかし、1960年代末には1,445万トンもの米が生産されるなど、米の増産がオーバーシュートしてしまって、生産量が需要量を上回って毎年余剰米がでてくるようになりました。


減反政策は色々と陰謀論的な言説も聞きますが、無理して米を作っていたところなどからは歓迎されました。

もちろん減反に反対していた生産者も数多くいましたし、中には転作するか廃業するかを迫られた生産者もいました。


生産抑制は生産者米価によるものもあります。

米を栽培しても儲からないよという価格まで生産者米価を下落させられたら見切りをつけて転作や廃業する生産者もでてきます。



(3)米価

戦時下の食糧供給のために作られた食糧管理法(食管法)は、政府が米穀を全量買い上げて「配給制度」で国民が買える米穀の値段と量を政府が決めるための法律でした。


戦後も食糧難は変わらず、生産者(米農家さんなど)から自家用(生産者が自分で消費する分)を除いた米を政府が指定する価格(本来の意味の生産者米価)で農協や米卸売業者などを通じて政府が全量を買い取って、それを政府が指定する小売時の上限価格(本来の意味の消費者米価)で指定米卸売業者や指定米小売業者を通して消費者に販売されていました。


その政府が定める米価ですが、建前上は政府が生産者から買い取る価格(生産者米価)は生産者の生活が成り立つように、政府が消費者に販売する価格(消費者米価)は生産者米価は考慮せず主に都市部の所得水準などから経済困窮者にも配慮して決められていました。


その結果、生産者米価の方が消費者米価より高いという逆ザヤ状態になっていましたし、原則としては全量買い取り制度なので米の増産がオーバーシュートした後も余剰分まで政府が買い取らないといけない事態になり、政府の財政負担が耐えられなくなり制度の維持が難しくなりました。


そこで政府は、新たな水田開拓の停止や主食用米以外の作物への転作に補助金を出すなどの減反政策で生産抑制を行うとともに、政府による米の全量買い取りをやめました。


そうなると政府に買ってもらえない米がでるので、政府を介することなく市場に流通させる「自主流通米」という制度を創りました。


政府が決める消費者米価は生産者米価より安いので、自主流通米を消費者米価で売れというのは無理があるので、消費者米価の自由化(物価統制令の規制品目から米を除外)も自主流通米制度創設と同時に実行されました。


消費者米価の自由化によって需給関係などの市場原理により広義の生産者米価・消費者米価が決まるような体制になったわけです。


ただし、市場原理によって高値になったら経済的な困窮者がさらに困窮するので、経済的な困窮者に配慮した政府が定める原義の消費者米価で販売される「標準価格米」を創って自主流通米と標準価格米の二本建ての体制になりました。


自主流通米は、食味が良いなどの高品質な米ほど高く売れて生産者の収入になるので、高値が付きやすい特AランクとかAランクといった食味が良い米(良食味米)を自主流通米に回して、政府の買い上げ分はBランクやB’ランクの米が多くなります。


当然のことながら、自主流通米は「銘柄米」で標準価格米は「中級米」という扱いになりますし、市場は自主流通米が大半を占めることになります。

筆者は子供の頃に米穀店の店頭で標準価格米を見た覚えはありますが、大多数の米が自主流通米でした。


その後、全国一律の上限価格を定めていた標準価格米制度の根拠法であった食管法が平成7年(1995年)に廃止されたため標準価格米という制度も廃止されました。


代わりに食管法の後継である『主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律(食糧法)』を根拠法にした、都道府県の判断で目安の小売価格を決める「指定標準米」制度になり、政府在庫米の古古米などと自主流通米とブレンドするなどをして指定標準米が販売されるようになりました。

筆者は指定標準米を見た覚えはないのですが、でかでかと明記していないだけで売られていたとは思います。


消費者米価の変遷は以下のような感じです。

「政府が価格と購入量の上限を定める配給制度(戦時下)」

「政府が価格を決める強い流通規制(自主流通米の開始まで)」

「市場原理に任せつつ上限価格を政府が決める標準価格米で弱い流通規制も行う(食管法廃止まで)」

「政府の介入手段を極力なくして消費者米価を自由化(現在)」


配給制度下で消費者が買える量の上限をどうやって管理していたかというと、米穀配給通帳(米穀通帳)と呼ばれる証書類を使っていました。

米穀通帳は、現在の運転免許証やマイナンバーカードのように政府が発行する身分証明書としても扱われたそうです。


米穀通帳の目的は消費者が購入できる米の量を制限することでしたが、米余りの状況になって以降は制限を設ける意味がなくなり、有名無実化していきました。


ただ、制度としては昭和56年(1981年)まで米穀通帳は残っていました。

米穀通帳が法的に有効な時代を生きていた筆者ですが、自分の分の米穀通帳を見たことはありません。


政府が強い規制を敷いていた時代は名目上は生産者の自家用を除いた全量を政府買い取っていましたが、自家用として生産者が確保していた米を闇市などで売る自由米・ヤミ米というものもありました。

自主流通米は米余りの時代にヤミ米を合法の存在にして健全化したという見方もできるかと思います。


自主流通米以降の米価は建前上は市場原理で決まるので、需要がなければ値下がりしますので、米の需要が減り続けているので消費者米価は安値安定となっていました。

建前上なのは、政府の意向を受けて高騰しないように協調した入札が行われていたからです。


どれぐらい米価が下がっているかですが、米の消費のピークである昭和37年度(1962年度)ころの消費者米価を現在の価値にあてはめると5キログラムの価格は約12,000円ぐらいらしいです。

令和5年度(2023年度)の5キログラム2,000円だと六分の一、仮に5キログラム5,000円になっても半分以下の消費者米価です。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ