第2話① マジカル・フェアリー現る!
「あたし、マーシャ。あなた、だれ?」
「しゃべってる⁉」
「ちょっと~うるさい! 他の人に聞こえちゃうじゃん」
「あ……ごめん」
なんだか勢いに負けてオレンジおさげの小人に謝っちゃった。
小人は私を見つめてる。やっぱ生きてる……お人形じゃないのかな。
せっかくかわいいお人形見つけたと思ったのに……。
……って、そんなこと考えてる場合じゃないっ!
ひとまず状況を整理してみよう。
小さな、ほんとに小さな、手に乗りそうなほど小さな女の子がいる。そして、私に話しかけてる。
うーん。よくわかんない。
「えーと、あなたいったいなんなの? 人形? 人間? ロボット? 妖怪? なんでしゃべれるの? どこから来たの?」
気になることがいっぱいある。どんどん気になることを質問しちゃう。
マーシャと名乗るその小さな女の子は、ほっぺを膨らませる。
ちょっと質問しすぎちゃったかな……。
でも、スベスベのほっぺが膨らんでいて、まるで果物みたいでかわいい。
「も~いっぺんに聞かないで! てゆーか、まずあたしの質問に答えてよ! で、あなた、だれ?」
「あ……ご、ごめん。……私、みのり。田辺穂」
「穂、よろしく!」
元気で弾む声。
よし。気になることを一つずつ聞いてみよう。
「じゃあ、教えて、あなた……」
マーシャはきっぱり遮る。
「あたし、マーシャだよ。覚えてよね」
「あ……ごめんね。えーと、マーシャちゃん、お人形さんなの?」
「あたし……人形じゃない」
人形じゃないなら、いったい何者かしら。
「妖怪?」
「そんな怖いのじゃないもん」
え~。なんだろう。じゃあ……
「妖精?」
「妖精……ん~、悪くない。うん。かわいい。妖精。そう、あたし、妖精! ふっふ~ん♪ かわいい、キューティーっ! そう、キューティーフェアリー・マーシャ!」
ごきげんな様子で歌う。謎のリズムで。
なんかずいぶんいいかげんに妖精ってなった気が……。
まあ、本人がそう言うなら、妖精と呼んであげましょう。
とりあえず他にも色々聞きたいしね。
「じゃあ、妖精のマーシャちゃん。どこから来たのかしら?」
「う~ん、別の世界……みたいな?」
みたいなって言われても……。
「なんでうちに?」
「ちょっと色々疲れちゃって。不時着ってやつ!」
「はあ……」
謎は深まるばかり。少しでも手掛かりを掴もうと、マーシャちゃんをよく眺める。
そうすると、気づいたことがある。
「かわいい……」
思わず声に出ちゃう。
「えーそう? うれしーな!」
マーシャがニカッと笑う。
「いや、さっきから気づいてはいたの。でも改めて見ると、すっごくかわいい! 私の持ってるどの人形にも、負けず劣らずって感じ。いや、「かわいい」に優劣なんてないんだけどね。まあ、『みんなちがって みんなかわいい』と誰か……誰か知らないけど……言ってた通りだよ」
……ふと我に帰る。おっと、危ない。ついついしゃべりすぎちゃった。
私、かわいいもの見るとこうなっちゃうのよね。
マーシャの方を見る。マーシャは目をまん丸にしてる。ビックリさせちゃったかしら。
「……えーと、よくわかんないけど、ほめてくれてるんだよね……えへへ、照れちゃうなあ」
マーシャは頭をかきかき。顔はほのかに赤い。
子どものほっぺみたいで、そんなところもかわいい。
「手出して」
マーシャが言うとおりに手を伸ばすと、ぴょんっとマーシャちゃんが飛び乗ってきた。
マーシャちゃんは人差し指をぴっと私の方を向けて、
「ここに来ちゃったのは事故だよ。あまり人に見つかりたくない。言わないでほしいな! 他の人には」
「うん……もちろん」
「話がわかってよかったよ!」
マーシャちゃんは手からぴょこんと飛びおりる。まあ、言いたいことはわかる。
「だって、見つかったら大騒ぎになっちゃうかもしれないものね」
「そーそー!」
「そうなったら、私、マーシャちゃんに着てほしい服がいっぱいあるもの、困っちゃうわ」
「ん……?」
マーシャちゃんは小さな眉毛を寄せて、怪訝な顔。
そう。ずっと思ってたのよね。
「ちょっと待ってて」
私は、自分が作ったお人形さんのための服を何着か並べる。たくさん作ってきたなかで、マーシャちゃんにサイズが合いそうで似合いそうなやつ。
フリルいっぱいのドレスに、振り袖、ロリータ、ワンピース……。
私の大好きたち。
「ほら、これとか似合いそうじゃない⁉」
と言って、とびきり派手なウェディングドレスをマーシャちゃんに見せる。
マーシャちゃんは、
「あたしおもちゃじゃないもん」
と言って、そっぽを向いてしまう。
絶対似合いそうなのに……。
「え~いいじゃん。一回着てみてほしいなぁ」
「も~!」
マーシャちゃんのネックレスのジュエルが光る。
え、なに⁉