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第1話③ 出会い──それは突然に あとついでに運命的に

 のんちゃんと別れて、私は一人家に向かう。

 さっきの話で、小五の記憶、田中さんとの記憶がよみがえってくる。

 小学五年生のある時期まで、私は人形の話をみんなにしてた。

 好きなことの話になると、止まらないところがあるの。

 普段はおとなしいのに、人形の話になるといきなり元気……なんてからかわれたりもしたっけ。

 でも、それなりにみんなとうまくやってた。

 まあ、そう思ってたのは私だけ、の可能性もあるけど。実はドン引きされてた……とかあるかもだけど、少なくとも表立っては平和だった。

 五年生の秋。それが大きく変わっちゃった。

「え~、田辺さん。人形なんて好きなの? 子どもっぽいねぇ」

 その一言に、

「……別にいいじゃない。好きでも」

と答えたのが、全ての始まりだった。

 口答えしたのが気に食わなかったらしく、田中さんはそれから、ことあるごとに私の趣味を馬鹿にするようになった。


 そんな日が続いたある日、

「今度人形持ってきてよ。私にも見せて。一緒にお人形さんとおままごとちまちょうよ~」

って言ってきたの。私は困っちゃって。

「……」

「え、なに?」

「……ヤダ」

「なんでよ」

「……だって、バカにするじゃん。ヤダよう……」

「だって、人形遊びは今でもやってんでしょ? じゃ、いいじゃん」

「……でも」

「ね~みんなぁ、田辺さん、まだママとおままごとやってるんだって~! 五年生なのに……」

「うっさい!」

 この声は私じゃない。のんちゃんだ。

 のんちゃんは、そう叫んでから田中さんの肩を突き飛ばした。

「な~に? やんの⁉」

「やるよ!」

 一瞬だった。

 さすがスポーツ万能のんちゃん。

 一瞬で田中さんのほっぺをひっぱたいて、泣かせてしまった。

 その時の田中さんのひきつった顔。今でも忘れられない。

 でも同時に、のんちゃんの怒りに燃える顔も、忘れられないよ。とっても、かっこよかった。

 私にとっては、ヒーローだった。

 すぐに先生がやってきて、のんちゃんは職員室に連れてかれてった。

 なんで殴ったの、という質問にのんちゃんはずーっと何も答えなかったんだって。先生は、のんちゃんが理由もなくいきなり殴ったのかと思ったみたい。

 保護者に連絡がいって、田中さんの両親は怒って学校に押しかけようとしてて。

 のんちゃんが悪者みたいになりそうで、怖くなった私や見てたクラスメイトが先生に事情を説明した。それで、先にしつこく私をいじめてたのが田中さんの方だと先生たちも分かったの。

 田中さんの両親は、それがうわさになってほしくないから、なあなあで収めようとしたんだって。田中さんの両親は、けっこー学校活動にも熱心で、先生も言うこと聞いちゃって。

 結局、田中さんは私に謝って、のんちゃんは田中さんに謝るってことで、事件は一応解決した。

 先生は、私の両親にも言わなかったらしい。

 クラスメイトも、私やのんちゃんに味方してくれた。とってもうれしかったな。

 でも、田中さんは孤立しちゃって……。当然と言えば当然なんだけど。中学校にも、小学校から一緒の人が多いから、田中さんはクラスになじめるのかしら。

 私はもう田中さんには怒ってない。謝ってくれたし、あれから田中さんが私になんか言ってくることはまだないからね。

 でも、なんだか気まずいのは変わらない。そんな様子を見て、のんちゃんは自分が殴っちゃったことに責任を感じてるんだ、きっと。

 そんなこと、ないのにね……。


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