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13.供給過多で死んじゃう(後日談)

『魔物災害』――ダンジョンから魔物が溢れ出すスタンピードとは違い、各地で魔物が自然発生することで起こる多方面への大規模な被害。それを、暫定的にそう呼称している。


人的被害。経済的被害。他にも地形や生態系への被害。その他、諸々。エトセトラ。


各国は魔物災害による損失を最小限に抑えようと様々な策を講じており、それはこの日本でも同様。大改革中の政府では手が回らないので、その主導権は防衛の要である自衛隊とハンター協会に丸投げ……基。一任しているが。


それでも当然人手は足りず、駆り出されたのは――公安警察。


『イグドラシル・システム』による犯罪者大公開祭りと“処理”で、テロ発生の可能性がある程度は下がったからだろう。しかし『システム』に依存し切らず、常に動向は伺っているらしい。素晴らしい判断である。


公安警察の中にもハンターの資質に目覚めた者は存在しており、その者達はダンジョンの脅威判定の為に魔物と対峙済み。国内で新たなダンジョンが発生していないかの調査も行っている。


目下――ダンジョン調査も仕事とする彼等に下された使命は、『魔物災害』と『スタンピード』が重ならないように各地ダンジョンの調査。加えて、未発見ダンジョンの捜索。


その範囲は日本全土で、当然ながら無人島も対象内。


……っと、云う訳で。







「あああああっ……りゅーじん、いた……居た! 龍刃! 生きてて良かった速報出したい!」


「君が『速報職人』な訳ね」


「ひょっ……認知うれし……ありがた……夕飯寿司にしよ……」


「奏向くんのファン、本当に面白いよね」


「んぎぃっ……ゅ、ゆるねこ氏……ガチ勢ホイホイ面白かったです……イケメンと合法ロリ……推しカップル尊い……サインください飾る家宝にする末代まで語り継ぐ」


「あーはいはい。書いてあげるから、取り敢えず立とうね。――ツバキ。飲み物頼んで良い? 僕、ツバキが作ったカフェオレ飲みたい」


「うん。わかった。ミルク……はキャンピングカーの中か。作って来るから、取り敢えず『合法ロリ』の説明聞き出しといてね」


「『可愛くて癒される』ってことだよ」


「そっか」


あっさりと。何故これで納得出来るのかとツッコミそうになった、公安の男――龍刃の配信に現れていた『速報職人』。しかし口は閉じておく。


推しカップルの会話の邪魔はしたくない。尊い。拝もう。


すっ――と手を合わせる彼は、大の大人で在りながら感激に涙を流している。推し、尊い。すき。


拝む姿には特に何も言わず。ゆるゆるキャンプ真っ最中だった龍刃は、アイテムボックスから取り出した折り畳みチェアを投げて寄越した。


いそいそと龍刃の向かいに座り、じっ……と見据えて来る龍刃の言葉を静かに待つ。推しからの凝視。とても緊張する。


十数秒、程。だったか。


「君ひとり? どうやって上陸したの?」


当然の質問。そのイケメンな顔を訝しげに歪めて。顔が良い。若干……『龍刃』ロープレの威圧感が垣間見える。格好良い。かおがいい。


また拝みそうになる衝動をどうにか抑え、心を落ち着かせながら口を開いた。


「ひとりです。2ヶ月前に『神ID』が出品した『飛行』のひとつを、無人島のダンジョン捜索の為に国が落札したので自分が立候補しました。――あ。自分、公安の者です。ゆるねこ氏の件、止められずに本当に申し訳なく……吊ろう」


「あー……出してたね。吊るのは一旦待って。なに、俺達に逢いたかったって?」


「推しカップルまじ尊い」


「会話成立しないんだけど」


しかし気を悪くすることは無く。カフェオレを渡して来るツバキにお礼を言って、ひとくち。


「あ〜〜〜おいし〜〜〜ツバキの愛情たっぷりカフェオレ、最高。え……おいしっ……天才では……? 超好き大好き愛してる結婚した」


「役所に届け出せないから事実婚だけどね」


「神様がどうにかしてくれそう。神様お願いしまーすっ」


「遠慮無くなったのちょっと面白い。そしてなぜか拝まれてる」


推しカップル(ぼくたち)がイチャイチャしてるから嬉しいみたい」


「愉快な人なんだね。――というか、君。普通に私の名前連呼してるんだけど」


「僕達推してるから秘匿するだろうし、公安なら口も堅いから大丈夫だよ」


「こうあん」


「未発見ダンジョン探してるんだってー。たぶん、魔物災害とスタンピード被らないように管理したいんじゃないかな」


「大変だね」


「ねー。えーっと――それで。僕達のこと報告、」


「しません」


「即答ウケるんだけど」


「推しには健やかに生きて頂きたいと願うのが、健全なオタクですから。末永く幸せに暮らしてくださいふたり共好きです尊い」


「おーけー、わかったー。ちょーラブラブで幸せに暮らすねー」


満足。アイドル顔負けキラキラエフェクト標準装備の笑顔を見せる、龍刃。


瞬間、「うっ!!」と心臓辺りを掴む速報職人。クリティカルヒット。腰を丸め蹲ってしまったので、大ダメージ確定。


確かに顔だけは良いので、その気持ち分かるよ……との或る種の同情を向けるツバキは、愉快そうに口角を上げている龍刃に呆れの息を吐いておく。


どうやら、久し振りに会った外部の人間が“面白いオモチャ”だったので機嫌を良くしているのだと。この半年の間に龍刃と交流のあるハンターを呼んでもらったが、これまでで一番愉しそうにしている。


純粋に性格が悪い。今に始まった事ではないので大した問題でもなく、愉しいのなら良いかと思うだけ。


ツバキも中々に無慈悲なのかもしれない。龍刃に触発された可能性も否定出来ないが。


「ねえ、奏向くん。因みに、なんだけど。報告するって言ったらどうしてた?」


「え。聞きたい?」


「うん。やめとく」


「ツバキは賢いねー」


「なんだろう。褒められてる気がしない」


容赦が無い龍刃。であれば、“やること”はひとつ。救われた命がここにある。


しかし速報職人は怖がりも青褪めも逃げもせず。


「ぅ……凄く『龍刃』……容赦無いの格好良い……推しが“推し”過ぎてまじで推し」


「『推し』のゲシュタルト崩壊起きそう。『龍刃ガチ勢』が調査に来てくれて良かったね、奏向くん」


「ねー。――あ。速報職人くん、お昼食べてく? ツバキが作るオムライス、ふわとろで超美味しいよ」


「!! 家宝っ!!」


「腐るから食べてほしい」


「、は? ゆるねこ(推し)の手料理、腐らすなんてしないよな?」


「食べます。でも写真撮らせてください。食品サンプル作る家宝」


「それ只の食品サンプルじゃん。また食べたくなったら遊びに来れば良いよ。――良いよね、ツバキ?」


「うん。良いよ。いつでも『推し』に会えるなら、私達がこの島に居るってバラせなくなるだろうし」


「強か〜〜〜超好き〜〜〜」


「えぇ……。そのつもりで『また』って言ったんでしょうに」


「会話のレベルが合うって大事だよね」


「それはそう」


「ひぃっ……推しカップルがお似合い過ぎて尊い……ここが天国……ユートピアっ」


また手を合わせ拝む彼は、宣言通り報告はしないのだろう。頻繁に推しに会いに来るなんて畏れ多いので、月に一度来れば良い方となりそうだが。とても緊張する。でも誘ってもらえて嬉しい。オタクのジレンマ。


半年間も『龍刃』の新規映像を見ていないので、久し振りの『龍刃』は刺激がとても強い。しかもロープレではなく、本性。ツバキにデレデレ甘えん坊の顔面国宝。




いやいや龍刃のこんな姿、頻繁に見たら心臓死ぬって。顔が良い。性格悪いの好き。格好良い。かおがいい。あーーー……


ゆるねこ氏のほんわか癒やし系雰囲気、最高。これは龍刃も落ちるわ。ゆるねこ氏、龍刃に捕まってくれてありがとう。この世の全てに感謝。木漏れ日が差し込み花が咲き乱れ小鳥達が囀り世界に平和が訪れる。拝んどこ。


速報出したい。いや出さないけど。死にたくないし。これからも推しカップルの幸せ見守りたいし。


推しよ、永遠に健やかで在れ。




拝みながら。目の前の光景を脳に刻み付けながら。全力のオタク思考。良識のあるオタクである。


「じゃあ――ツバキがお昼作る間、一緒にダンジョン潜る?」


「自分、死ぬんですね」


「え」


「推しとダンジョンなんて死ぬ自信しかないです緊張する心臓痛い」


「……んー、ふふっ。死ぬなら、ツバキのオムライス食べてから死のうね」


「はいっ!!」


「いや死ぬのを止めたげて」


正論。呆れた声でのそのツバキによる正論は、


「そんじゃ。いってきまーす!」


「なっんびゃらまあっ!!?!?」


いつの間にか。


座っていた筈の龍刃は速報職人をお姫様抱っこし、発された奇声を無視して『飛行』スキルで飛んで行った龍刃には届かなかった。いや、聴覚には届いてはいるだろうが。


「いってらっしゃい」


もう聞こえないとは分かっていても見送りの言葉を送ったツバキは、さて……と。


「オムライス作ろ」


久し振りに龍刃以外に手料理を振る舞える。その事実に機嫌を良くしながら、大型のキャンピングカーの中へ。


“神様”に頼んで範囲指定完全防虫の魔道具は出してもらっている。超快適な無人島生活。


そんなのんびり超快適スローライフに突如投じられた、龍刃にとっては“面白いオモチャ”。いっそ悲劇を通り越して喜劇かもしれない。


オモチャ認定された本人が「推し!」と喜んでいるので、特に問題は無いだろう。


連絡先交換して偶に呼び出そう。そう勝手に決めたツバキは、純粋に『良い人そうだしお友達になれたら良いな』との考えによるもの。この認識の違いも、速報職人にとっては『推しカップルの魅力』となってしまうのかもしれない。


ふたりきり……ではないが、やはり『龍宮寺 奏向』との生活はとても愉しい。




閲覧ありがとうございます。

気に入ったら↓の☆をぽちっとする序でに、リアクションやブクマお願いしますー。


『速報職人』がお気に入りな作者です。どうも。


彼は公安の、しかも割りと高い位置にいます。

12話でソース無しに各組織や各国の動向を速報に出せていたのは、この肩書きのお陰でした。

え……それは情報漏洩なのでは(小声)


ダンジョン潜り楽しかったし、オムライス美味しかった。

良い人生だった。

(無事に帰宅したよ)


小ネタなので短めで失礼。

たのしかった!


また小ネタ降りたら更新しに来まーす。

(今のところ降りる気配が無いからこれで最後かも)


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― 新着の感想 ―
ここ龍刃が龍神になってるんですけど龍くんもうこの時は神扱いってことで良いっすか!?
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