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11.慣れと諦めは背中合わせの鏡合わせ

無人島って意外と安いんだな……


最早何かを諦めたような遠い目で宙を見るツバキ。貯金額がめでたく1兆エンを超えたので、潔く金銭感覚をバグらせたらしい。ガチ勢怖い。


それでも食べ物は庶民的。恐らく、その感覚だけが最後の砦なのだとはツバキも分かっている。


いっそのこと全ての金銭感覚をバグらせた方が精神的に楽になれるのに。


「無人島行くのに『飛行』スキル欲しいんだけど、神様にドロップ頼める? ちゃんと買うから」


「私の為でもあるからあげるのに」


「やだ。買う」


「貢ぎたがりめ」


「うん」


「『うん』て」


いつの間にか。半同棲状態だったのに、気付いたらツバキの家で寝起きをしている龍刃。強行突破の同棲。


朝にそう頼んできた龍刃に『確かに空から上陸するしかないな』と納得したので、今日のスライム討伐で『飛行』スキルのドロップを頼んでみた。多くて2枚で充分なのに、何故か10枚程ドロップされて泣きたくなった。取り敢えず8枚をオークションに出品してみると即入札が入り、ボードを消す数秒の間にもどんどん金額が上がったので見ないフリをした。反射的に入札をするガチ勢怖い。


ツバキの理想通り、ねずみ返しの崖に囲まれ海からの上陸が不可能な無人島。天然の要塞。


ヘビロテでハンター活動をしているガチ勢の龍刃は兎も角、ツバキは『飛行』スキルは一度しか使わない。一度行けば『転移』スキルが記録してくれる。確実に世界一贅沢で無駄な、スキルカードの使用方法となってしまう。


なので。自分の分の『飛行』スキルカードは一応使用せずに確保しているが、龍刃の背に乗って飛んでもらう事も視野に入れている。きっと断られないからと予想して。


実際に「背中に乗せて」と頼んだら喜んで乗せてくれるだろう。好きな人から密着して来てくれる!との下心全開で。とても欲に忠実で潔い。


「あ。そうそう。どうせダンジョン災害起きてるだろうから、先に掃除しに行くね」


「うん。お願い。序でにキャンピング用品の性能テストで、何泊かしてくる?」


「やだ。ツバキと一緒にする」


「甘えん坊」


「あのスレ、最終的に僕の悪口オンパレードになっててめちゃくちゃウケるよね」


「そこでウケるのは奏向くんだけだと思う。悪口、怒らないの?」


「別に。大半は僕のファンの悪ノリで、本気で書いてるの極一部だろうし」


「“龍刃ファン”って変な人ばかりだよね」


「ネラーが多いからノリが特殊」


「面白い」


「なら良かった。ツバキも配信でコメント参加すれば良いのに」


「コメント、メインIDだからちょっと怖くて」


「匿名設定出来ないもんね。神様に頼んだら出来そうだけど」


「バグ表記になりそうで、それはそれで別の怖さがありそう」


「ウケるじゃん」


ウケるウケないで判断するの面白いな。


そうズレたことを考えるツバキは、受信したメッセージを確認。送信者はユンランで『メルから「ゆるねこちゃんに龍刃を宥めてくれって頼んで」って言われた。どう思う?』とのこと。


秒で『無理だと思う』と返信しておく。寧ろ、“ゆるねこ”を利用しようとした事実を知られたら怒りが再熱しそうだと。漠然とした確信。


それは書かなくともユンランも確信していたらしい。『だよな』と返信が来たので、そこでやり取りを終わらせておいた。またメッセージ画面を覗かれる前にネットニュース欄を開いたので、龍刃によるユンランへの理不尽な怒りは回避出来た。


本当に嫉妬深くて独占欲強いんだよなー。と思うだけでその“嫉妬”を特に拒絶はしないのだから、龍刃が調子に乗ることは必然。この点はツバキが悪い。


「無人島、今から行くの?」


「うん。寂しい?」


「久し振りにゆっくり出来そう」


「ひどっ。僕が居てもゆっくりしてるじゃん」


「いつ襲われるか戦々恐々」


「無理矢理はしないよ! 誘導して言質取って抱くだけ!」


「正直で宜しいけど身の危険」


「あと3日以内に抱きます」


「犯行予告しないでよ」


「ダメとは言わないから脈あると思っとく」


「だ、……『転移』ちょっとムカついて来た」


ぱっと消えた龍刃は一旦自宅に戻ったのだろう。相変わらず、断りの言葉を聞かない傍若無人さ。




面白いって思っちゃうから、私ももう絆されてるんだろうなー。我ながら趣味が悪いと思う。


仕方ないよね。ずかずか入り込んで来て、居座って。始まりは『神ID』でも、今は“ツバキ(わたし)”に執着してるから。


本気のガチ勢からは逃げられないから、仕方ない。諦めた方が賢明。


こういう“諦め”も、ひとつの恋愛の形なのかな。




……そう考えてしまうのも、毒親から“愛”を与えられていなかったことによる弊害。今では何年も連絡も取れず会えてもいない親友から、当時「親殺す前に逃げろ」と言われた程にはツバキも『親』への愛は持ち合わせていない。あの時に逃げて英断だったと自負している。


それでも親友には恵まれたので友愛はきちんと理解している。なので、現時点で龍刃へ抱く感情は『友愛』でしかない。


でも、それでも。


「可愛いんだよね。奏向くん。必死で」


毒されてしまえば後は男と女でしかない訳で。











「こんにちは。猫のお嬢ちゃん」


「、……?」


「レイラよ。メルヴィンのとこの。この前も一緒に居たけど、こうやって顔を合わせるのは初めてね」


「……こんにちは」


今日も今日とてスライム討伐に勤しむツバキは、珍しくスキルカードがドロップせず不思議に思っていたら……これ。


なるほど。と、納得。


どうやら、レイラから観察されていたのでドロップ無しだったと。最強の監視システムかもしれない。“監視”と考えるとやめてほしい気もするが、今更なので文句は言わない。言ったところで意味もないから。


因みに。龍刃は現在無人島で、昨日に引き続きダンジョン災害で溢れた魔物を鏖殺中。C級ダンジョンなのでお遊び(・・・)を楽しんでいるらしい。プレイは人それぞれ。


「いきなりごめんなさいね。迷惑掛けた事、謝りたかったの。あ、今は私だけよ。メルヴィンは連れて来てないから安心して。罰として、S級ダンジョンにソロで放って来たから」


「それはとても危険なのでは」


「『完全回復』持ってるから死にはしないわ。この後、お茶でもどう?」


「えぇっと……」


「正直に言うと。スライム討伐専門は稀少だから、アメリカ(うち)へのスカウトも兼ねて」


「それは……龍刃くんが不機嫌になりそうなので、ちょっと無理そうです」


「本当に子供っぽいのね……龍の坊や。――本当にウチのリーダーがごめんなさい。龍の坊やにも謝りたいけど、チーム全員ブロックされちゃったから……」


「あー……はは。今のところ実害は出ていないので大丈夫です。私は気にしていません」


「本当に優し過ぎ」


「え」


「名前が出ちゃったんだから、こういう時は慰謝料請求しないと。徹底的に」


「メルヴィンさんが発端でも、名前が出た原因は他の人ですし」


「徹底的にやるの! 取り敢えず慰謝料10億で良い?」


「いくない。ガチ勢怖い」


「世界トプランがやらかしたから安い方よ」


「えぇ……、あ。慰謝料の代わりに、お金の使い方教えてください」


「お金?」


「『若返りポーション』の所為で使い切れなくて」


「……そう。そうね。私は装備と魔物災害に備えての家。アメリカの高ランカーで広告塔でもあるからブランド品や、クルーザーとか……別荘も買ったわね。他にも個人会社も立ち上げて、チーム全体ではハンター育成スクールを設立。寮も食事も消耗品も、娯楽品や娯楽施設も完備。良い成績を出した生徒には高性能の装備をプレゼントしたり。備品なんて戦闘訓練で1日で何十個も壊れて訓練場の補修や改築もしているから、年に何十億も使っているわ。私達のランクじゃないと赤字続きでしょうね。――まあ、龍の坊やなら問題無いでしょうけど」


「なるほど。母国の為の後進の育成、頑張っているんですね。凄いです。尊敬します」


「……」


「レイラさん?」


「……いい子過ぎて泣きそう」


「えぇ……」


うっ……と口元を覆うレイラは、恐らく『こんないい子があんな外道に捕まってしまって……』――そう嘆いているのだろう。ド正論である。


僅かに目に涙を滲ませているので、ツバキは思わず苦笑。皆が言う程外道じゃないのに。と。


暇過ぎて調べてみた『龍刃の外道言動まとめ』である程度は知っているが、寄生虫認定している毒親より全然マシで可愛いもの。そもそもツバキはその対応をされていない。龍刃は好きな人には甘えん坊になるので、今後見る機会も無い。


唯一。ツバキだけが、龍刃の外道対応の対象外と云うだけ。


その事実を知らないからこそ。加えて、ツバキが本当にのんびり屋さんの癒し枠だからこそ。


周りのハンター達は『ゆるねこ=龍刃に捕まった不憫な人間』と認識し、保護者と化してしまうのだろう。


「龍の坊やから嫌な事されたら、必ず本部と警察挟んで逃げなさいね。暴露本出しても良いのよ」


こうやって、今のレイラのように。


自覚は無いが謎のプチ炎上により“外道”との自認をさせられた(・・・・・)龍刃としては、そんな周りの思考は理解できるのでノリで言い返すだけ。面白いなと、特に気にしていない。どうでもいい。


心底から性根が腐っている。


「ご心配、ありがとうございます。尻に敷くので大丈夫ですよ。レイラさんの事も、謝罪してくれたのでブロック解除を考えるように頼んでみますね」


「っいいこ……!」


「あ、はは……」


日々生死の境で活動する、世界高ランカーのレイラ。魔物の死骸に囲まれる、殺伐とした日常。癒しに飢えている。


そもそも。世界ランク唯一の一桁ソロのあの(・・)龍刃が癒されるのなら、レイラが癒されないなんて有り得ない。このまま連れて帰りそうな勢い。


つまり、落ちた。


そもそもガチ勢故に『神ID』最推しのレイラ。『神ID=ゆるねこ』との確信があるので、とっくに落ちている。実際にこうやって言葉を交わして更に深く落ちた。


この沼からは一生抜け出せないのだろう。







「――ってな訳で。レイラさんのブロック解除、考えてくれる?」


「レイラなら別に良いよ。メルへの一時的な制裁に巻き込んだだけだし」


「巻き込んだ」


「非戦闘職のツバキを巻き込んだから、これくらいやらないと。倍返し」


「影響が多岐に渡って“倍”どころじゃないね」


「はい、ブロック解除した」


「ありがとう」


「メルや他の人達も解除してほしい?」


「他? 私が話したのはレイラさんだけだから、他の人達は奏向くんの判断で決めて良いと思うよ」


「たしかにー」


愉快そうに口角を上げる龍刃は、ここで「解除してほしい」と頼まれたら受け入れるつもりだった。今回の件での被害者は自分ではなく“ゆるねこ”だから。


しかしツバキはブロックの件を『ハンターで在る龍刃からの一時的な制裁』と知っているので、だったら高ランクハンターとして対応した方が良いんだろうなー。と考えている。


間違ってはいない。いないのだが……




利他的なんだよね、ツバキ。自分の事はどうでも良いとか思ってそう。家庭環境の影響かな。毒親だった、とか。


僕としては付け入り易いから有り難いけど。完全に手に入れたら自己愛を育ててあげるのが良さそうかな。うーん……


いや。やっぱ利他的なままに“奏向(ぼく)”に依存させた方が良いか。そうなったら僕が嬉しいし。


ツバキの事は僕が愛せば良いし。




やはり外道である。


「島のダンジョン災害、どんな感じ?」


「明後日には片付くよ。って事で、『頑張れ』の意味で抱かれてみない?」


「やだ」


「えー。抱かせてよー。体臭興奮する。すき」


「やだ」


「まあ宣言通り明後日の夜に抱くけど」


「とうとう通報する時が来たか」


「大丈夫。『龍刃』の名前とお金で揉み消す」


「だいじょばない。この子ほんっと頭やばいな」


「言ったじゃん。ツバキが僕を狂わせたんだよ」


「最初から狂っていた可能性」


「微レ存」


言いながらツバキの膝をクッションに、うつ伏せに寝そべる龍刃。この体勢が気に入ったらしい。


動けず手持ち無沙汰になったツバキが、暇を潰そうと偶に頭を撫でてくれるから。


「島のダンジョンC級だし、貯金と合わせても投資や生活費全然余裕。まあツバキの場合、どのダンジョンでも一生豪遊しても使い切れないのは確定なんだけど。改めて考えるとめっちゃウケるね」


「ウケない」


「いっそ豪邸建てちゃう?」


「魔物災害の避難先にするんだよね? 他の人に場所教えることになるけど、良いの?」


「良くなかった。手っ取り早いお金の使い道だと思ったんだけどなー」


「やっぱり、レイラさん達みたいにハンター育成学校作った方が良いのかな。『龍刃』の名義で」


「その、僕を利用する気満々なとこほんと好き」


「趣味悪い」


「強かな女の人って魅力的だよね」


「それは分かる。レイラさん、格好良かった」


「嫉妬しちゃうんだけど」


ツバキの膝の上にうつ伏せのまま。振り返り見上げて来る龍刃は拗ねた顔で、大人げないなと思ってしまう。


同時に、可愛いとも思ってしまうのでやはり絆されているらしい。それは顔への『かわいい』ではなく、言動自体が可愛い。と。


ツバキも大概趣味が悪い。


「あ。じゃあ今日、収穫無し?」


「レイラさんが帰ってからドロップしたよ。設置型の『結界』アイテム」


「買う」


「ん。はい」


もう「あげるのに」とは言わない。言ったところで勝手に送金されることは目に見えるので、労力の無駄だと諦めたのだろう。


頭に置かれたそれは、水切り石に最適な平たさの掌サイズ。それを手に取って見ると、細かい文字が無数に刻まれている。


文字盤自体がボタンとなっており、押してみると確かに結界が張られた。


「神様の基準で持ち運び用はある程度確保出来たから、設置型の確保に移った感じかな。持ち運び用と違う点は?」


「えぇっと。設置可能ポイントに設置したら場所固定されて、その後は誰も触れなくなるんだって。その都度必要な範囲に自動展開されるみたい」


「謎技術。避難所に襲撃があったら結界内群衆事故起こりそー。一応、地方に分散させるように政府に連絡しとこ。え、疎開じゃん。この時代に? ウケる」


「ウケない。神様は人間の都合なんて気にしないよ」


「おっ。悪口?」


「事実」


「仲良しだよね。嫉妬する」


「神様相手に」


「それだけ好きなんですぅー」


言いながらボードを操作する龍刃から送られて来た1000万エン。バグった金銭感覚により、この程度ではもう怖くない。


そんな、『“怖くない”と思ってしまう自分』がちょっと怖いような感覚にはなるが。


アイテム入手でご機嫌な龍刃は、そういえば……と口を開いた。


「知ってる? 各国、日本もだけど。国の運営を『イグドラシル・システム』に任せろーって団体、規模大きくなってるの」


「あー……『システム』の諸々の大改革で直ぐ現れた人達。善良な市民は安心出来て、超効率的な運営するだろうから個人的には大歓迎かな」


「よく陰謀論であるよね。『平和を掲げて世界を統一し支配しようとしている組織』――っての? この感じだと『システム』が支配しそう。各国のプラスの文化は残してほしいよね」


「負の遺産も残すべき」


「教訓って大事だもんねえ。それでも繰り返すのが人間だけど。っま、『システム』が支配するなら戦争したがる奴は“処理”されるし良いんじゃない?」


「善良じゃない“外道の龍刃”くんは不安になったり?」


「全然。僕が居なくなったらツバキが寂しくなっちゃうでしょ。神様も贔屓してくれるよ」


「凄い自信」


「だって毎日会ってるじゃん。居なくなったら寂しくなるの当たり前。ツバキ優しいから、絶対そうなるよなーって。狙った」


「こんなに明け透けなのに性格悪いの、ほんと不思議」


「んーふふっ。否定しないってことは“そう”なんでしょ。転がり込んで甘えまくった甲斐があった」


「外堀埋めとか?」


龍刃(ぼく)を意識するしかなくなったでしょ。上手くいって嬉しい」


「私、そこまでして手に入れたい程の人間じゃないのに」


「『神ID(最初)』の印象が強かったからかも。その後は、優しくてのんびり出来るとこに落ちたよね。僕の顔に騒がないとことか。レアキャラ。あと体臭」


「変態」


「意外と重要だよ、匂いって。本能?みたいな」


「これ、マーキング?」


「そうかも」


言うと同時に身体を起こした龍刃は、ツバキを抱き寄せ背中からソファに沈む。この方が効率的にマーキング出来る、と。そう判断して。


逃さないように両腕でのがっちりホールド。両脚にも長い脚を絡み付かせて。


独占欲の表れだろうか。日本トプランの本気の拘束。シンプルに怖い。


非戦闘職のツバキは逃げられる気がしないので早々に諦めた。


「そういえば、ユンランが欲しがってたよ。『結界』アイテム。持ち運びの方」


「そうなんだ。神様に出品して良いか確認しなきゃ。レイラさんも欲しいのかな」


「連絡先交換してないの?」


「しようって言われなかったから。そもそも『神ID』で即決価格で売るから、私からは訊けないよ」


「受け身だよね。一応、僕から訊いとこうか。何かメッセ届いてるっぽいし」


「今確認しても良いのに」


「むり。ツバキ愛でるのに忙しい」


「えぇ……」


「ドン引きしてるのも可愛い」


「性癖どうなってるの」


「だから。ツバキが僕を、」


「はいはい分かった分かった」


「ん、ふふっ」


可笑しいと笑う龍刃は、ぽんっ……ぽんっ……。ツバキの背中を柔らかく、一定のリズムで叩き始める。寝かし付けているのだろうか。


背中からの柔らかいリズムと、伝わってくる少し速い心音。とっくに慣れたその音にツバキの瞼は徐々に下り、数分もせずにすうすうと寝息を立て始めた。


警戒心も無く寝入った事実。大満足。


上機嫌で再びボードを開いた龍刃は、島のダンジョン災害処理で留守にしていた間の周辺ダンジョンに関する情報収集。新たに世界ランカー達が入国したらしい。『転移』に関してはどこでも出ると明言し、ツバキがオークションに大量出品したのに。


恐らく……日本はスキルカードのドロップ率が高いと予想したのだろう。完全に『神ID=ゆるねこ』だとバレている。


当然ながら場所によるドロップ率変動の事実は無い。単に神様からツバキに贈られた(・・・・)『イグドラシル・リング』による、LUC値ぶっ壊れによる結果なだけ。


その真実を知らないとはいえ、欲のままに動くガチ勢の行動力は面白い。




っていうか何で指輪なの。


いや一番手軽で紛失し難いってのは分かるけどさ。普通に嫉妬するんだけど。右手に嵌めてるだけマシだけど。でも嫉妬するじゃん、普通に。


よし。僕も指輪贈ろう。




強い決意。とんでもねえ金額の指輪を贈ったら虚無顔を披露してくれるだろうな、との期待。ツバキが宝石の価値を分からないのなら金額を伝えて虚無らせるだけ。好きな女性相手だとしても、この男は自分が愉しむことに全力を出している。


嫌な男である。


一通り情報も見終わり、ダンジョンの脅威度判定変更も無くいつも通りの日常を確認。してから、レイラへ『持ち運び用の結界アイテムいる?』とのメッセージを送信してみる。


直ぐに掛かって来た通信は呼び出しの時点で切り、『彼女が俺の上でぐっすり』と送れば『かわいそう』との返信。ウケる。


ツバキの『ガチ勢ホイホイ』に引っ掛かった事を察した。癒しは大切。


その“癒し”を独占出来る優越感。


ピースサインの絵文字だけを送り、仕事関係以外の通知をオフに。絡めていた両脚を外してから、アイテムボックスから出した毛布をツバキの上に掛け目を瞑った。


体臭も、体温も心地良い。至福のひととき。




閲覧ありがとうございます。

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