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10.スライム討伐専門だ!囲め!

「酷いことされてないか?」


「逃げる時は手ぇ貸すから頼れよ?」


「こんな外道から目ぇ付けられて可哀想にな……本当に大丈夫か?」


「慰めになるか分からないけど……これ食べて、元気出してね」


「その服、龍刃のチョイス? センスやっば」


「ほんっとお前等まじなんなの。喧嘩売ってるなら買うぞコラ」


「世論」


「はあ?」


ダンジョン対策本部。食堂。


「大丈夫だから」と龍刃に言われたツバキは、警戒しながらも龍刃に引き摺られての食堂利用中。久し振りのボリューム&栄養満点の低価格メニュー。庶民感覚が抜け切らないツバキとしては、このガヤガヤした空間も含めてとても落ち着く。


食べていてもわらわらと集まって来るハンター達は、心配したり逃走を促したり労ったり。大多数が真剣な面持ちなので、皆『スライム討伐専門のゆるねこ』を逃がしたくないのだろう。


贅沢を覚えたハンター達は稼ぎが少ないスライム討伐なんてやりたくない。稀少なスライム討伐専門は絶対に逃がさない。囲め。


「大丈夫ですよ。しっかり尻に敷いてます。デザート嬉しいです。ありがとうございます」


「なんっでこんないい子が外道の彼女なんだよっ! 俺も癒される彼女欲しい!!」


「いやお前等、目ぇ付いてる? 確かに優しくて癒されて可愛いけどよ。こいつ、俺に|『外道』プリントシャツ《これ》着せてんだけど」


「事実じゃん」


「皆知ってる」


「何がオカシイのか分からない件」


「よぉし、オモテ出ろ」


存分に龍刃を揶揄うハンター達。しかし、本心。全員が龍刃を『外道』と認識している。その評価は覆らない。


くすくすっ。可笑しいと笑うツバキは漸く。少しだけ警戒を緩め、よくお菓子や飲み物で労ってくれる顔馴染みの女性ハンターを見上げた。恐らく同年代なのに年下扱いをしてくる彼女のことは気に入っている。


「3日程お休みしちゃったのでいつもより討伐しましたが、スライムの数は増えてそうですか?」


「んー……そうね。『フラッド』発生には程遠いけど、新人ハンターからの情報によると倍になっているそうよ」


「新人ハンターには危険ですね。この後、もう少し討伐しておきます」


「いつもありがとう。本当に感謝してる」


「そんな。私は本当にのんびり活動したいので。危険な下層へ潜る皆さんのサポートになっているなら、嬉しいです」


「もう、ほんと……いい子過ぎて泣きそう。外道には勿体ない」


「はあ? 俺程ゆるねこに似合いの男居ねえだろ。顔も金も仕事もパーフェクトだろ」


「ほら」


「なにが」


心底分からない。と首を傾げる龍刃は、本当に分かっていない。自分こそツバキとお似合いだと信じて疑わない。


確かに、日本のトップランカー。更に、世界ランク唯一の一桁ソロは『神ID』とお似合いだろう。


間違ってはいないが……その天然物の性格の悪さにより、自称『ゆるねこの保護者』達はモンペとなる。彼等にとって『スライム討伐専門』とはそれ程に価値がある存在だから。


あと普通に癒される。のんびりしていて、ランクに興味が無く自分達のサポートが出来て嬉しいと平然と言ってのける。魔物討伐と云う殺伐とした日々を過ごす彼等の癒しのひとつ。囲め。


一通りの揶揄いも終わり、一息。


それでもまだ解散しないハンター達は、各々近くの席につき食事をしたり情報共有を始めたり。“保護者”としてこっそり護衛に徹していたり。


この場に居る十数人のガチ勢としては、例のスレで『神ID=ゆるねこ』との疑惑も抱いているから。それも、理由のひとつ。


スライムがスキルカードをドロップするとは思えないが、疑惑は無視出来ない。ガチ勢として。


「ごちそうさまでした」


しっかりと手を合わせて食事を終わらせるツバキには、いい子だなー。と全員が和んでしまう。


食休みにネットニュースでも読んでおくかとボードを開き、適当なニュースを流し見。隣の龍刃は堂々とボードを覗いている。プライバシーが無い。


「よっ。ゆるねこちゃん」


「、ユンランさん。こんにちは」


「お前何しれっとゆるねこの隣座ってんの。退けコラ」


「友達だっつってんだろ。面倒臭い奴だな」


「は? ブロックさせ、」


「モラハラ嫌い別れる」


「ごめんなさい別れない結婚して好き」


「むり」


「『むり』はなくね!?」


ぶふぉっ!!と至るところから聞こえた、食べ物や飲み物を噴き出した音。あの(・・)龍刃が謝罪したまでは耐えたが、即答の断りは耐えられなかった。テーブルが大変なことになっている。


必死に笑いを堪える者。ひぃひぃ笑う者。早々に腹筋が攣って苦しむ者。


日頃の行いによる結果である。


「君の前だとめちゃくちゃ気持ち悪いな、そいつ」


「おいコラまた無視すんぞ」


「家では甘えん坊なんですよ」


「ゆるねこは黙っとこーか!?」


「御愁傷様」


「――あ。龍刃くん、見て。『【速報】龍刃、彼女(仮)には甘えん坊』ってスレ立った」


「誰だよ態々スレ立てた奴出て来い俺のスレでやれよオモテ出ろ」


「ほんとだ。レス早っ。あ、リアコ湧いたし軒並みペナルティ受けてる。ゆるねこちゃん、リアコ大勢の龍刃で本当に大丈夫? 危険感じたらいつでも連絡して良いからな」


「だから俺の彼女口説くなよ。俺が重複ドロした『転移』やったっつの」


スライム専門がなぜ『転移』を取得出来たのか。そう疑問に思っていた者達は、この言葉で納得したらしい。


『神ID=ゆるねこ』と疑っている者達は、逆だろ……と思っているが、龍刃が怖いので決して口にはしない。ソロで日本トプラン、怖い。


「で。何の用」


「用というか。お前、色んな会社に投資してるよな。魔物肉やダンジョン内植物の魔力抜く技術、確立出来そうな会社あるか?」


「あー、それな。今のとこどこも無理。つーか、中国としては食料問題解決すんの良いのか? 公式ではインドに人口抜かされてるし、他国に栄養抜群で屈強な人間増えたら面白くねえんじゃねーの」


「どうせ魔物災害で減るだろ。どこの国も」


「それはそう。前から思ってたけど、お前中国人なのに母国に対してシビアだよな。何で? 反日教育受けてただろ」


「何で、って。フェイロンもそうだろ。人間としてまともな感性持ってるなら、倫理破綻した差別思想に染まらねえよ」


「中国人も変わって来たのか」


「極一部の話な」


「正直じゃん。今お前の好感度うなぎ登りだぞ。良かったな」


「スタート地点低過ぎね? 別に良いけど」


会話しながら食事をするユンランは、それでも自分が喋る時は口の中に食べ物を残さない。もし残っていても手で口を隠す。硬すぎて食べられなかった軟骨も、紙ナプキンに包みトレーの上に。米粒のひとつも残さず全て完食。


確かに昨今の中国は食品ロスを推進し食べ残しを減らしているが、恐らくこれはユンランの自発的な行動だろう。『郷に入っては郷に従え』に倣って。


ガチ勢として、ガチ勢からの恨みを買わない為にも。


日本人は“食”が絡むと途端にヘイトを向けたり恨みを抱き易いから。“食”への執着が異常。食いしん坊で、なにより。


「魔改造好きな日本でも無理か。魔力抜き」


「デバフ掛けても意味無かったから、そもそも無理なんだろ」


「魔物災害起きた時の食料不足、避けられなさそうだな。数年分の備蓄の用意しとかないと」


「アイテムボックス大勝利」


「くっそ性格悪いな。相変わらず。――そうだ。ゆるねこちゃん、保管料払うからアイテムボックス間借りさせてくんね?」


「い、」


「巫山戯んな俺の彼女利用すんじゃねえよ」


「ダメだよ、龍刃くん。喧嘩しないの」


「だってこいつが!!」


「じゃあ龍刃くんが保管してあげれば?」


「ぜってー嫌」


「不仲解消したのに。――って云うか。ゲームの『イグドラシル』でそういうスキル無かったの? 魔力吸収?みたいな」


「……あったな」


「あるんだ」


「職業『魔法使い』限定のスキル。スキルカードか、職業進化で取得出来る。……っあー、くそ。何で忘れてたんだろ。アホ過ぎてガチ勢としてくっそ凹む」


「俺も今凹んでる……」


「ドンマイだね。ふたりとも『魔法使い』じゃない上に、職業進化の条件がゲームとは違って不明になったから希望見出すの早々に諦めちゃったとか?」


「かも。直ぐにアクティブじゃない魔法使い集めねえと。投資先とも会議して、それから魔物肉と植物回収か。その前に職業進化の条件……いや『神ID』から何か落札してメッセで『魔力吸収』リクエストする方が早いか。吸収に要する時間の差も調査したいし、それは取り敢えずボアとブルと……高ランクはミノタウルスとドラゴンの差知りたいな。――ゆるねこ。俺今から会社行くけど、午後はひとりで行けっか?」


「うん。大丈夫だよ。行ってらっしゃい」


「おう。夜、家行くわ」


「だ、……行ったし」


断りの言葉を聞き終える前に、さっさと『転移』を発動させた龍刃。聞き終えていても来ただろう。彼はそういう人間だ。


突然の龍刃の“商人らしい”行動。しんっ……と静まり返っていた食堂は、しかし数秒後にはいつも通りの賑やかさに。


話題は勿論「やっと魔物肉食えるなー」一色。味の予想で盛り上がり始め、やっぱ日本人の食欲異常だな……と。こっそりと改めて納得するユンラン。


日本人は“食”に貪欲。


「午後、ついて行こうか?」


「大丈夫だよ。心配してくれてありがとう、ユンランさん」


「そうか。龍刃リアコに襲われたらトべよ?」


「勿論。ユンランさんも、早く『転移』取得出来ると良いね」


「『神ID』が出すの待っとく」


「落札出来ますように」


「どーも」


ユンランが知っている(・・・・・)ことを知らないツバキは、それでも今日は『転移』を出品しようと決める。とんでもねえ落札額になるのは確信しているので、分散させる為に出品は大量に。


それでもとんでもねえ金額になるだろう未来は……考えないことにした。“神様”が「やれ」と伝えて来たから。


恐らく。午後のスライム討伐では『転移』と、序でに『アイテムボックス』も大量ドロップするのだろう。


“神様”の気遣いが理不尽過ぎて泣きたい。











【五体】神ID37枚目【投地】


525:

転移とアイテムボックス大量出品キター!!


526:

25枚ずつ出品とか正気かよ!!討伐頑張ってくれたんだな神IDありがとう!!


527:

ガチ勢見てるか!?おいガチ勢!!息してるか!?


528:

今一緒にいるガチ勢「ありがとうございますありがとうございますありがとうございますありがry」


529:

おもろすぎるんよ


530:

今さ、ダンジョンから出て来たんだけどさ

ガチ勢らしき男が歩道で蹲って無心でボード操作してて仲間から引きずられてった

何事かと思ったらそういうことか

尚、見間違いでないなら荷物&補給係大勢の青メッシュ入った長身外国人


531:

ロシアのオレーグwww来てたんかwww


532:

ワンマンチームの激強リーダーなのに相変わらず可愛いことしてんのな。和む


533:

オレーグ行動が可愛くて推せる

転移落札出来ると良いね


534:

転移取得しても荷物係大勢だから意味なくね?

転移って移動できるの発動者だけだろ


535:

ガチ勢にとってそこは重要じゃない件


536:

普通に回避の保険か、ソロ活動にシフトしてチーム育成に力入れるんだろ。とマジレス。


537:

なら龍刃が世界ランク一桁で唯一ソロじゃなくなるってことか


538:

龍刃ガチ勢としては唯一じゃなくなるの残念悔しい


539:

ここは神IDのスレな

それ以上はオレーグスレか龍刃スレ行こうな


540:

サーセン

そうこうしてる内にどっちも最高額1億突破


541:

神ID、日々の暮らしどうしてんのか気になる

豪遊しないと使い切れないだろ


542:

訊いてみれば?


543:

絶対ガチ勢達に特定されて肩身狭くなるから無理


544:

疑惑出たスレ、いつの間にか消えてたもんな

※コミュニティに削除人はいない


545:

色々書いたらここも消えるし最悪処理されそうだからやめといた方が良いと思うんだあ


546:

さて。

オークションの話しようかおまえら(震え声)


547:

やっぱこのスキルカード大量出品、魔物災害に向けてなんだろうな…

龍刃は期待できないから他のガチ勢、日本を頼む…


548:

龍刃は仕方ない。

一度裏切られて死にかけたから、契約を介さない相手には人間不信気味。

リアコのやらかしもあって他人への情も薄くなってる。


549:

一時期ストーカーえぐかったもんな…

だからこそ彼女(仮)に言われてユンランとの不仲解消したの異常

おっと、これ以上は誰か来そうだから移動な


550:

そーそー

ここは『神ID』のスレだから彼女(仮)の話は逃げてスレか甘えん坊スレでどうぞ


551:

こちら、オーストラリアのキャンベラ

ガチ勢が「1000億ならイケる…1000億ならイケる…1000億ならイケる…」ってヨダレ垂らして目が虚ろ

現場からは以上です


552:

ガチ勢を狂わせる神IDまじすこ。

やっと推しができた嬉しい。


553:

今まで推しがいなかったことにびっくり


554:

神ID推す人はガチ勢

つまり552はガチ勢


555:

>>554

残念ながらゆるふわ勢。

ガチ勢、ガチ過ぎてちょっと怖くてな。

龍刃の顔見たらアイドル系ハンターも今ひとつでな。

その点神IDは顔出しせず怖いガチ勢狂わせてるから面白くて好き。推せる。


556:

これは出所不明の噂なんだけど、神IDってすっぴん幼くて化粧したら美人らしいよ

で…出所不明の噂だから詳しくは知らないけどね(震え声)


557:

なんか俺も、神IDって大金入ってくるの怖くて泣いちゃうって聞いたことあるような…

で…出所不明な噂だよ…?(震え声)


556:

いや幼女か???


557:

合法ロリですねわかります


558:

閃いた


559:

>>558通報(龍刃に)


560:

>>559ネタにマジレスすんなよ(ね…ネタだよ…?)


561:

惜しい奴を亡くした


562:

速報www世界ランク4位www生配信で感謝の舞www


563:

踊るの映画の中だけにしてもろて


564:

キレ良すぎて腹筋痛いからほんとやめて


565:

ねえ待ってwwwユンランが生配信で神ID最推し公言してリアコと腐女子発狂してんだけどwww


567:

ユンラン、龍刃と不仲発覚以来の大炎上じゃん!おめ!


568:

レイラが神IDの祭壇作ってんだけど正気か???


569:

自作の『神ID』って書いたラミカ並べてるのアホすぎて可愛い


570:

そっと居る黒猫のぬいぐるみが良い味出してるな


571:

今日の腹筋スレはここかな


572:

ガチ勢狂いまくってんの大草原不可避


573:

狂ってんのガチ勢だけじゃないんだよなー


574:

どゆこと


575:

ハリウッド公式オークションで世界一嫌われてるヒール役の映画キャラブロマイド付きチャリティー品大量に売れ残ってたろ?

神IDがそれ全部落札してチャリティー品祭壇写真をヘッダー&ブロマイド痛バをアイコンにしてからヒール役の人気が世界中のガチ勢から爆上がり

そんでガチ勢が推してるからってハンター達も推し始めてキャラ考察布教したら、ハンターに憧れてる一般人や特に子供達からの人気も急上昇

結果、そのヒール役が神ID激推し公言して公式チャンネルでしょっちゅう神ID愛語って号泣しながら感謝してる姿がなんか可愛いってんで本人の人気も急上昇


576:

把握

神IDの影響力えげつねえな


577:

あの流れは笑った

まあそのヒール役も世界中からのアンチに耐えられなくて薬に手を出す一歩手前だったらしいし、そりゃ号泣感謝するよな


578:

でもそれで神ID日本人説出てるの詰めが甘いというか…


579:

あー…日本人、ヒール役推したがるからな…


580:

ドジっ子合法ロリかな???


581:

閃きたいけどやめとく


582:

YESロリータNOタッチな


583:

合法でどこの誰だか分からない筈なのにNOタッチ推奨が恐ろしい件


584:

>>583しーっ!


585:

神ID、さらっと人ひとりの人生救ってんのかっこよすぎ推した


586:

な?神ID最高だろ?推すしかないだろ?

神ID!もっとガチ勢狂わせてくれ!











「君が僕を狂わせたんだ」


「え。なに、いきなり。こわっ」


いつも通り。連絡も無しに家に来た龍刃はツバキの膝をクッションに、ソファーに寝そべり我が物顔。この身勝手さは今更のことだからと彼女はもう何も言わない。


脚が痺れた時は言えば退けるので、特に気にもしない。


「んー。『神IDがガチ勢狂わせてる』って草生やしてるスレ見てたから、つい」


「狂ってるんだ? ガチ勢」


「オレーグが面白いことやったらしくてね。見たかった」


「おれーぐ」


「ロシアのネクロマンサー。どっちも落札頑張ってるんじゃないかな」


「あー……落札額分散させたくて大量出品したけど、大丈夫だったかな」


「ガチ勢は大量出品嬉しいから大丈夫。確かに分散されてるね。『転移』は1枚800億前後で済みそう」


「なにも済んでない」


「桁が違うって言ったでしょ。単発で出してたら、きっと1400億は行ってたよ」


「ガチ勢……ほんと、こわい……」


「あはは! これからも同じスキル大量出品しなよ。分散されるから」


「私が死んだ時の遺産、どうするか悩む。国にはやらない」


「僕は会社と、全世界のハンター協会に寄付って遺言書作って『システム』でも設定してるよ。ツバキもそれで良いんじゃない? 子供達にこんな大金遺したら、真っ当な人生歩めないだろうし」


「なぜか子供がいる前提」


「僕との子供っ」


「ハート付けないで腹立つ」


「似合うでしょ」


可笑しそうに笑いながらボードを操作する龍刃は、ガチ勢コミュを確認。そこに書かれている文字列に、にんまり。


「情報漏洩した人見付かったって。ガチ勢の彼女の盗み見。当然、破局」


「そうなんだ。良かったね」


「ねー。元凶のメルのレスも消えてるし、これは神様が対処したのかな」


「メルヴィンさん、ペナルティ受けてない?」


「それやると確定させちゃうから。神様もちゃんと考えてるんだよ」


「無茶振りばかりな件」


「好かれてるねー」


「謎解釈なんだよなあ」


けらけらと笑う龍刃は『おつかれ。二度目は無い』と書き込み、ボードを消して起き上がる。


かと思えばツバキを引き寄せ、自分の上に。龍刃専用抱き枕。非売品。


「あー……ほんと、好き。体臭」


「嗅がないでよ」


「ツバキも嗅いで良いよ」


「それはいい」


「なんで」


「変な気分になりそうだから」


「だから嗅いでほしいの!」


「そろそろ寝るね。おやすみ」


言うが早いか龍刃から降りたツバキは、「えーんっ」と棒読み嘘泣きをする龍刃に笑いながら寝室へ向かう。今日は“抱き枕”を享受する気分ではないらしい。いつももやめてほしいが、それを言ったところで龍刃が聞き入れるとは思わない。強行突破は目に見える。


龍刃が入り浸るようになってから設置した寝室の鍵はしっかりと掛けている。その費用は龍刃に請求した。可笑しいと笑いながら代金を送ってきたので、ちょっと引いてしまったことは記憶に新しい。


日本トプランで世界ランク唯一のソロで在る龍刃。そんな存在には、人類が作った鍵なんて通用しない事は理解している。龍刃もそう思って笑ったのだろう。しかし、無いよりはマシ。意思表示にもなる。


この鍵もいつかは強行突破されると確信しているのだが……今は考えないことにした。




閲覧ありがとうございます。

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