1-3「業務概要と依頼」
なにかしら強い主張をされた気がするが、それはさておき
生活サポートスタッフはユーザー2名に対して3名だからだいぶ優遇された気がするけど、よ~く見ると3人とも直立したままで呼吸もしてなくない??
『ここは本来どんな形であっても人が来るべきところではないんだよねぇ
君たちはこちらがお願いしてきてもらってるし事情も伝えないとだし特別に来てもらってるけどさぁ、
普通の人間が何もせず来たらただじゃすまないところなんだよぉ』
さらっと物騒なことを今更言われてもねぇ
『だからこちらの世界の魂を持ってる人には休止もらってるんだよねぇ
ちゃぁんと君らのサポートってこととかは伝わってるはずだから大丈夫ぅ』
本当かねぇ?
「ところで」
思考を読まれてるけど念押しで問うてみる
「事前におねえさんから言われて承諾はしたんだけど、こっちでやることとか福利厚生とか雇用条件とか勤務形態とかもう一度確認させてほしい
ちゃんと書面として齟齬がないようにもしたいし」
そう、対顧客とか発注先相手だと言った言わないでトラブルになることもあるから契約書は必須
口頭での約束なんてトラブルの元どころじゃないし
「そうですよね、私も衣食住含め約束は履行してもらわないと困ります!」
後輩は腕組みして強い口調で主張した
食べるのが大好きだろうし休みの日にはそういう楽しみもないとね
『う~ん』
JCは目をつぶってうなり始める
『実はねぇ』
目を開けてこっちを見たと思ったら何かしら・・・目が泳いでる??
『こっちの世界はあまりにも魔法や魔術でなんでもやっちゃって、手先を使って何か作るとか全く発達してないんだよねぇ
だ~か~ら~』
手を後ろに組みなおして近づいてきた
『条件提示とか契約するにも紙すらないんだよぉ
だから君たちにはモノを作ることとかさっきの書面作るとか、そういうのからなにから教えて広めてほしいんだよねぇ』
後輩と顔を見合わせてしばし
JCに向き直って思わず言ったね
「「そこから??」」
気が合うねぇ、後輩
『だってさぁ、こっちは生まれてすぐ魔法でなんでもできちゃうし、ある程度複雑なものでも魔術で対処できたりするんだよぉ?
家作ったりだって魔法と魔術つかうし、場合によっては契約魔術で条件縛るけど契約時に嘘を混ぜても他の人にはわかる術がほぼないんだよねぇ
そういういろんなことでトラブルが起きるし、そもそも家を作るのだって細かい仕上げとか全くできないとかいろんな弊害があるんだよぉ』
なんかだんだんめんどくさそうな話になってきてないか?
『それにさぁ』
JCが続ける
『食べ物に至っては魔法で火が熾せるからって獲物の肉を焼くだけだよぉ?
君たちの世界で「料理」っていう概念が壊滅的に無くってさぁ、料理する道具もないんだよぉ』
だんだんJCの声が涙声っぽくなってきたのは気のせいか?
『君ら二人、甘いものツアーとかやって仲良くしてるらしいけどさぁ、こっちには料理ですら無くって、煮るとか蒸すとか炒めるとか燻すとか日干しして保存食作るとかすらやらないんだよぉ
おまけに味付けもないからただ焼いた肉だよ、肉!』
それ、野生動物とほとんど変わらなくない?
もしかして服とか生活道具もかなり原始的?
『そうだよぉ
包丁なんかそっちだと黒曜石とかで作ってるのと変わらないし、服だって魔術使って作ったごわごわした布を結んでるくらいだからねぇ』
縄文時代か!
「飲料水とかお風呂とかも、もしかして・・・」
後輩が恐ろしいものを見るような目をしながら訝し気な口調でJCに聞いてみる
『生水飲んでるねぇ
煮沸なんて概念ないからしょっちゅう中るけど魔法で対処してるねぇ
風呂どころか水浴びも頻度は低いしねぇ
そもそも真水自体、自然にはほとんどない世界なんだよぉ
だから水を出すとか火をつけるとか、そういうの全て魔法頼りになっちゃってるんだよぉ』
「絵にかいたような異世界モノ・・・」
天を仰ぐ後輩
でもその天もどこまであるかわからない高さで全部白一色
「そんなレベルだと全部確認してたらきりがなさそうだね」
仕方ない、そろそろ終わりを切り出す
「サポートの3人で対処できないとか、回答がでないものはあなたに直接聞けるようにできないかな?
っていうか、管理者であるあなたをなんと呼べばいいの?
やっぱり神様とか?」
『君が思ってるJCってのでもいいよぉ』
JCが言うと後輩が反応した
「なんでJCなんです?」
肩を竦めて
「だってJCに見えたんだもの、最初に」
悪びれず返す
『若くて可愛く見えたんだよねぇ?』
うんうん、そういうことです、はい
なんか横にいる後輩の視線が痛いんですけど?
『だからさ』
JCが身体を向きなおす
『君らがJCなり神様なり、ボクのことを思い描いて強く念じてくれれば届くかもねぇ
ただ届いても返事しないかもだからさぁ、あんまり当てにしないでくれよぉ?』
伝書鳩じゃないんだからちゃんとしてちょうだいよ!
『一応ねぇ、3人はこっちの【世界】ではありったけの知識と知恵と能力を持ってるからさぁ、それで創意工夫してねぇ』
挨拶すらまだなんだけど?
『ということで君らに育ててもらう【世界】に送るねぇ
【世界】には名前がないからさぁ、そのうち君らが考えておくれよぉ』
また手をかざすと少しずつ掌の前に暖かい光が球状に広がっている
それが徐々に大きくなっている中、JCが続けざまに
『期間は3年だよぉ
ちゃんと住まいも用意したからさぁ、そこを拠点にして世界に変化を与えてほしいんだよぉ
あとは体が資本だからさぁ、ちゃんと休みは取ってねぇ
仕事さえしてくれれば勤務形態も勤務時間も休日も好きに取ってもらっていいよぉ
衣食住はボクの用意した拠点を使ってくれていれば大丈夫だしねぇ
でも、それでも本当に困ったらちゃんとボクを呼ぶんだよぉ』
さっき返事しないかもって言ってたじゃん!!
『そうそう、君らの世界で食べた【けーきせっと】ってのは絶対に普及させてほしいんだよぉ
これだけはお願いだからぁ』
どんなケーキで飲み物はなんだよ!!
セットつーてもいろんなのがあるっての!
言ったそばから書面どころか仕様もないまま仕事を追加発注されたわけで
そうしてまたまた光に包まれた
JCは言うだけ言って白い世界から追い出しやがった
2回目とはいえやっぱり目が眩む
そして少しの間、記憶が途切れた




