12-4「ご褒美はきなこ棒」
確かにゆっくり入ってて、とは言った
文字通りゆっくり入っていたのだろうが、風呂に入る習慣がないニールは、上り時を全くわかってなかった
外でマイカをどうするかやってる間もずっと湯船に入ったままですっかりのぼせてしまっていた
引っ張り出して洗い場の床に横にする
脱衣所からタオルを持ってきて水で冷やしておでこに載せる
人と同じなら脇と首筋も冷やすか
「あれ?私はどうなってるのでしょうか?」
気が付いた
「長風呂しすぎてのぼせたんだよ」
「ナガブロ?ノボセル?」
説明をする
どうもドラゴンは強い生物なだけあって痛みはないわけではないが、その閾値が極端に高いレベルにあるようだ
熱さについても焼け石が当たれば痛い、くらいで火傷なにそれ?だとか
自己治癒能力も高い分、人が大やけどしたと緊急搬送されるレベルでも素知らぬ顔で居られるらしい
流石に溶けた岩を浴びるとは大事になるらしいが、痛みではない入浴での血行促進はただただドラゴンを茹で上げただけだった
・・・カエルでこういう実験の話を見たことがあるな
辛いもの以外の弱点、握っておいて損はない
そういえば山はあるんだが、火山活動とか地震とか、プレートテクトニクスとかはあるのだろうか?
あれば温泉が見つかるかもしれない
壁の向こうからは阿部ちゃんが注意する声が聞こえる
「お風呂で泳いではいけません!」
「シャンプーの泡はたべるものじゃありません!!」
「飛んで男湯をのぞこうとしない!!!」
最後はシャールカーニに、だな
引率お疲れさまだから後で労ってあげよう
風呂を上がりさっぱりした状態で休憩を取る
水出し緑茶をニールに出す
ひと啜りして
「紅茶とも違うものですな
しかも冷たいからとても飲みやすいですな」
気に入ってくれたようだ
ゆっくりしていると女性陣が上がってきた
最後尾にぐったりした阿部ちゃんが見える
アウラムは装甲車に向かい、マイカのリードを車両の牽引フックに固定した後、椅子を持って行って座らせた
「なにを飲んでいるのじゃ?」
シャールカーニが興味津々で駆け寄ってきた
「水出し緑茶、って言うんだよ
どうぞ」
グラスを差し出す
「綺麗な入れ物じゃのぅ」
初めてのグラスを物珍しそうに眺めている
口を付けて第一声
「つ、冷たいのじゃーーーー」
「マイカにも持って行ってやって」
「阿部ちゃん、おつかれさん
声が聞こえてたけど大変だったね」
グラスを置いたテーブルに突っ伏したままの彼女に声をかける
「そうですよー
みんな幼稚園児かと思うくらいでしたもの」
あれ?
「アウラムは3回目のはずだけど?」
ぶんぶんと首を振り
「泳いでたのはアウラムですよ
てか、海とか川ないのに何で泳げたんでしょうかね?彼女」
確かに
可哀そうなので装甲車の保冷庫からおやつを持ってきてお出しする
「きなこ棒じゃないですか!
それも皿いっぱい!
あったんですか?」
キラキラした目で聞いてくる
大好きだもんね、こういうシンプルなおやつ
「いや、作った」
「作ったー??」
本当に驚いてる
「JC女神はさ、食材はいっぱい置いてくれてるけど完成品は殆どないんだよ
野菜以外はほぼ何かしら手を加える必要あるけどね」
「ふんふん」
あれ?君喰い始めてるね?
「乾燥大豆があったからグラインダー作って粗いきな粉にして、更に製粉機でさらさらにした
そこに蜂蜜加えてひたすら練って形を整えて余ったきな粉をかけて出来たのがこれ
少し柔らかかったから保冷庫で少し温度下げておいたんだ」
「へー、普通にきなこ棒ですよ、これ」
「知識と経験があれば、昔ながらのもち麦とか大麦で糖化させた水飴作ってまぜると、もう少し甘さも軽くて蜂蜜だけより柔らかくて食感よくなると思うけどね
流石に水飴も調味料としてはなかったんだよ
砂糖と水でも似たものは作れなくはないけど、やっぱこういうのって風味も大事だからね
次、作る時には考えておくよ」
「凄い、改良品も期待できそうですね!」
にこにこしながら食べてる
そういうのを見てると作り甲斐あるよね
「なんじゃなんじゃ、我も食べてみたいのじゃが?」
寄ってくる
「これは阿部ちゃんが君たちのお風呂の世話をしたご褒美なの」
「ぶーなのじゃ」
「えー、食べられないんですわ?」
「香ばしい匂いがして美味しそうです・・・」
数個残った皿を見て残念そうに見る女の子3人
「食べてもいいですよ、その代わり一人1個です」
阿部ちゃんがおすそ分けしてる
ニールとマイカにも
まあ、マイカは食べるときに吸い込んでしまったきな粉でむせて文句言ってたけどね
「なんじゃこれ!甘くて旨いのじゃ!」
「これがいつもの豆?嘘ですわ!違うもので出来てるはずですわ」
「豆なんか青臭いだけで我慢して食べてるのに、これは凄く美味しいです!」
みんなにも高評価だ
モノを作らないのだからおやつなどもないんだろうからね
気持ちはわかる
「ふむ、これが豆からできているとは信じられませんな
神の食べ物でしょうか」
ニールは口の周りをきな粉だらけにしてなにかのたまってる
「も、もっと食べたいのじゃ」
「私ももう一つ頂きたいです」
「もっと欲しいですわ!」
懇願する3人だが、皿の上にはなにもなかった
「ごちそうさまでした」
無情にも阿部ちゃんがそう言って手を合わせた
結果
何か役に立ったらご褒美としてきなこ棒を1つ貰える、というシステムを確約させられた
言うこと聞いた時のワンコか?君たち




