10-7「ドラゴンとの〈契約〉」
おっさん執事を呼ぶ
「悪いが彼女の治療は〈契約〉と【命名】が終わってからにさせて貰いたい
負傷したままだが〈契約〉は可能か?」
おっさんがドラゴン娘を見遣る
「我はなんとかする
負けた以上従うしかあるまい」
頷いて
「それでは始めましょう
お手数ですがカホル様とヴェルーリア様、こちらへおいでいただけますでしょうか?」
二人が近づいてくるのを待ち、おっさん執事が何かしら唱え始めた
ドラゴン娘も同調して唱え始めると詠唱している2人とカホル、ヴェルーリアの足元に魔法陣が現れる
二人の詠唱が口から出ると文字?のように見え始め、それが繋がりロープのようになる
それが徐々にドラゴン二人それぞれの体を繭のように覆い、数分経つとすっかり繭のように包まれてしまう
少しずつ小さくなり、人型になり光を発し始めた
その光が収まるとそこにはおっさんとドラゴン娘
全身にうっすらと文字が見え、それが徐々に消えていった
カホル、ヴェルーリアにはなにも変化は見えない
「これで〈契約〉は完了しました
我ら二人はカホル様、ヴェルーリア様と〈契約〉をさせていただき、終生お仕えすることを女神様に誓わせていただきました
もし〈契約〉を違えた時には女神様への誓約通り大豚への生まれ変わりを罰として受け入れます」
「大豚じゃと???」
未だ横たわっているドラゴン娘が声を荒げる
「今回の発端はお前が大豚を襲ったことから始まっているのだ
罰として一番屈辱的なのはその大豚に転生させられることではないか
そうでもして心を縛らなければお前は心根を入れ替えることはないだろう」
おっさんがしみじみと、しかし強い口調で諭す
「安心しろ、大豚に生まれ変わる時は私も付き合ってやる」
その言葉を聞いたドラゴン娘は・・・静かに泣き始めた
自分の浅薄な言動や行動がおっさんをここまで覚悟させてしまったことへの後悔なのだろうか
「ちょっとかわいそうですかね」
阿部ちゃんが寄ってきて小声で言う
「まあ、おっさんも思うところがあったんだと思うよ
むしろ叔父としての腹の決め方と責任の取り方は天晴すぎる」
「確かに、会社でも政治でもいざとなると逃げる無責任なのが多いですからね」
腕を組んでしみじみ頷く
確かに君の上司も一人、やらかしてそのまま逃げたもんね
「さて、感傷に浸るのも結構だけど【命名】をさっさとして彼女を治療しないと」
仕切り直す
ところで【命名】はカホルとヴェルーリアで出来るのだろうか?
『【命名】は一種の〈契約〉に当たります
魔素消費が膨大なのと、そもそも【命名】が魔術ではないので二人には難しいでしょう
名前を考えて貰って【命名】はご主人様かアヤノちゃんさんに行ってもらうことをお勧めします』
わかりました
「名前を決めるのは二人に任せたいが、どうだろうか?」
二人が首を振る
「名前、というのを知ったのがつい先日ですのでどういうのが良いのかわかりかねます」
「私もつい先ほど名前を付けていただいたので全くわかっていません」
そうだ、名前のレパートリー自体ないのか
「先輩が候補考えてくれますよ、ね?」
可愛らしくこっちを振り返る阿部ちゃんだが、無茶振りだよ
「この数日で何人分名前考えてると思う?」
少し考えるフリをしながら
「先輩なら大丈夫ですよ!」
背中をバンバン叩かれる
逆パワハラでは?
「じゃあ、君も出しなさいよ、命名候補
二人分だからね?」
「あ」
二人いるのを失念してたのか
まずはドラゴン娘の方が先だよな
さっさと命名して治療に入らないとかわいそうだろうし
そう思いながら未だ血が止まりきってない穴だらけの彼女を観察する
伏せてる背中にはドラゴン形態の形状のまま小さい羽根があり、体のところどころに鱗らしきものが見える、場所的には関節部に多いか
見目はどちらかといえば幼児体形に近いくらいであんまりメリハリのない体つきをしている
背丈もアウラムと同じくらいに見えたから150前後ってところか?
髪は後で1か所、オフセットして結っている黒のロングヘアー
いや、よく見るとかなり暗い緑色のようだ
目も同じく緑で瞳孔は縦長の黄色か
耳の上先が尖っているくらいで服を着ていたら一目で人化したドラゴンとはわからないだろう
顔立ちは・・・中学生女子か?
可愛いのだろうがツリ目で睨んできているのがマイナスだな
あれだ
不良グループに一人だけいる女子生徒みたいだ
わき腹に鋭い痛みが走った
肘鉄を後輩が入れて来ていた
「先輩?じっくりねっとり見つめてらっしゃいますが、そんなに女性の裸が見たかったんですか?」
「そりゃあ、可愛くて優しい女の子の裸ならいつまでも見ていられるけどね」
痛む横っ腹を摩りながら
「【命名】するのにあったばかりで特徴見る以外決め手がないのだから、観察する以外ないよね」
「真面目にやってたんですね
てっきり下心丸出しで食いついてたものだとばかり」
とぼけ顔でそう返してくる
こいつこそ、『解らせ』ないとだめなんじゃないか?
浮かんだ名前を次々と声に出してみる
むしろ適当でも出て来てるだけ自分を褒めたいくらい
3人に伝えると
「マオってのも可愛いですけど、シャールカーニって音も可愛いですね
シャールカーニで愛称ルカちゃん、よくないですか?」
「なんとなくですが可愛い響きには聞こえますね」
「私も良いと思います」
はい、決定ですね
ドラゴン娘とおっさんのところに向かい
「君の【名前】は今からシャールカーニ、普段呼ぶときはルカ、だ」
「シャ、シャールカーニ?ルカ?」
そう言って気を失・・・なわずに体が光りはじめた
今までにないぞ、この反応




