1-1「あっという間に知らない世界」
光が徐々に収まってくると、今度もまた白い世界
違うのはさっきまでのおねえさんではなく、私より若いどころか中学生くらいの女の子が居た
それもソファーに寝転がって
『すー、すー、すー』
・・・もしかして寝てる??
規則正しい呼吸音がして全く動く気配はない
ところで後輩は?
廻りを見渡そうとしたら今度は腕を引っ張られた
良かった、実体は有るみたい
おねえさんもおねえさんだよな、多分転移させられたんだろうけどいちいち真っ白なところに出れば
『死後の世界は~』
って、大昔よくあったっていう怪奇番組のいわゆるあの世、って奴みたいでちょっとドキドキしたよ
後輩と顔を見合わせる
「起こしたほうがいいかな?」
「彼女が管理者ですよね?多分
起こして確認しないと仕事にならないんじゃ?」
少々思案してから、後輩に
「えっと、俺が起こすと事案になりかねないからお願いできる?」
と頼む
アラサーの男がJCの寝込みに声掛けってのは絵面的にあまりよろしくなさそうだからね
彼女は優しく肩を揺すってみた
「すみません、起きていただけますか?」
・・・・・起きないね
「あのー、起きてください」
・・・・・起きない
5回繰り返してもピクリともしないのでしびれを切らしたのか
「おーきーてーくーだーさーーーーーーい!!!」
この子、こんなに声張れるんだね
流石にJC起きた
長ぁいプラチナの髪が肩から滑り落ちる様はすっごく綺麗
ただ、その顔はなんか不貞腐れてる
『誰だい、君たちは?なんで起こしたんだいぃ?』
声まで不機嫌
かわいい声なのにドス効かせてしゃべってるから余計に不機嫌が目立つ
「すみません、おねえさんからこちらの世界の選定者に選ばれたから行って来いって言われました
あなたがこちらの管理者さんでいいんですか?」
端的に伝えてみる
ぱぁっと顔が明るくなってにこやかな声質に変わる
分かりやすく機嫌が治ったのは何より
『そっか、君の言うおねえさんは君たちの世界の管理者のことだねぇ
あの方が決めた選定方法で選ばれたならこっちの世界でいろいろしてくれそうだねぇ
期待してるよぉー』
明るく言うけど、こっちはまず確認することが山ほどあるんだよね
「結局細かい話やこちらの世界の諸々はこちらで確認してくれ、ってことでしたので一通り教えていただけますか?」
間髪入れず答えた
『えー、面倒だよぉ~~~~』
なんでだよ!!!
『そういうことはサポートシステムがあるからそっちに聞いてよぉ』
「じゃあそれ使えるようにしてください」
『え?もう使えるはずだけど?サポートシステムを起動してごらん?』
「どうやって?」
『ええ?サポートシステム起動ってボタン、ないかぁい?』
キョロキョロして見回すがどこにも見当たらない
「見えません
てか操作盤とかモニターとかそういうのすらどこにもみあたりませんけど?」
後輩も見回してみてるみたいだけどやっぱり見えないみたい
『おっかしいなぁ
君たち普段どうやって魔法とか使ってるんだぁい?』
???
「あのー、私らの世界じゃ魔法なんてなかったんですけど?」
JCはキョトンとした後、大げさなくらいの驚愕を表情に出してきた
『そんな!!魔法が使えない世界??あっちには魔法ないのかぁい??』
聞いてないよー!って3人組の伝統芸が後ろに見え隠れするようなうろたえ方で、明らかに挙動不審になってきてる
「えっと、なにかまずいことでも??」
二人でJCを見つめ、答えを待つ
『まずいというか、そもそもベースシステムが違うとそこを合わせていく必要があるねぇ
その上で世界観をはじめに言語とか宗教とか自然環境とか生物学とか教えないといけないけど、時間もかかるし教える範囲が広すぎるよねぇ』
3年で世界を変えてって言われてるけど覚えるだけでどんだけ時間食うんだか
『そうなんだよねぇ
君ら二人に基礎知識教えるだけで1年くらいかかちゃいそうだねぇ』
あ、JCも心が読めるのね
『そうそう、衛生環境とかなんとかもそうだよぉ
君らの世界レベルにはまだ届いてないからねぇ』
後輩の心も読んだのか
「でしたら私らに教えてくれるすべてを知る師匠みたいな人をつけてもらえたりしませんかね?
あとは実務ができる人をそれぞれ1名ずつ、その下に更に実働部隊として必要人数
そうでもないと現場どころか世界観すら無知のままだから、右往左往してるだけであっという間に期限来ちゃう気がしますから」
「あ!あとこちらでも高レベルのモノづくりができる人、言語を複数使える人、交渉力が高い人!
一般常識からなにからわかる人!ついでに女性でそういうのができる人も!」
後輩が矢継ぎ早に追加要求する
本当はちゃんと業務分掌やってそれぞれに決めてくんだけどね、そもそもその業務範囲すら果てが見えないんだよな、今現在だと
『だったらまずは知識と知恵がある人を創ろうかねぇ』
・・・・・作る?
いや、JCの声のニュアンスは違う感じがした
『君の「作る」じゃなくって文字通りの「創造する」んだよぉ』
・・・・・創造する?
それって、人を創るってことなのか?
『一応この世界の管理者だからねぇ、ゼロから世界は創れないけど世界があればアイテムは創れるんだよぉ』
そういいながら手のひらを合わせ、離すと掌の間に何とも言えない光り方の球体が現れた
『これはこの世界で真理を追究し「賢者」と呼ばれた人の魂だよぉ
この人に君たちを導くようにお願いしてみたら了承してくれたから来てもらったんだよねぇ
でもこの人でもせいぜいが100年200年の世しか知ったわけじゃないから、ちょっと待っておくれねぇ』
そういってさっきと同じような仕草を取って、今度は掌の間に虹のように光の色が入り混じる球体が現れた
『これは先代の妖精の長の魂だよぉ
ただこっちは妖精頼りで情報収集にはめっぽう強いけど、人の世の常識や知識には疎いんだよねぇ
だから二人で分担、ってことじゃだめかなぁ?』
え??妖精?
魔法とか魔術の上に妖精??
『そうかぁ、あっちの世界に妖精もいないのかぁ
魔法や魔術も教えてもらって身につけないとそもそもこっちで生きていけないよぉ?』
思ったよりハードモードじゃないか!
それでもサポートが万全に近くなるならまずは何とかできる・・・・・・か?
『どうだろう?この二人をサポートとしてつけるってことでいいかなぁ?』
「もう一人!生活そのものをサポートできる人ってつけてもらえませんか??」
後輩が追加を申し入れた
『生活ってぇ??』
JCが聞き返す
「食べ物の選び方から洗濯とか風呂とか寝るのとか、自分らの仕事以外のことを教えてくれるなり手伝ってくれる人が欲しいです!!!!」
洗濯、風呂、睡眠は大事だよねぇ、日本人には
そして食べ物は生きる上で必須だよね、見た目からなにから日本の知識があてはまらないかもしれないし、ヤバイもの食ったり飲んだりしてゲームオーバー!じゃ嫌だもん
『じゃあ』
3度目の掌合わせで今度は黒い球体が現れた
『これはねぇ、ある権力者の執事として仕事をしてた人だよぉ
この人なら生活サポートも十分してくれるんじゃないかなぁ?』
師匠が3人でサポートか
後輩も満足そうにうなずいてるから良しか?
『ちなみにモノづくりができる人、ってのはほぼ無意味なんだよねぇ
この【世界】には作る、って概念そのものがほぼ欠落してるからさぁ
これでよければ3人の魂をこの世に復活させるよぉ
どういう体にするかは二人に任せるから、それぞれ想像してみてくれるかなぁ?』
「外観だけ?性能とかも?」
聞いてみる
『性能って、機械じゃないんだからさぁ
一応人間をイメージして考えてくれるかなぁ?』
う~ん
賢者、妖精、執事ねぇ
おじいさん、小さくて喧しい女の子、ダンディなおじさま
定番っぽいのはそんな感じ?
そんなことを思ってた
隣では後輩くんが真剣に考えてる
『そろそろイメージができたみたいだねぇ?』
後輩がどういう姿をイメージしたかわからないけどすり合わせもしないうちにJCが言い出した
「ちょっと二人で話あってもいい?」
と言ったのだが
『二人の考えを読み取るからさ、イメージの強いほうが能力にも反映されるから話し合っても意味ないよぉ?』
だそうだ
仕方ない
そのままお任せにしよう
『では創造するねぇ』
JCはそういって両手を前に突き出した




