9-3「空を覆う黒い影」
「一緒に入って頂けるなら入りますわ」
予想外の返事だ
「男女別にしてあるのでダメですけど?」
「前に入った時はアヤノさんが居てしゃんぷー?とかの使い方を教えてもらいましたけど一人では何が何やらわかりませんわ」
成程、入浴については1度入っただけのまだ子供レベルでしたか
「じゃ、あとでみんなが戻ってきたら一緒に入ってもらおうか
一番風呂はとりあえずお預け、で」
当然というか、一緒に入るという選択は現状では選ばない
廻りに女性ばかりの現状で目先の欲に走っていいことは全くといってないだろう
「イチバンブロ、ってなんですの?」
小首をかしげて聞かれる
「掃除してお湯を張って一番最初に風呂に入ることだよ
誰も入ってないまっさらのお湯に入るのが気持ちいい、っていう人がいるからね」
そういうと目を煌めかせて近寄ってくる
「気持ちいいのですか?
暖かい水に入ることがなかったから凄くびっくりしましたけど、お風呂って気持ちいいものだと思いましたわ
それがイチバンブロだともっと気持ちいいなら是非入ってみたいですわ!!」
食いつきも凄いが圧が半端ない
まわしがあったら相撲の取り組みみたいに押し寄られる
仕方ない
アウラムには男湯に来てもらい、上着を脱いで短パントランクスになった私が使い方を見せることにした
彼女を脱がせて実演ってのはどう転んでも後でエライことになりそうな予感しかない
アウラムが着衣のままならまだこっちのほうが被害が少なくて済む
シャンプー、リンスの使い方とボディソープの使い方なら十分大丈夫
もちろん、ボディソープは足を洗う程度で終わってますよ
「これで分かれば一人で入れるよね?
お風呂、行ってくるかい?」
「大丈夫ですわ!イチバンブロは私のものですわーーーー」
残響を残して彼女は女風呂に向かっていった
折角なので全身洗ってシャワーだけで済ませ、ロビーで待つこと10数分
「気持ちよかったですわ」
出てきたアウラムの後頭部には泡が残っていた
一人で風呂はまだ早かったか
バスタオルを取ってきて、うち1枚は濡らしていたので髪を拭き上げてからタオルドライをする
一応服は着てきているが様子がおかしいところもある
どうも後前に着ているものがあるようだが、こればっかりは帰りを待って阿部ちゃんに任せよう
共同浴場はとりあえず問題なし
管理棟に戻り、とりあえず1階に受付スペースと会議室を作っておく
セキュリティは大事だからね
2階から9階はとりあえず空き室
最上階には私らの事務所となる部屋を作っておく
いちいち洞窟から来るのも大変だろうし、ここだけでなく他の都市などを含めて管理業務ができる拠点にしてある
まあ、基本的にはキングキャッスルと同じ設備と、農業部や都市部、魔牛管理などと通信や状況把握ができる管理室だ
最終的な拠点がどこになるかとかまったくわからないけど、同じものを作っておけばバックアップにもなるわけだし
会議室は9階を使うことにする
アウラムと一緒に屋上に出てみる
流石に10階建て
遠くに出発してきた洞窟のある山が見える
360度見廻すと、果てしない森の先を囲むように山が見える
だいぶ遠いようだ
おっさんの居る町以外に見てわかるほどの町などはないようだ
なんなら湖や川も見当たらない
もしかしたら雨も降らないのかな?
「ケイ殿、あそこを見てですわ」
アウラムが指をさした先の地面には砂煙を上げて砂地を走っている装甲車らしき影と大豚の群れ、それを追う影が数個、空に見えた
「鳥、か?」
魔牛、魔猪 ーまあ実際には大豚だったがー、とくれば鳥もでかくて当たり前かと思ってはいた
怪鳥なんてのがあったな、などと思っていたが
「あれ、ドラゴンですわ!!!」
『緊急警告
あれはドラゴンですね』
鳥にしては大物過ぎませんか?




