8-6「阿部ちゃん、初めての命名」
経験上、このような状況をそのまま進ませると碌なことにならない
女の園に男一人ってのは、責められるか上手くからかわれるかのいずれかな事が多い
「そういえば、君も名前はないの?」
猪娘に尋ねるが
「ナ・マ・エ?ですか?」
首をかしげる
すっかりお約束のようだな、この【世界】では
「君と同じ猪人は多いのかな?」
「家族と一緒に大豚を連れて放浪していますが、そうそう見かけることはありません
どれくらいいるかはあまりわからないです」
第一声とは大違いに柔らかいトーンと言葉遣いに印象ががらっと変わる
こう見ると彼女も美少女だ
三人娘がレベルが高すぎるのだが全く引けを取らない
むしろあの蹴りをアウラムのように筋肉もりもりの体ではない、どちらかと言えばスレンダーより華奢な肉付きの彼女が繰り出してきたのは猪人の特性なのだろうか
その細い体に膝まで届く濃い栗色のロングヘアー
毛先は濃い青というか深海のような青
はっきりした顔立ちにこれも同じく青の虹彩と少し縦長に見える瞳孔
肌は私らに近い色をしているか
知らないでいれば今どきの高校生、と言われても通る見た目をしている
こっちの【世界】、今のところ美女に美少女しか見てないんですが?
おっさんもダンディだったし、家族も美人さんだった
女神もあの見た目だったしそういう【世界】なのかな?
まさかJC女神の趣味じゃないよね?
気を取り直し、みんなに聞く
「彼女には大豚を中心とした食料確保を主に担当してもらおうと思う
さっき言ったようにもしも逆らうようならば今度は容赦しないつもりだ
その上で、みんなに再度彼女を仲間に迎えることをお願いしたい」
頭を下げる
三人娘に阿部ちゃんも加わってなにか話をしていたが
「先輩、少し車から出ていて貰えますか?」
と、少々怖い笑顔で言われた
素直に降りてドアを閉める
数分後、ドアが開いて呼び込まれた
「一応、話はつきました
私たちは彼女を仲間として認めます」
「それはいいけど、なんか彼女がおびえてるように見えるんだけど?」
「気のせいですよ」
ひらひらと手を振るが、猪娘はびくっ!と体を固くしただけだった
うむ、考えないようにしておこう
「ということで無事お迎えしたってことで、彼女にも名前を付けたいと思う
そこで、だ
3人娘は結果私が【命名】したことになっているが、今回は阿部ちゃんに試してもらいたい
その上で彼女は阿部ちゃんの直下で仕事をしてもらう、ということでどうだろうか」
「あべちゃん?」
首を傾げた猪娘に、阿部ちゃんが自分を指さす
途端に彼女の顔が蒼くなり、汗が噴き出した
冷や汗だろうが、先ほどの短い時間で一体何があったのだろうか
あれだけ攻撃的な彼女がこうも怯えるとは
「名前ですか
分かりました」
私を見てそう言った後輩くんは猪娘に向き返り
「私が名前を付けることに文句はありませんね?」
ニッコリとしながら確認するが、その目は少しも笑ってはいない
猪娘は首を縦に振る、振り続ける
「では、先輩と相談して決めます」
そう告げてこちらにやってくる
「で、なんて名前を付ければいいでしょうかね?」
阿部ちゃんはいつもの阿部ちゃんに戻っている
「そうだねぇ、3人娘と同じように考えるなら髪色や目の色から取るか
流石にわかりやすいとは言え猪だとか付けるのはどうかと思うし」
「そうですねぇ、見た目と連動させるのは確かにわかりやすいですね
3人娘との統一感も出ますし」
深く青い目と髪先の青色からすればそっちから取るのがいいかね
交互に思いついた青に関する名前を出していくが、あっという間にネタが付きて日本語になる
悩みに悩んで、その中から阿部ちゃんが選んだのは・・・
「では、これからあなたは「ヴェルーリア」です」
猪娘に告げる
「ヴェルーリア?」
これまたお約束で気を失う
拘束されたままで、だが
猪娘に名前が付きました




