8-2「牛の次は猪?」
昼夜の区別はあった
まるで部屋の電灯をオンオフしたくらいきっぱりと切り替わった
夜空に星はなく、なんとなく薄明りがあるだけ
私らの世界とは違うのだ、と改めて認識することになった
夜になったら寝る
とりあえず今日は車中泊にする
適当な家をでっち上げてもよかったのだが、なにせここは魔牛が襲ってきた場所
いくら防壁を作ったって上空を飛んでくるようなのが居ればアウトなのだ
あと、できれば魔牛以上に大きなのが居ないことを願うのだが、とりあえず防壁内に装甲車ごと乗り込んでおっさん用に作った家のすぐ近くに止める
こういう時のために少々仕込みをしてある
装甲車のカーゴスペースは二重にしてあって、外殻がそのまま後方へスライドして足が出るロングモードに変形する
後は内殻はシートを少し動かせばベッドに早変わり
外殻側は収納式のエアベッドを展開すれば乗員の就寝スペースが十二分に取れる
キャビンもシート座面を前方スライドすればシートバックが中折れしてベッドに早変わり
カーゴスペースとの隔壁上部にも簡易ベッドを仕込んでいるので前に倒せば寝るくらいはできる
ということで私はキャビンに、3人娘+後輩くんはカーゴスペースで寝ることに
ん?4人ならロングモード展開しなくてもよかったんじゃないかって?
作った以上、変形させたくなるのは男の性、みたいなものなんだよ
で、翌朝
早速トラブルがやってきた
明るくはなっていたが何時かはわからない
少々遠くで鈍くぶつかるような音が繰り返していて、更に甲高い鳴き声が聞こえるように思う
高級車以上に防音しっかりさせてる装甲車でこの音ってのは余程でかい音源のはず
とりあえず車外に出ると女性陣も何事かと起きてきたし、おっさん家族も飛び起きていた
余りの喧しさに魔牛も少々お怒りなのか、モーモー文句を言ってらっしゃる
おっさんには猪の声に聞こえるんだそう
猪?
もしかして魔牛のようにでっかいのか?と確認するとやっぱりサイズはでかいらしい
魔猪、か?
ただ、通常は走りすぎていくだけだが、やっかいなのはどこまでも真っすぐなんだそうだ
つまり、障害物は全てぶち壊す
町も時々被害に遭うんだとか
しかし今回は勝手が違う
例え魔牛だろうが突進したとて防壁は壊せるわけではない
それでも直進しようとするのか、流体のように壁沿いに流れるのか
興味が湧いたので見に行くことにした
防壁の上は柵などは用意してないし外敵への対抗武力も用意するつもりがなかった
そこで音と振動元と思われる場所に装甲車を戻して向かい、階段と安全な観覧席をクリエイト
みんなで登って見学することに
大量の魔猪?が壁に向かって突進している
頭から突っ込んで行ってるがよく気絶しないものだ
そういえばいのしし村とかに昔行って猪レースとか見た記憶があるな
ああいうのできれば娯楽にもなるのか?
「あれ、人じゃないですか?」
阿部ちゃんの指す方向に確かに直立している人らしきものが見える
魔猪が走り抜けるそばでなにやってるんだ?
急いで装甲車に戻って作っておいた防護装備と竹刀を持って観覧席に戻ると
入れ違いにフレイアとアウラムも装備をしに降りて行った
「取り急ぎ行ってくるわ」
10mくらいなのでそのまま飛び降りる
「せんぱーい!大丈夫ですか?」
すぐさま声が飛んでくる
普通は大丈夫じゃない高さだけど、風魔法で速度落として多重衝撃吸収もばっちりの半長靴で一切着地の衝撃なく地上に降りられた
そのまま人影のところに走って向かう
が
近づいて声をかけようとした刹那、その影が飛んできてカウンターで蹴りを入れられる
フル装備のおかげで痛みはなかったが走り寄った速度は相殺され立ち止まることに
「今のでなんで倒れないのよ!!!」
理不尽なことを言う声と地団駄踏んだ姿はちょっと小さい女の子
ただ一つ
尻尾があるように見えたのは気のせいだろうか?




