6-7「魔素水はりんご味」
牛のボスになれ
フレイアは確かにそう言った
「どういうこと?」
ちょっとだけ声が上ずった
牛、それもあんなでっかい魔牛なんてもののボスって・・・
アウラムが続ける
「さっき、わたくしは気絶から回復したらオスにトドメを刺す、と言いましたわ
ですがオスが居ないと繁殖ができない、というのを失念していましたの
全部の魔牛が気絶から醒めた状態で改めてオスをケイ殿が倒すのですわ
そうなればケイ殿がこのオスより強い、と認識させればオスごと群れが従うはずですわ」
「群れのボスについて行って、その先が放牧場で安全で餌があればそこで暮らすでしょう
ただ、繁殖に関してはより強いオスが居るとわかっててできるかどうか」
悩みながらフレイアはそう言う
「それ、もし女性がオスを倒したらどうなるのかな?」
思い付きを口に出す
「なるほど、オスより強いのがメスだとなればそのメスとの繁殖は無理、だから今いるオスで、となるということでしょうか?」
「そうなると倒すのは男女関係なく誰でもよい、ということになりますね」
「戦うのは誰?ですわ?」
アウラムがそういいながら3人の顔を見回す
「町人で世話する人、が一番いいんだけど?」
そういいながらおっさんを見るが
「魔牛を倒せるわけないだろう?」
にべもない
ここに常駐して抑止と連絡をしてくれる人
人、でなくてもできないか?
「少し相談があるんだけど、いいかな?」
「どういう話?ですわ」
アウラムに声をかけた
「アウラムは妖精と意思疎通ができるよね?
ここで魔牛のボスというより見張りと、何かあった時の連絡担当を妖精に頼めないものかな?」
少し考えてから、こう答えた
「その2つは大丈夫ですわ
ですが、とてもじゃないけど妖精が魔牛のオスを倒すのは無理、ですわ」
倒さないとボスってみなされない、か
「妖精って実体化できるのかな?
例えば武器、持ってつかうことは?」
「実体化は大丈夫ですわ
武器も使い方さえ教えればつかえますわ
でも魔素の消費が激しいので吸収が追いつかないから、実体のままで長くは居られない、ですわ」
「逆に魔素の供給さえ安定すれば大丈夫、ってことかな?」
彼女が怪訝な顔をしている
「例えば液体魔素を必要に応じて飲む、とかできたら?」
「幻の発掘アイテムですわ!
そんなのどうやって入手するか、ですわ」
「伝承では作る方法があったらしいのですが、わたくしも実際に見たのは数度、それも発掘品でした」
フレイアでもレアケース、ってか
「以前仕えていた先では持っていました
戦闘の後に疲弊した兵士の回復に使うとかで希釈して使っていましたね」
カホル、どこに仕えてたんだよ
「ちょっと時間貰うけど、少し試してみたいことがあるんだ
それでうまくいけばアウラムに妖精の管理人を手配してもらいたいけど、どうだろうか?」
装甲車に戻って数分後、ちょっと大きなウォーターサーバーみたいな機械が出来上がった
「【液体魔素自動生成器】を作った
これが出来上がった液体魔素
どうだろう?」
呼んだ3人娘を呼んで見てもらう
傍から見れば某滋養強壮剤の瓶を持っているようにしか見えないんだけどね
「飲んでみてよろしいでしょうか?」
フレイアはそう言ったのには躊躇ないな
「どうぞ」
開けた方が分からなくて四苦八苦していたので開けてやった
「・・・・・美味しい!久しぶりの味だわ」
なんか、目がうっとりしてませんか?
グリーンアップル風味になるようイメージしたんだけど???
「美味しいですわ」
「これはリンゴ、という奴の味では?」
意訳とは言え、こっちにもリンゴがあるわけか
カホルが続ける
「長命種はリンゴを食べることで長生きしている、と聞きます
フレイアの好物でもおかしくありません」
あれま、偶然
「で、飲んでみて魔素の補給という観点ではどうだろう?」
「これをどれくらいの間隔で飲めるようになるか、次第ですわ」
アウラムが答える
「一応実際に作って見せるよ」
サイクルタイム1.00分に設定したので1分1本、となる
基本摩滅とかしない魔術で作った製造機だからノーメンテ
「周囲の魔素が薄くなったりしなければこのくらいでできていくよ」
まあ、理不尽だよね
魔素を圧縮・濃縮を繰り返して液化して、その間に瓶と蓋を生成
更に自動で充填して蓋を加締めて完成
幻、発掘品、とか希少アイテムの定冠詞が付いたものをいとも簡単に作り上げたのだから
3人娘は黙ってしまっていた
度重なる出鱈目で理不尽な出来事に遭遇して、呆れているようだ
「で、では妖精から仕事をしてくれそうなのを募りますわ」
いち早く復活したアウラムが動いてくれる
少し待っていると、小さい光がアウラムの周辺に集まってきてなにやら説明をしている
そのうち光が徐々に離れていき、2つの光が残った
「2人の妖精がやってくれることになりましたわ」
そういうと光は徐々に人型になっていき、光らなくなった
人型だが背中に4枚羽根がある、典型的妖精スタイルだ
「アウラムと違って私らの思い描く妖精さんのサイズだね」
「かわいいですけど改めて異世界、って感じがしますね」
気を利かせておっさんに紅茶をふるまっていた阿部ちゃんが戻ってきていた
おっさんは、と見ると少し離れた簡易テーブルでティーカップ初体験なのだろう
すごい持ち方をしてお茶を飲んでいる
「一般的な妖精ですわ
私達妖精種は人間と妖精の中間みたいなもので本当に妖精といわれるのはこの子たちなのですわ」
そういう違いがあるのね
「じゃあさ、液体魔素1瓶だと1回分としては多すぎたりする?」
「かなりの間使えると思いますわ」
私らに換算すればドラム缶相当だろうから、オーバースペックにも程がある
さて、この妖精サイズの武器を作ってやってあの魔牛と戦えるのか?
私らから見て大型トラックなのにこの子たちから見たら相対的に高級ホテルくらいにならないか?




