6-2「魔牛、追跡」
「このあたりですわ」
町の外周に沿って距離を空けて走っているとアウラムが声を上げる
ATVから降りて彼女に続いて歩いていくと、なるほどほかに比べ荒れた地面に巨大な足跡がみえる
人とは違うしいわゆる偶蹄目って奴だろうけど、見たことのある形状と違うのは蹄鉄がなく蹄も伸び放題だからなのか、それとも生物として違うのかどれなのだろうか
ただ、本当にでっかい足跡だ
A3サイズくらいの面積に見えるんだけど?
「数頭だと思いますが町に入って暴れていたようですわ」
確かにあばら家の間に足跡は続いている
突っ切ったわけでなく、町から戻ってきてここを通って森林方向に向かったようだ
「少し追ってみましたが途中からの砂地で足跡が消えていましたの」
申し訳なさそうに告げる
「とりあえずこれ、使ってみようか」
弥生さんの提案したポータブル熱追跡装置をATVに戻って降ろし起動させる
モニター付きセンサーだけど、装甲車と通信して詳細解析して表示するって結構なシロモノ
足跡を撮影すると数秒経って予想移動経路と予想現在地が表示される
アウラムを促してATVに乗り、ハンドルポストに装置を固定してナビ代わりに走り出す
十数分経つと砂地というか砂丘というか、進行方向奥には森があるもののそこまでの間の地面は砂が覆っていた
ATVを止める
モニターには足跡が映っているのに、その足跡は砂地途中で途切れている
まとまって移動したであろう足跡が数本に分かれ煙のように消えている
その数、3本
最低でも3頭の魔牛と呼ばれる巨大牛がいる、ということだが見えないってのは???
「姿を隠す魔法を使えるのですわ
だから魔牛なのです」
ってことは足跡消えた先にいる、ってことか
「倒せるかな?」
もし交戦したら異世界初の戦闘
しかも相手は巨大な牛で消える魔法使う奴
「大きく突進が凄まじく、逃げ足も速い魔物ですわ
2人でもこのハンマーがあれば足を止めて、動きが鈍くなったところに魔法連発でとどめを刺せば倒せますわ」
「アウラムは戦ったことあるの?」
「ありますわ
妖精族10人がかりでやっと倒してみんなで肉を食べてお祝いしたのですですけど」
一度言い淀んで、続ける
「あまりにも大きくて食べきれなくていたらそのまま腐ってしまって、魔虫やら魔物が大量に寄ってくるようになって町ごと引っ越す羽目になって酷い目にあったのですわ」
ため息をつく
保存方法も持たずしかも処理する道具もまともになければ普通の牛だってきつい
しかも内臓とかもそのままだったらあっという間だよね
ところで、魔虫?
虫もでっかいのか?
考えないようにしておこう
「それは災難だったね
じゃあ、町から10kmは離れてるここなら大丈夫かな?」
首を傾げ、少し考えてから彼女は答えた
「これくらい離れていればもし同じ目に遭っても直接被害はない、と思いますわ」
「わかった」
さて、問題はどうやって「見えるようにする」か
視界からも熱感知からも見えないんじゃ
『魔牛の弱点は大きな音に弱いところです
思い切り大きな破裂音を食らわせてはどうでしょう
気絶、パニックなど我を忘れることから魔法の継続維持は難しいかと考えます』
弥生さんが攻略本、もとい【世界書庫】見て必勝法教えてくれる
手りゅう弾とかかな?
『グレネードランチャーのほうが威力を大きくしても安全性が増すと思われます
ご主人様がこちらの世界で力が強くなっているとはいえ、通常の手りゅう弾では届く範囲が限られますから』
足跡の先めがけて撃てるのを作ればいいのか
ところでグレネードランチャーってどんなのだっけ?
バズーカと違うんだっけ?
弾はどうする?射程は?
見たことがある携行武器だと・・・
悩んでても仕方ないので、とりあえずクリエイトしてみる
目の前で出来たのは・・・対戦車ミサイルでは?
なんか先端にそれっぽいのが付いてるんだけど?
でもこれだと、1発打って終わり、もしくは再度取り付けて撃てるのか?
だとしてもミサイルのおかわりは?
『当然、魔素を使って自動生成するようになっています
今回は爆裂音が非常に大きくなるようにしてありますが、破壊力特化や貫通力特化、ナパーム弾のような焼夷弾も作成して発射可能です』
弥生さん、恐ろしい子
対戦車ミサイルを見ていたアウラムが一言
「これで叩くのですかしら?」
そう見えるよね
イヤーカフをクリエイトしてアウラムにも付けてあげて、ゴーグルを改めてつけ直す
なんということでしょう
ゴーグルには視界にプラスで対戦車ミサイルの照準と検出した足跡が表示されてるではありませんか
言わなくても勝手に連動させてしまうのは弥生さんの内助の功なのでしょうか?
『サポートが私の役目ですから』
控えめな主張、ありがとう
早速構えて撃ってみる
「アウラムはそのまま動かないで」
隠れる必要もない、というか隠れる場所がそもそもないのだからアウラムから離れて発射炎や破片などが彼女に当たらないくらいの距離をとり、目標は足跡適当に当たりを付けて発射
無反動で少々音がした程度でミサイルが1mくらい砲身から離れ、火を噴いて飛んでいく
数秒飛んだところで着地して爆発、そして少々遅れて爆裂音が聞こえるか否か
トラックがごとき巨体が突如現れた
その数、4




