6-1「てきがあらわれた」
「町に着きましたけどいれてもらえませんわー」
アウラムの困った声が聞こえてくる
キャビンに戻ると貧相な柵の前とフレイアが映っているからアウラムのゴーグルの画像だとわかる
サブ画面にフレイアの視界が映っている
目の前には長い棒に石を括り付けた斧らしきものを持った男が2人立っている
「町のものではないだろう?今は入れるわけにはいかない」
「悪いが帰ってくれ」
口々に言う
今は、ってことはなにかが起きていて入ることを禁じられてるんだろうか
「フレイア、いつになったら入れるか聞いてみて」
通信を入れてみる
画面が一瞬縦に揺れて、左右に振れる
そっか。こっちの声があちらに聞こえるって伝えてなかったから驚いたんだな
少し間があってフレイアが門番2人に聞いてみたが
「いつになるかわからない」
にべもない
仕方がないので町の外周を回って様子を見て帰投するよう伝える
まあ、警戒心がないよりはいいんだろうけど、はて何があったのか
軽い昼食が食べられるようにと簡易調理台や調理器具、食器一式をクリエイトして調理を始める
個人的には道具や機械に愛着を持つほうなんだが、利便性がほかに優先すべきことがあるならそっちを重視する
今回は車内スペースが限られるので昨日作ったフライパンなどより現地でクリエイトするほうが利便性がいいと判断したんだよね
ただ、作って気が付いた
作った道具、どうする?
イレース使って消すしかないか
そんなことを考えながら調理していたら二人が帰ってきた
「戻りましたわ」
「凄くいい匂いがします」
ハヤシライスができあがる
カレーよりもこっちのほうが刺激が少なく食べやすいと判断したからだ
朝昼兼用だけど出先だからワンプレート
「さて、食べながら実際に見た感想を教えてくれるかな?」
簡単に作るつもりが重厚なのをイメージしてしまい、アウトドアには似つかわしくない長くでっかい、真っ白なテーブルクロスがかかったテーブルと背もたれが長く繊細な彫刻が彫られた椅子
どこのなにのイメージ投影されたのか
体育館のすみっこで集まってるがごとくほんのわずかな先端で食べる5人
あとでイレースするのに無駄にもほどがある
「これはなんという料理なのでしょう?」
フレイアは興味深々だ
「ハヤシライス
ごはんを一緒に乗っているルーと混ぜて食べて
スプーンはこうやって使うんだよ」
昨日と違いスプーン1つだけだからと使って見せる
阿部ちゃん以外は恐る恐る見様見真似して食べてみている
だんだん慣れてきたのか、おっかなびっくり持ち上げることはもうしない
「これもおいしいですね。合格です」
なんでか今日もジャッジされてるんですけど?
「それはなにより
ところでまだあるけどおかわりいる人は??」
4人全員無言で手を上げる
フレイアは2回おかわりをしたが流石に3回目はごはんもルーも無くなって売り切れ
がっかりした美女も可愛いのだが、口の周りにごはんとルーがついてますよ
結局食べるのに夢中、特にがっついていたフレイアに町の様子を聞くのは無理と判断して食後のお茶をしながら聞くことにした
今回はカホルが一人で用意してくれたが、一人で用意するのは初めてだったが十分美味しかった
一息ついてアウラムが告げる
「あの町、牛の群れに襲われてますわ」
「牛?牛っていうとあの牛?」
「ええ、あの牛です」
ジャージー牛とかアンガス牛とかの牛?
勝てないものなのかな?
というか、牛、いるのか?
『ご主人様のイメージする牛とは違い、こちらの牛は【魔牛】とも呼ばれる魔法を使い、かつ巨大な体躯で人を襲う魔物です』
阿部ちゃんも同じこと思って突っ込まれたのだろうか
こっちみて困った顔してる
アウラム曰く、多数の牛の足跡があった、家?が壊されていた、怪我をした人が多数居た
極めつけは町の周辺に居た妖精が牛の集団を見たというものだった
牛を倒すまで入れないのか?
それとも牛を倒しちゃいけないから牛が居なくなるまで我慢しようとしているのか?
「牛、倒したらダメとかあるのかな?」
3人娘は顔を見合わせる
「特に聞いたことはないですね」
フレイアはそう答えた
「じゃあ、食べて美味しいのかな?」
「新鮮なうちは生肉が美味しいです」
「焼いて食べるのも美味しかったですわ」
「でも大きすぎて食べきれずに腐ってしまうので貴重なんです」
最後のカホルの言葉
どれくらいでかいのかわかってないけど、保存技術がないこの【世界】では倒したら切って食べる、くらいしかできないってこと?
普通の牛でもでかいのに生で食えるうちにとか結構ハードだよね
ホルモンとかは処理が無理にしたって内臓以外はなんとかできるんじゃ?
よし
「じゃあ、その牛をまず倒して町を安全にしてみようか
あとは倒した牛を解体してバーベキュー大会して町の人と仲良くなれるか試そう!」
「「「ばー・べきゅー?」」」
毎度の変なイントネーションで3人娘が首を傾げた




