5-3「町、発見」
このタイミングで弥生さんからお声がけだよ
『動画編集が終わりました。
車内モニターで再生可能ですが、移動時間に見せますか?』
君が作った動画、どうやってモニターに出すの?
『ご主人様の髪の毛を1本拝借いたしました。
それを車内LANと接続して私が画像を電気信号として通信プロトコルで割り込みます。
動画がモニターで視聴可能になります』
どこぞの未来からきたロボットみたいにされてないか?私?
まあいいや
この【世界】にきて魔力体だとか魔術だとかいろんなのやってる時点で若干改造人間チックだもの
「みんな、モニターにベッド作る手順を出すよ。
説明見ながらだともしかしたらベッドやソファーも全く同じものが作れるかもね」
「「「モニター??」」」
そうだよね、わからないよね
とりあえず後席に乗ってもらい、再生スタート
車内後部のガラスの一部が暗転してモニターになって、羽毛の作り方とか流れている。
黙ってみているが、目は見開かれたままだ
水鳥を捕獲してから乾燥機で羽毛の選別を同時に行う様は一連で見ると手間がかかっているのがよくわかる
こういうのを動画とはいえ見るのは恐らく初めてなのだろう
生地を縫製して羽毛を充填して仕上げをして、3人娘が驚いていたかけ布団が出来上がった
3人娘は再生が終わっても動かない
少し経ってフレイアが口を開いた
「先ほどの人たちはどこに消えたのでしょうか??」
あ、やっぱりそういう反応になるんだね
「説明が上手くできないけど、元々ここにはいないんだよ。
ちなみに」
再度再生をする
「こうやって何度でも同じ人を出せるからね」
お約束で動きが固まる
さて、と。
これがいろんなものがあるんだろうけど、走りながら再生すると道案内のアウラムに見せられないよね
3人とも理解できるようなら教育時間設けて見てもらうほうがいいか
「とりあえず見て作り方が理解できそう?」
率直に聞いてみる
「わたしは大丈夫です」
「私もおおよそ理解できました
「わたくしもわかりましたわ!
ですが鳥がかわいそうで見るのがつらかったですわ」
アウラムはしょぼんとしていた
「アウラムはやさしいんだね
これは昔の作り方らしくて、今は食べるために処分した鳥や巣から抜けた羽を集めて作るのが多いんだって」
「それならよかったですわ」
ぱぁっと顔が明るくなった
感情ストレートな娘だ
「鳥の羽でなくても羊の毛を飼って作ったりもするらしいよ。毛を刈るならまた伸びてくるからね」
3人とも感心していた
「同じものを作るにもいろんな方法があるんだ
それを覚えれば魔術でモノを作るのもいろんな方法やいろんなモノが作れるようになってくると思うよ」
そう言って初回の動画視聴は終了
町を探しに再出発!
道のないダウンヒルなんて走ることないので、装甲車を慎重に慎重に動かしていく
1速でエンブレ効かせてても速度が勝手にあがるのでブレーキに足をかけたままだ
20分ほど下ってようやく麓らしき平野に到達
ただ、ここに来て問題発生
町の方向を教えてくれたアウラムと妖精だったが、さっき居た妖精達がテリトリーが違って一緒に来られないらしい
せっかく来てもらったのに
アウラムが礼を言って、また車外にでて妖精を呼ぶ
さっきと同じように光が集まり始め、アウラムが戻ってくる
大丈夫のようだ
なにせ地図もナビもGPSもないのだから知っている人に教えてもらう以外ない
5人が居て最新情報を持っている人がいないのだから、アウラムが呼んでくれる妖精の情報が唯一の頼りなわけで
途中途中に落としたビーコンはちゃんと作動していて、走行軌跡はインパネのモニターに表示されている
帰りはこれをガイドにすれば帰れるって寸法
ちなみにビーコンは地面にパイルマーカーとして打ち込んでいるのでそうそう悪戯されたりしない
魔素を取り込んで基本無補給で動き続ける優れものだ
シリアルを照合すれば走行ログと併せてどこに移動したときのものかわかる
もちろん考えたのは弥生さんだ
さて
高原よりも複雑な植生に迂回したりなんだりと繰り返して数時間
思ったより距離も走ったようだったが、これまた突然森が切れ見通しがよくなる
草原かなにかかな?
すぐさま装甲車を止め、フリップモニターを下げて屋根上にあるカメラを操作すると、いくつか木でできたらしい構造物が見えた
「ここが目的地の町なのですわ」
アウラムが一緒に乗り込んでいた光の玉と話て、そう告げる
「町?」
「どこに?」
私と阿部ちゃんが交互に声を上げ、顔を見合わせる
私らの思い描く街、とはもちろん違うとは思っていた
どんなに小さくとも山間の集落程度に拓けているものだと思うよね、現代人なんだから
しかし、アウラムが町、と言ったここにはまさにあばら家というべき今にも崩れそうな柱と蔦、葦らしきものでくみ上げられた縄文遺跡の復元建屋がお屋敷に見える有様だった
壁も申し訳程度で雨風すら避けられない
モニターにはちらほら人らしき影が見える
少し背は低く見えるが洋風の顔立ち、白い肌に見えるが線が細い
「近寄って行って怪しまれたり、攻撃されたりしないかな?」
「大丈夫だと思いたいですわ、ですがその・・・」
アウラムが少し言い淀む
「恰好とか習慣とか言語とか問題あるのかな?」
フレイアがパーテーションの開いた窓から顔を出す
「私どもでは黒髪黒目というのは「人を裁く者」、として言い伝えがあるのです」
なんだ、それ?
「人としてあるまじき行為をし、それが重なって女神様がお怒りになると使わされる使者とされています
私達は直接女神様からお二人をお助けするよう申し付かった上でご一緒もさせていただいていますが、知らずに見たこともない黒髪黒目の男女を見たらどういう反応をするのか、
私もお二方にお会いするまでは単なる戒めの話だとばかり思っていましたので、実在していきなり目の前にでられたらどう感じるのかわからないのです」
三人娘、そろってうんうん頷いている
「種族関係なく伝わってるの?」
「幼いころから私もそう聞いていました」
カホルが告げる
「統一神として女神を崇拝する文化があって裁きを下す実行部隊として黒目黒髪が来る、ってか
そりゃあびっくりするかも、だよね」
「神さまの使い、ですか?」
阿部ちゃんはキョトンとしてる
「まあ、そういう話にされる可能性高い、ってことだろうね
そうなれば私ら二人は現時点では町にいかないほうがよさそうか
「洞窟の時もお願いしたけど、3人娘の内2名で町の様子や状況を見てきて欲しいが頼めるかな?」
そういって向き直る
「どういう町なのかわからない上に3人とも生きていた時代とは「ずれ」があるんだよね?
なにがどうなるかわからないから、一応装備を付けてもらって行ってほしい」




