5-1「遠征準備ととうとう出ました、ロマン兵器」
ここは四六時中明るい
おまけに洞窟内なので星の運行とか太陽とか月もなくただただ白い天があるだけ
時計もスマホもない
鶏もいない
だから朝なのか夜なのかまったくわからない
4人娘は三々五々起きてきて挨拶をしてくる
一番早起きなのはカホルだった
「おはようございます、ケイ様」
「おはよう
ところで様、は要らないよ。偉くないもの」
キョトンとしている
「そういえばフレイア殿はケイ殿、と呼んでいましたね」
「昨日一緒だった時に頼んだんだよ
殿でもむず痒いんだけどね」
思案顔をする
「彼女は3人の中で最も有名で賢者として尊敬されています
その彼女が呼ばれているなら倣うほうがよいのでしょう。
わたくしもケイ殿、とお呼びさせていただいてよろしいでしょうか?」
至って真面目
「う、慣れないんだけどそのうちやめてくれると嬉しいかな
こっちが教えてもらう立場なんだから」
「覚えておきます」
「ところで」
カホルが言った
「昨日のコーヒーと紅茶の入れ方、というのをお教えいただけないでしょうか?」
執事時代は主の身の回りを世話していたけど、私らのやってることは勝手が全く違い全部未知の出来事らしくいろいろ考えても理解できなかったらしい
教えを乞うのが最短の道、と思い願い出たとのこと
いやいや、私も自分勝手にやってるだけで自己流極まりないよ?
それでもいい、っていうから二人でキッチンを行ったり来たりしていた
フレイアとアウラムは一緒に起きてきた
カホルが改めて紅茶を入れ、二人に出す
目覚めの一杯だ
阿部ちゃんはだいぶ経ってから降りてきた
なんだったらそれでもまだ寝ぼけ眼だ
「ぉぁぉぅぉぁぃぁぅ」
目をこすりながらあいさつしたようだが、なんて言ってるんだか
3年くらいの付き合いだけど彼女の寝起きなんか見たことない
いつも元気ハツラツ!の阿部ちゃんでも朝弱いのか
寝起きでぼさぼさ髪の彼女も可愛いものだけども
座った彼女にカホルが紅茶を差し出す
彼女用にノンカフェインの紅茶を改めて淹れてくれるのは覚えが良すぎるだろ
頭を下げて口をつけ、数口飲んでやっと少し目が覚めたらしい
「今日は外に出る、んですよね?」
覚えていたようだ
「一応準備はしておいたから、みんなが用意でき次第でかけようか」
数分後
4人娘はあっけにとられていた
目の前にあるものに
「これ、自衛隊の車両ですか?」
阿部ちゃんが聞いてくる
「知らん、それっぽくイメージして作ったから似てるけどサシでの勝負なら多分負けることはないね」
腕を組んで答える
昨晩門から帰ってきた私と弥生さんは、アウラムが私らの魔術行使時の魔素量が「ドラゴン同士の縄張り争いみたい」と言ってたのを思い出したのだ
つまり、外界にはドラゴンが複数いる、ということ
もちろんドラゴンは私らの世界にはいなかったがRPGとか伝説ではとんでもない生物と決まっている
金ピカで頭が3つもあって熱線吐くほかの惑星から来た奴とか、8つも頭があって尻尾から剣が出てくるとか西洋東洋問わず残ってるのもあるくらいだ
エンカウントして逃げられればいいが、そうでなければまともには戦う術がない
ということで弥生さんと検討した結果、こんなものが出来上がった次第だ
ベースは記憶にある自衛隊の兵員輸送車とかの形状
ただしそのままでは視界が悪くて上半身乗り出しての運転になるのと直接の戦闘能力が足りない、当然ドラゴンなんかと戦って平気なわけもない
ということで魔改造したスペックでクリエイトしてしまった
今の世界の技術では多分再現不可能、だ
6輪独立懸架で電磁浮遊衝撃吸収に全輪インホイールモーター
特殊組成による結界付きノンパンクタイヤに真空層を挟んで二重化された単結晶ボディによる断熱・衝撃吸収
塗料で魔法陣を書いて塗装することでボディ全体とホイールに多重結界を張ってたいていのものは防御なり影響ゼロにできる
おまけに上部に2連装の150mm口径レールガンと側面に設置されている6連レーザー・カートリッジ砲
他にも隠し要素てんこ盛り
動力源は自動吸収の魔素で外界の魔素を優先的に吸収・圧縮して液化した上で貯蔵タンクに貯めたものを使って、足りなければ乗員から吸収
ちなみにレールガンとレーザー・カートリッジ砲はロマン砲としてそう呼んでいるけど実際に超電磁とかレーザー発振器とかはなく、近いものを魔素を使って弾や砲口、発振器で再現しているだけだ
レーザー・カートリッジのほうは端的に言えば地球製の宇宙戦艦でアンドロメダ銀河まで往復してきた奴の主砲といえばわかりやすい
あれ、カートリッジ弾も撃てるのに明らかにビームが飛んで行くのは理不尽だけど、それが出来るのがこの【世界】の製作:魔術、できちゃった
魔素伝導パイプを使って走行用インホイールや外部武装、車内生命維持装置などとタンクを繋げて同時に各種コントロールもできるようにしている
エンジンやミッションがないので車両自体からの排気ガスや排熱はほとんどゼロ、それも結界で包んでいるので検出不能
結界を感知する能力があれば検知されるだろうが、自動車どころか移動手段が限られるこの【世界】で気が付くことがあるだろうか?
万が一見つかって追跡されても逃げきるくらいにはしたつもりだけどね。
で
そんなのを見ていつも通り反応は2つに分かれる
「なんですかこれは!」
はい、3人娘だね
「これ、映画とかで見たことあるのに似てますね!
普通免許で運転できますか?」
そもそもこの世界に免許はないと思う
少なくとも自動車免許はないはずだ
てか、君?
運転するつもりだね?
「3人娘のうち、一人に案内人として前に座ってほしいんだけど誰がくわしいかな?」
アウラムが手を上げる
「外に出られれば妖精たちに聞けるはずですわ
移動途中で呼びかけてもいいなら案内できると思いますわ」
ということで決まり
2人には後方の観音開き扉を開けて乗り込んでもらう
広いスペースの半分位にはJC女神謹製の食材を使った弁当や保存食を積んでいる。
余力があるので業務用冷凍冷蔵庫をクリエイトして搭載してるぞ
私と阿部ちゃん、真ん中にアウラムに座ってもらいシートベルトを締め、スタートボタンを押す
ちなみにシートベルトは4点式
多少ではシートからずれることはないはずだ
流石に6点は実用性もだけど女性に嫌われるので辞めておいた
道交法がないから大丈夫なんだけど、フルバケットシートとともに嫌われる装備というのは身に染みて理解している
後ろの二人には一度降りてつけ方を教える
昇降式の大きな窓があるとはいえ前後ににファイアウォールとしてパーテーションがあるから見えづらいんだよね
もう一度席に戻って全員に声をかける
「では、出発!」
多少石を巻き上げる音はするくらいで装甲車は発車した
3人娘の悲鳴を残しながら
装甲車の機構説明あり




