4-3「初めての異世界メシ。ただしこっちが作る側だけど」
最小限の生活環境は整ったかな?
阿部ちゃんと確認して、3人娘を迎えに行ってごはん作って食うか?
ということで城の外に出た
出てすぐ3人娘がいたが、あんまり顔色が良くない
「おかえり、体の調子はどうだった?」
と聞いてみたが
「それは大丈夫だったのですが、それよりも中で何が起きていたのですか?」
フレイアが恐る恐る聞いてきた
「生活に必要な設備を二人で作ってたけど?」
アウラムが言う
「まるでドラゴン同士が縄張り争いしてるくらい、魔素がバンバン漏れ出ていましたわ」
聞き捨てならない言葉が出ましたけど?ドラゴン居るの?
「なにをどうすれば、あのような魔術を連発するのでしょう?
わたし、余りの魔素量に動けなくなってしまいました」
カホルは両手で自らの体を抱きながら震えている
「えっと、キッチンとトイレ、風呂つくってただけなんだけど?」
「キッチン?」
「トイレ?」
「風呂?」
3人娘がかわるがわる首をかしげている
もしや、そういう概念すらないのか
「えっと、ごはん食べる時ってどうしてるの?」
「肉や魚、野菜を食べてますが」
フレイアが答える
「どうやって?」
「え?どうやってとは?」
フレイアが不思議そうな顔をして、疑問形で返す
「焼いたり煮たり蒸したりとか、調理って意味だけど?」
「ちょう・り?」
今度はカホルが返事をした
「カホルさんは執事だったんですよね? 仕えていた人はごはんどうしていたんですか?」
阿部ちゃんが聞いていた
「当時の主はそのまま丸飲みしていましたが・・・」
「「丸飲み」」
私と阿部ちゃんのユニゾンは、完璧だった。
マジか
ってことは
「味付けって、どうしてるの?」
「「「あじ・つ・け?」」」
さっきと同じく、しかも変なイントネーションで3人娘が返してきた
ヤバイ、これ、伝説のメシマズが起きる前フリじゃないのか?
よし
「もしよかったら、私らの【世界】での食事を、簡単にだけど作ってみるよ
それ、食べてみてもらえるかな?」
4人とも頷いた
「あれ?阿部ちゃん?
君、食べる側??」
「先輩?
先輩は3年くらい一人暮らししてたんですよね?
ちゃあんとできてるか、料理の腕を見て差し上げますよ?」
なんで上からなんだよ、君は
まあ、彼女はずっと実家暮らしだし?
私は子会社に行かされて、3年一人暮らししてたし?
でもおっさん飯なんですけど、それでもいいんですか?
溜息つきながらこう言ってやった
「味は保証しないからな」
彼女は笑ってた
さて
ちゃっちゃと作るにはなにがいいかしら
そう思いながらみんなでキッチンに向かう
「ところで」
改めてみんなに聞く
「食べられない食材ってあったりする?」
一応聞いておかないとね
勝手が全く違うからアレルギーとかわからんし
カホルがおずおずと手を上げる
「はい、カホルさん」
「ネギ類が禁忌になってます」
犬か?
「もしかしてニンニクやニラもダメ?」
頷いたので、念の為に追加で聞いておく
「まさかブドウとかも?」
「それは大丈夫です」
ワンコ疑惑、晴れました
しかし・・
「日光とか銀製品とか、十字架とかに弱いとかあったりする?」
「日光は問題ありませんが、ギンセイヒンとかジュウジカ、とはなんでしょう?」
そっか、それもないのか
「後々検証していくから、今は解からなくていいよ
あと苦手とか禁忌とか特にないかな?」
見回しても特にないらしいので、とりあえず食品室に向かう
米があればごはんは炊くとして、おかずはどうするかね?
すぐ作れるものと思って冷蔵室にも入っていく
肉、かな
几帳面なのか虫の発生を嫌ってか、精米済みの米、小麦粉、パン粉などがずらっと冷蔵室に置いてあった
おまけに調味料も、多種多様なものがたっぷり
卵も大量に置いてある
野菜置き場には、キャベツがあった
とんかつか、ポークソテーか
そういえば酒類あるのかな?
コニャックか、ブランデーがあるならいいんだけど
いくつか品物を手に持って、何度かキッチンと往復する
そういえばキッチンは作ったけど、調理器具なんもないや
炊飯器作ってもいいけど、ガスコンロだから使い慣れた南部鉄器の炊飯釜、作・・・れるのか?
よく考えたら、今まで魔術で作ったものは
「日本語以外」
で作るものを指示していた
もちろんイメージしていることもあるけど
南部鉄器をイメージしながら、製作:炊飯器と唱えて果たしてできるのか?
試してみるとしよう
「製作:炊飯器《クリエイト:ジャー》」
目の前には、3年間使っていた南部鉄器のガス炊飯釜ができていた
そして3人娘はまたも固まっていた
もうお約束、だな
使ってたのは3合炊きで、出てきたのもそのまんま
5人じゃ足りんか?
もう一つ作っておく
「ケイ殿、そんな簡単に顕現させられるのですか?」
フレイアが聞いてくる
「なんかできちゃうんだよね、今のところ」
軽く答える
「できちゃう・・・・」
なんか呆れられてる気がしますけど?
ボウル作って何度か研いで含水させて、頃合いを見計らって、ガスコンロに3合炊飯用に米と水を調整した南部鉄器釜を載せ、炊飯モードにして火にかける
バター、塩コショウ、付け合わせにキャベツ
とりあえず一品料理だ
まて
キャベツの千切りするには、まな板も包丁もない
ソテーするには、フライパンとターナーがない
おまけに途中で油を吸うのにも、キッチンペーパーもない
ごはん食べる茶碗と箸
ポークソテーを載せる皿
ごはんをよそうしゃもじ
こいつらもない
ないない尽くしだ
フライパンは私の好みで、分厚い鋳鉄製のを作る
新品と思いきや年季の入った、なんなら少し堆積物や酸化被膜が着いたのが出てきた
老舗の洋食屋のかよ
他も全部作ってしまう
クリエイトの魔術はなんでもできるな、と呆れる
流石にこの連発で、3人娘は固まることはなくなっていた
一応、お湯で洗って、火にかけて乾かしてから使う
温度が下がったのを見計らってから、弱火で着火してからバターを入れ、あらかじめ塩コショウしておいた、かなり厚切りの豚肉を入れる
じわじわ火を通していくが、脂がのっていてだんだん油浴になって来た
余剰の脂を吸わせようと思ったが、キッチンペーパーがないことを忘れていた
仕方ないから、1枚深皿を脂受けにしてフライパンから移しておく
油を吸って焼き続け、ひっくり返して数分
最後にコニャックを振りかけて、フライパンを少しずらして火を点ける
フランベをしたいところだが、酒自体なかったのでバターをほんの少し追加してから、加熱してフランベっぽくして火をつける
焦がしバターはそれだけでも、食欲をそそる香りになるからね
火柱を見て、後ろから驚いた声が聞こえる
頃合いを見て、皿に上げて余熱で火を通す
合間に刻んでおいたキャベツを更に盛り、余熱が通ったポークソテーを載せて気づいた
ナイフとフォークがないと、カットして食えない
追加で人数分クリエイトしておく
そうなるとごはんも茶碗でなく、皿のほうがいいだろう、ということで炊きあがったご飯をかきまぜて、皿によそって出してみた
「食べてみて」
出したのはいいが、3人娘は顔を回す
「どうかした?」
フレイアがおずおずと
「ケイ殿、アヤノ殿が食べてないのに食べるのは仕えるものとしては・・・」
残る二人も頷く
「これ、異世界交流の1つだから仕事と思って食べてよ
食べ物の違いがあるなら知っておかないといけないし、こっちにこれも伝えたほうがいいなら食べてもらって覚える必要あるし」
それでも手が出ていない
「だめかな?」
3人娘は首を振り
「いえ、どうやって食べればいいのかわからないのです」
カホルが言う
そういえば調理も???だったのだからそ、こから教えないといけないのか
熱いうちに食べてほしいしね。
「じゃあ、阿部ちゃんが手本見せてくれる?フレイアのを譲ってもらって
フレイアには新しく作るからちょっと我慢してね」
首を縦に振って答える
「では、阿部ちゃんよろしく」
そういいながら戻り、2人前のポークソテーを追加で作る
3人娘は初めて使うナイフとフォークに悪戦苦闘している
むしろ普通に箸だったらもっと大変だったかもね
「おいしい!」
「初めての味ですわ!」
「これが「料理」ですか!?」
3人それぞれ声を上げている
最初の声は阿部ちゃんだ
「先輩、ちゃんと料理できるんですね」
さっき、美味しいって言ってたよね、君?
「このくらいならね」
そう答えながら、新しくフレイアの前に皿を置く
私自身も食べ始めながら、みんなの顔を見る
阿部ちゃんはともかく、3人娘は生き返ってから表情が硬かったし、驚く事連発で笑顔がなかった
今は、ぎこちない手つきで、ナイフとフォークを真剣に操りながら料理を食べて、食べるとにこやかな顔をしてくれている
これで、少しは緊張がほぐれてくれるといいんだけど
「お代わり、ってだめですか?」
阿部ちゃん
君、もう食べ終わったのか?
育ち盛りの高校生かな?
「ごはんならあるけど、ポークソテーだと肉見てこないとわからんな」
手を置いていうと
「おーかーわーりー!」
駄々っ娘か
「あのぅ」
アウラムが上目遣いでこちらを見て声を上げる
「わたくしもおかわり、したいですわ」
手をまっすぐ上げて隣のカホルも
「よろしければ私もいただきたいです、おかわり」
まだ口にポークソテーが入っていて、もぐもぐしてる美女が慌てて手を上げる
「わ、わたひもおかわりほひぃでふ」
「口にもの入れたまましゃべらない!」
思わず声がでてしまった
「仕方ない、まずは3人娘の分を作るよ
阿部ちゃんは少し我慢してよ
フライパンのサイズでは、3人分しか一度に焼けないからね」
少し膨れながら腕を組み
「代わりに、大盛にしてください」
ちゃっかりしていらっしゃる
「私も大盛、ってのをお願いできますか?」
フレイアがリクエスト追加してきた
「私もお願いしたいです」
「わたくしも、ですわ」
3人娘全員おかわりかい
まあ、気に入って貰えたならなによりですよ
初めての料理はポークソテーです




